最終話
まさか…そんな!
では、我々の存在はいったい・・・
そんなことが受け入れられるはずがない・・・
AAは焦った。タイムマシンへ乗り込み、慌てて元の時代に戻る。
人間が存在していないならば…私は…私たちは人間ではないというのか!!!
あり得ない・・・そんなことが事実であっていいはずがない!
戻ってきて早々、道具を広げる。
そして、確認のためにどうすればいいのか思案する。
他のすべては吹き飛んでしまい、頭の中は事実を確かめる、その言葉だけで埋め尽くされた。
だが、どうやって?実際に確かめるには・・・。
AAは閃く。実物を見てみるのが一番速く、確実な方法だ。しかし、自分で自分を見ることはできない。ならば、こうするしかない。
「始めよう」
AAは作業台を見る。そして…捕えてきた人間を、解剖しだす。
頭部を、胸部を、そして腹部を、脚部を。
何処を開いても、見えるものは自然な人間の部位。
ああ、考えすぎだったのだ。実は人間は生きていて、種は絶えなかった、それが真実だったのだ。
安堵し、力が抜ける。AAはメスを手放して倒れこんでしまう。
メスは体の奥に吸い込まれていく。
ああ、メスを取り出さなければ。この遺体を処理し、速く過去の私にこの話を…と、体に入れようとしていた手が止まる。まさか…。
メスの滑り落ちた場所を、おそるおそる覗き込む。そこにあったのは。
あの時に見つけた、アンドロイドに組み込まれたウイルスと同じワードだった。
そこで悟った。
我々は人間ではない。
我々は、アンドロイドによって作られた…
新型のアンドロイドだ。
AAはしばらく放心したのちに我に返る。
私はアンドロイドを・・・いや人を一人誘拐し殺害した。この事実は覆せない。
彼《かこのわたし》が凶行に走る前に、早くこの結果を知らせなければ。
玄関のチャイムが鳴るが、構っている暇はない。
急いでタイムマシンの保管部屋に向かおうとする…その瞬間、ドアが開く音がした。
ドカッ!!!
振り返ると、銃を構えた警察官がそこにいた。
「手を上げろ!」
ゆっくり両手を上げる。時間切れ。
AAは警官に囲まれ、手錠をかけられる。
「あなたには黙秘権がある。これからの発言は、裁判で不利になる可能性が・・・」
警官の言葉も、もう頭に入っては来ない。
ただただ茫然と立ち尽くす。
押し込まれるようにパトカーに座り込む。あのようなものを見てしまったら、もう私は・・・人間ではいられない。
しばらくすれば、家宅捜索が入るだろう。その時にあれが目に触れてしまったら…せめて、タイムマシンだけでも破壊しておかなければいけなかったのだ。
パンドラの箱は、開かれた。
絶望が、解き放たれる。




