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005

受付で大会参加者のカードを見せると仮眠室のキーをもらった。


キーに書かれている部屋へ行くと、1人部屋のビジネスホテル程のクオリティーの部屋だった。


うぁ。金をかけてる大会だな。

参加費を払って見学に来ても元が取れるんじゃないか?


風呂まであるので、風呂に入って備え付けのタオルで体を拭いているとドアにノックがあった。


「美東だけど、帆井さんいますか?」

え!?


「ちょ、ちょっと待って」

急いで服を着てドアを開ける。


「お風呂に入ってたのか?受付で部屋番号を聞いて、叔父様に頼まれてサイトだけ持ってきたよ」

手にごっついレンズが付いた巨大なサイトを持っていた。


髪が濡れていたので、風呂だと思ったのだろうが観察力が恐ろしい。


サイトを持って私の部屋のベットに座る。

「叔父様のカスタマイズした光学スコープで4km先でも綺麗に見えちゃう優れもの!『エレベーションダイヤル』と『ウインデージダイヤル』で構成されていて、このダイヤルが配置されているチューブの中には、『エレクターチューブ』と呼ばれる物が入って……」


長い説明が始まったが、さっぱりわからない!!

実際に巻き戻りながら、使って覚えていこう。

それよりも受付の親父が、美東さんの叔父なのか?


「せ、説明ありがとう。受付の人って美東さんの叔父さんなんですか?」


「え?…… ちょ、ちょっと待って叔父様は、兵器開発主任で受付の人は知らない……あ、だからか!」

誤解したようだが、美東さんが一人で納得している。


「受付の人は、私の上官の大会主催ボランティアで参加してる人だよ。叔父様が開発中の物を渡すなんて疑問に思ったからそういう事か!納得!じゃぁ、渡したからね」


サイトをベットに置いたら、急いで部屋から出て行ってしまった。


サイトを持ち上げると、重い。

ライフルに装着したら20kg超えるんじゃないか?


少し覗いて、付いているダイヤルを回すと拡大率が変わったり、ピントがずれたりあったりする。

実際に使わないとわからないかな?


枕が変わると寝れないと言うが、野宿覚悟で来た為かすぐに寝てしまった。



目を覚ませば、7時であった!

大会まであと1時間!


朝食を食べずに受付に行くと、昨日の親父ではない眼鏡をかけたインテリ風の男が受付をしていた。


「銃の貸し出しですか?これとこれですね。ライフル会場迄のバスはあと5分で出ますよ」


何!会場は屋外だと言っていたが、バスに乗る必要があるのか!


総重量20kgほどありそうな機材を持って急いでバスへ移動する。


バスが既に来ていたので乗り込むと、寝癖の美東さんが乗っていた。

違和感がある。


バスには、美東さんと私しか乗っていなかった。


「あ!帆井さんも寝坊ですか?」

8時からではないのか?

時計を見ると7時半である。


「こっからバスで1時間らしいですよ。参ったな」

「うあ!しくじった!」

「大丈夫ですよ。開会式が30分ぐらいだからギリギリセーフですよ」


美東さんは、遅刻常習犯なのを認識した。



特に会話がなく会場へ着いたが、途中でこんな道をバスで行くのかと思うほど険しい道のりで、崖から落ちるんじゃないかハラハラドキドキした。

しかもこのバスは、異常で曲がり角で減速しない上にドリフトしてる時があった。

見事に酔った。

美東さんは、爆睡していた。


屋外の会場に入ると、美東さんに4km先まで続く射撃場に案内された。


横に巨大な大型スクリーンがあって、参加者の名前が並んでいた。

全員で11人。

美東さんが9番目で私が11番目であった。

私は3日前のギリギリ申し込みだったので最後になったのかな?


既に1番目の人が、競技を開始していた。


ルールは、10発撃った際に当てた的で最も遠いの3枚距離の総和を競う競技である。

的は、一発おきに距離を申告してその距離に的が現れる。

500mから4000mまで100mおきに36種類の的の距離が選べる。

的は、直径30cm。

肉眼で見たら、500m先でも針の穴のようだ。


「11人って凄い数が少ないですね」

「多い方だよ。去年は9人だったよ。ピストル競技よりライフルは地味だし結果がハッキリ出るので、少ないのかも?」


『あいつ、誰だ?』

『美東と話してるぞ!』

『ルーキーか?初めて見るぞ』

『何処の代表だ?』


背後から参加者の会話が聞こえる。

美東さんは有名のようだが、代表?


「美東さんは、自衛隊の代表なの?」

「そうだよ。帆井さんは何処の代表なの?」

「え?」

「へ?」


「ま、まさか秘密組織の代表とかなんですか?」

「へ!? 一般人だけど?」


「わかりました。言いたくないんですね。一般の方の参加は出来ないので、そんな嘘ついてもすぐにバレますよ」

「そ、そうなの?」


申し込んだ際の、参加資格を思い出すがそこには、そんな事は書いていなかった筈だが……

何かの手違いで参加できたのか?


係の人に聞いた方が良いのか?


「じゃあ、私は準備しますから大会終わったら会いましょう!お互いここからライバルです!」


美東さんが、右手を出して握手を求めてきた。

参加資格の事で頭がいっぱいだったが、硬く握手した。


女性と握手って少しドキドキする。



選手控え席に座って、昨日のサイトをライフルに勘で取り付けた。

少し悩んだが、スライドさせてカッチと綺麗にハマったのでこれであっている筈だ。


しかし、重い。

伏射の参加でよかった。

ろくに筋肉もないので、持ったまま撃つなんて不可能に近い。


マガジンに弾丸を入れて、色々準備していると既に美東さんの番になっていた。


参考にする為に、じっくみる。


大型スクリーンに映し出された的は、1000m。

二発目でヒット!

こまめにスコープの調整をしていた。


次に1500mは、一発でヒット!

全く調整せずに当てた。


初めは、短い距離で調整するんだな。


大型スクリーンに表示されている風速計が2m/sから10m/sに変わると、一旦休憩をしている。


風が強い時は、休めるのかな?


インターバル10分と出て、9分59秒58秒と減っていく。

なるほど。


次に出た的は2000mだった。

2000m、風速3m/s。


パン!


一発でヒット!


昨日私が苦労した2000mを一発かよ!

美東さんが、にやけて喜んでいるのが見える。


次に2500m、風速0m/s

よく見ると現在の重力も表示されている。

月の位置や公転周期で多少は変わるけど、そこまで計算するのかな?


二発目でヒット。


次は3000m、風速0m/s


パン!パン!


連続して発射した。


大型スクリーンを見ると、一発が中心からはズレていていたが、ヒット範囲内に弾痕を残していた。


八発を発射したので、残り二発である。


3500mの的が現れた。

風速が3m/sである。


美東さんが引き金を引く寸前の状態で5分ほど、固まったように動かない。


風速0m/sになった瞬間。


パン!


大型スクリーンの3500mの的にヒットした。


『おおお!すげぇ!』

『今年は、美東だな』

『俺がライフル部門じゃなくてよかったぜ』

『最後は4000mやるのか?』


ギャラリーから感嘆の声が聞こえる。

日本語のみだが、いろんな国の言葉も聞こえた。


最後の一発は、再び3500mの的が出てすぐに外した。


【只今の記録、総合9000mです】


アナウンスが流れて、大型スクリーンに順位が表示された。


美東さんが9000mで一位

二位が8500m

三位が8400m


一位になる為には、3000m以上に当てないと無理なのか……



※ドリフト

タイヤをわざとスリップさせて、進行方向に対して斜めに走行させる自動車の特殊な運転方法。

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