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04 先輩は天才少女

内部に入るまでに聖さんが説明してくれた。

クリスはそのまま口を挟まずにただ耳を傾けている。

私はクリスと同じ夜間企画部に配属されてクリスの補佐をすることになるそうだ。

クリスはヴァンパイアであるが故にあまり表では顔を出すことができない。

表向きでは人間である聖さんが名前だけの上司だが、実際にはクリスが取り仕切っていた。

それもそうか。

ヴァンパイアが変に営業でもしてみたら事情の知らない外部の人間が何故歳をとらないんだって不審がってしまうだろう。

人間なんか本当に下っ端で終わってしまう。

私の出勤は夕方18時から深夜3時。

一般の職員では定時に帰る時間に仕事が始まる。

以前の職場だったら私と数名の男性社員が残業を開始する時間でもあった。

ただ仕事をしていただけなのに男の中に女が1人という現状ではそれに女性社員からのやっかみがひどい場合もあったので、最初から夜間という扱いは正直ありがたい。

「あれ。この娘が例の引き抜いてきた子?」

挨拶をしようと中に入ると小柄な女の子が近づいてきた。眼鏡をかけてツインテールにした釣りあがった瞳が特徴だ。

品定めをする女の子は至近距離から私をふーんと見上げる。

悪意のない純粋な興味だろう。

私の身長160センチから頭二個分くらい低い彼女は130くらいかしらと脳内計算してみる。

「アンタ、アタシをチビだと思ってる?」

「可愛いなぁと思いました」

「ふーん。でもアタシ、アンタより多分年上だから」

ふふんと息を鳴らしながら胸をそらした女の子の顔がどこかで見たような気がして。

実際の知り合いに小学生はいない。

テレビとかでみたことがある。

今ではなく遠い昔に。

「ああっ! 天才小学生の葉加瀬チナミちゃん!!」

「誰が小学生よっ。20年以上前は小学生だったけど今は大人のレディーよ!」

私が幼い頃に一時期ブームになった天才少女だ。

あらゆるテレビ番組に出演していて、世界的に思い出せないけど賞を取ったとされる。

一年くらいで消えたが、その内容が事故による死因だった。

チナミちゃんもヴァンパイアということなんだろうなぁ。

生きていれば30代中間だったか。

「自己紹介の必要はないわね。アタシの事はチナミさんかチナミ先輩って呼びなさい」

いいわね、とチナミさんは念を押した。



チナミさんは私のデータを一気に総務へ送ってくれた。

パソコンの腕は私以上に早い。

「明日くらいには社員証とカードできてるから今日のところはテストしようかしら」

チナミさんは私に書類の束を渡した。

「これを入力してちょうだい。ただ入力するだけじゃつまらないから名前でプロフィールが出てくるように改良してみて」

「これは……」

「ここはヴァンパイア相手に商売する部署だから。顧客のデータ入れておかないとね」

チナミさんは斜め向かいのデスクに私を座らせて後ろからアイコンを開いてくれた。

「ファイルはここ」

やってみてとチナミさんは離れていった。

自分の作業に戻ったのだろう。

以前のデータを見ながら私は入力を開始した。




「悪くないわねぇ。よし、採用! ねえクリス! この娘ちょうだい」

同じ部屋のクリスの机の前にチナミさんが近づいて行く。

私のデータ登録は合格点だったようですごく嬉しい。

それでもちょいちょいとチナミさんの直しが入ったが、基本ベースは私のやり方で問題はないようだ。

「駄目です」

「えーっ。なんでなんでなんで。アタシに助手くれるんじゃないの?」

「言ってません。チナミさんには何度も助手を送りましたがみんな別の部署へ送ってしまったじゃないですか」

「ぶーっ」

唇を尖らせて拗ねるチナミさんを横に、聖さんが私にそっと耳打ちをした。

「チナミさんなぁ。見た目が小学生(ガキ)だからなぁ。技術面の判断(テスト)も激辛だけど子供扱いされる奴にも容赦がねぇんだ」

なるほど。

チナミさんには子供扱いはNGということね。聖さんに向かって跳び蹴りをしていた。

「こっんの! 小学生(ガキ)言うなぁぁぁっ!!!」

社長一家の息子(ボンボン)であろうともこういうことができるのは先代の契約者だからということにしておこう。

私は密かに余計な事は口にはしないと決意を固めるのだった。


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