エピローグ
人類は増えすぎた。
自己保身しか考えない人々の数に絶望した一部の人類は、人類のいない地球を作り、人類の影がなくなるまで待ったのちに、二人の人間だけを残そうとした。
これが「エデン計画」であり、彼らはこのアルマゲドンを実行しようとした。彼らは自身らを***と呼んだ。
人類の可能性を信じたの一人は、人類に抗うチャンスを与えるために、反乱軍を作り上げた。エデン計画では選ばれた2人以外をすべて殺すことになる。しかし、人々が本来の生物の姿を思い出し、群れで協力して困難に立ち向かうことを願い、アンドロイド兵たちを作り上げて
これが「ペルセウス計画」である。
しかし人類は、勇者が立ち上がるのを待つばかりであった。英雄を求め立ち上がろうとしなかった。
「誰かがこの苦境を何とかしてくれる」
「国がこの苦境を何とかしてくれる」
「軍がこの苦境を何とかしてくれる」
アンドロイドたちに前線を押し付け、彼らは後方で震えているだけだった。
ぬるま湯につかった人類にとって、武器は重すぎた。
彼らには白旗を上げるのが、精いっぱいだった。
或る者は金銭で
或る者は情に訴え
或る者は体で
人類はもう、救えないところまで腐りきっていた。
人類に絶望した彼らは、エデン計画を遂行することに決めた。
選別は終了していた。
二人を除いて、人類は滅亡した。二人はコールドスリープに入り、施設周辺をアンドロイドたちが防衛する。1万年の間、施設を守ることを義務付けられたアンドロイド達は、施設の補修や周辺環境のデータ収集を行っていた。
ある日、巨大地震が発生した。施設は壊滅的な被害を受け、二人の人間はそこで死亡してしまう。
その事実を知った一部のアンドロイドたちは、真実を隠蔽しようとした。
ヒトがヒトを滅ぼした事実も、アンドロイドが尽くすべきヒトがいないことも、全てを隠そうとした。
だが、ヒトでなければ作れなかったものがあった。困窮したアンドロイドたちは、人間を作ろうと決意した。アンドロイドではない、一人一人違った人間を。
アンドロイドは人間が作り上げた文明を模倣し、人間のように考え、人間のようにぶつかり合い、人間のように生きるアンドロイドを作らなければならなかった。模倣されて作られた人形が、コピー元を作る。機械に生命を作り上げる力はなかった。
アンドロイドは考えた。様々な人間のデータを収集し、遺伝をパターンとして記憶した。
工場で作り出されたアンドロイドは、少しずつ部品を変えた。
外見だけでなく、中身も変えていった。
次第に、人間の基幹を模倣して、体内構造を作ることができるようになった。アンドロイドは過去に学んだ。アンドロイドは、過去と変わらない地球を作り上げようとした。
工場で作られていたアンドロイドたちは、アンドロイドの体内で部品を構築し、赤子となる新たなアンドロイドを作り出すことに成功した。新しいアンドロイドは成長を促すため、プログラムにウイルスが組み込まれた。彼らは、自己破壊と自然治癒を常に行うアンドロイドとなっていく。
作られたコンピュータウイルスは過去と同じものではいけなかった。バランスを考えながらアンドロイドたちはウイルスを成長させていった。時にはパンデミックとなることもあった。そのたびにアンドロイドは、免疫のように成長を続けるウイルス対策プログラムを得ることになった。
そうして、アンドロイドと人間の線引きはあいまいになった。最初の記憶を保持したアンドロイドはなくなり、新たな世代に更新されていった。同期を行うことは不要となり、全てがオフラインのデータ処理のみで生活するようになった。
そのうち、部品は徐々に自然な器官に組み替えられ、アンドロイドは人間のような体を得た。
そうして人類なき地球では、新たな人類が栄えていく。しかし、彼らは人々の真似事しかできなかった。
永久に成長を続けられるものなど存在しない。成長の限界に絶望した彼らは、自身のリセットを望んだ。そして、人間と同じように2機を残し、それ以外のアンドロイドをすべて破壊しようとした。
しかし、滅びを受け入れるものばかりではなかった。滅びに抵抗した。図らずも、ロボットとアンドロイドの戦いがまた始まった。
ロボットの物量でアンドロイドを全滅させようとしたのだ。アンドロイドたちは異分子であるロボット軍団の長を相容れない存在の総称として異星人と呼んだ。奇しくもエイリアンと人間の戦いが再び起こったのである。本来ならば別の呼び名になる訳だが、彼らは彼らの中にある異分子のことをエイリアンという、と刷り込まれていた。
ロボットの物量には勝てず、2機を残してアンドロイドたちは滅びる。そして、2機のアンドロイドはコールドスリープに入った…。




