003
バスから降りて会場に入ると、既に大会参加者の受付をやっていて長蛇の列になっていた。
受付は前日に済ますのが常識だったようだ。
美東に会ってよかった。明日の朝に来てたら参加出来なかったかもしれない。
美東と2人で受付の列に並んでいると、20歳ほどの男の私から見てもカッコいいイケメン男子が、話しかけてきた。
「あ、美東じゃないか!お前もこの大会出るのかよ。まさかライフルだけだよな?ピストルも出られたらきた意味がないからなぁ」
「誰?」
「ふざけるなよ。森田だよ。日本射撃大会で2位だった奴の事忘れるか?」
『森田だってよ』
『スワット部隊の!』
『サインもらおうかな…… 』
背後から、森田を知っていると思われる人の声が聞こえる。
有名人のようだ。
「あ、2位だった人か!森田さんですね覚えておきます」
「本気で覚えてないとか嘘だろ。まぁいいや。リベンジ覚えててろよ」
捨て台詞を吐いた。覚えてなかった事に腹を立てていたようで、通路の壁を蹴って去っていく。
「帆井さんすみません。この前の大会で上位を競っていたんですが、人を覚えるのが苦手で忘れてました」
美東が頭を抑えて苦笑いしている。
上位を争ったって事は、美東も凄い人なんだな。
私に受付の番が回ってきた。
50歳ほどのマッチョな眼光が鋭い男性の受付の人が、私を睨む。
ネットで申し込みをした受付用紙を渡すと目を通していく。
「ライフで貸し出し?珍しいな。スコープはどうするんだ?」
無知すぎて何も言えない!
「すみません初心者でして、適当な物を貸していただけると助かります」
受付の人が、ポカーンと私を見る。
そして笑い出した。
「あはははは!わかった!俺の趣味で選んでやるよ。今日は、調整で試し撃ちするのか?面白かったから俺から銃弾10発サービスだ。ライフルの大会に初心者って?なんでかツボに入ったぜ。あはははは」
腹を抑えて、爆笑された。
受付の男から大型のライフルと30発の弾丸を渡された。
想像以上に大きい上に重い!
10kg以上あるぞ!
受付待ちの人が後ろが並んでいるので、逃げるように受付から移動した。
貸し出しされたライフルを眺める。
全く使い方が分からん!
美東は自前の銃器使用なので銃器を借りないで、受付をすましたら私の所にすぐに来る。
「帆井さん。凄いの借りましたね。TAC-50ですか!見せてください!」
奪われた。
美東が、慣れた手つきでマガジンに弾を込めて装填した。
マガジンには、5発入るようだ。
「ふふふ!滾る!こっちに試射会場があるから行きますよ」
美東が自分の荷物を背負いながら、10kg以上ある私が借りたライフルを軽々持って受付奥へ移動していく。
細身に見えるが結構な筋肉が付いているのか?
残された25発の弾丸を持って追いかける。
試射会場は、近距離から遠距離まで仕切りに分けられて並んでいた。
かなりの大きさと規模で室内ではないかと思う程大きい。
「屋内ですが2km迄の射撃が出来るんですよ。大会は、屋外で4kmですが世界記録が3.5km程何で実質無制限みたいなものです」
なにそれ!3.5km先の的に当てる人いるのか!
まるで漫画の様だな。
美東が、既に私が借りたライフルで射撃体勢に入っていた。
「反動が凄いので、ここにライフルの脚を掛けて撃つんですよ。これをこうして、あとは引き金を引くだけ」
何故か聞いてもいないのに私にレクチャーし始めた。
パン!
そして、美東が勝手に試射し始めた。
30発しかない貴重な弾が!!
思ったより乾いた、鞭で壁を叩く様な音だった。
「初速の音速を超えた時の音がたまらない!」
美東が、僅かに興奮していた。
射撃した場所にある端末を操作すると、端末横の画面に的が表示された。
真ん中より少しずれたとこに弾痕が付いていた。
「500mだと初弾で、真ん中は難しいわね。これをこうしてこうすれば良いわね」
ライフルに装着されているサイトを調節する。
パン!
画面に表示されている的の中心に弾痕が増える。
500m先の的をみると、肉眼では点にしか見えない。
一気に不安になる。
気軽に来たのだが、考えていたより現実は厳しそうだ。
残り3発も美東が、試射してライフルを返される。
「私も頑張らなきゃ!向こうで試射してくるね」
ルンルンの上機嫌で美東が、去っていった。
た、弾代……
残り25発である。
だが、だいぶ参考になったのでマガジンに弾を込めて美東を見習って実際に試射してみる。
サイトを覗いて、中心に向かって的に向かって引き金を引いた。
パン!
三脚の様なものでライフルを固定している為か反動は、想像以上になかった。
美東がサイトを調整してくれたおかげか、初めの射撃で的の端に僅かに弾痕が残った。
少しずらして2発目を発射する。
今度は、逆方向の的の端に弾痕が増える。
5発発射したが、中心に当てることは出来なかった。
これは、不味い。
非常に難易度が高い事を認識する。
残り20発。
大会で10発使用するからあと10発しか使えない。
※マガジン
弾倉は、火器の弾薬をあらかじめ装填しておき、発射の際に次弾を供給するための、銃の部品のひとつである。
※スコープもしくはサイト
主に狙撃銃に装備され、長距離精密射撃(狙撃)を目的とする望遠鏡機能を持つ小型の照準器。