第80話 邂逅と始まり
(待て待て待て待てあの鳥を一瞬でやりやがった!)
「思ったよりあっけなかったわね」
「ここで審判が黒の旗を上げたーッ!」
「文、あれどういう意味?」
「失格、反則などマイナスな行為をした時に上げられます」
「なんちゅー曖昧な」
「霊烏路空選手はここで失格となります!」
「ふふ、もう一匹……」
(やばいやばいやばい)
全力で走り出す。
まともに戦って勝てる相手じゃない! 不意打ちでも分からないくらいだ。
「鬼ごっこのつもりかしら」
幽香が妹紅の方へ手を向けると、地面から出てきた植物が妹紅のあとを追いかける。
魔理沙と違って箒に乗れない分妹紅のほうがやはりスピードで劣ってしまう。
「ハッ……ハッ……クソッ!」
だが、妹紅の体に触れる寸前で植物が止まる。
「ハッ……ハッ……一体何が……!」
なぜ攻撃を止めたのかは知らないが、後ろを振り返る余裕なんてない。
妹紅はそのまま走り去った。
「…………草原に、一人」
妹紅を狙った時、背後から発せられた殺気の方へ目を向ける。
持っていた日傘を差し、草原へと歩き出した。
「こういうのは最初はサボるに決まってるんだよねー」
木の上で寝転びながら小町は呟く。
「あ、これは戦術ですからね四季様。あくまでも戦術なのでそこんところお願いします」
カメラに向かって全力で話す小町はどこか残念なオーラを放っていた……。
「っておわわ」
突然木が揺れ出す。
「まさかもうバレたのかー!」
下を見れば尻尾が見えた。
あれか、九尾か。
飛び降りながら鎌を振り下ろす。もちろん避けられる。
「九尾のお姉さんがあたいになんの用かねぇ」
「んー……まぁ紫様の命令だし、倒させてもらう」
相変わらず腕を袖の中にしまいながら藍は話す。
「最強の式神と死神のあたい。中々面白いことになると思わないかい?」
「どうでもいいな。行くぞ」
小町の言葉をバッサリ切り捨て、藍は弾幕を展開した。
「………………」
草原にいくつか落ちていた大きな岩の上に静かに座っていると
「ここに居たみたいね」
傘を差した妖怪がやってくる。
まぁ、アタシが待っていた、という方が正しいのだが。
「待ちかねたぜ、花の大妖怪風見幽香」
「怪力乱神に名前を知ってもらえてるとは光栄ね」
無言で、見つめ合う。
二人の周りだけ、空気の圧が異質なものに変わる。
「……行くぜ、幽香」
「……来なさい、勇儀」
「これは恐ろしい組み合わせになりましたねぇ」
「あの二人って一番会っちゃ行けなかったんじゃ……」
「まぁまぁ、お二人がやってくれれば撮れ高ありますから」
「強かすぎんだろ」
勇儀と、幽香か。どっちが勝つんだろうか。正直どっちも手加減はするから分からない気がする。
「霊夢さんはどっちが勝つと思います?」
早苗が声をかけてくる。
「ん……正直分からないわね。どちらも本気は出せないだろうし」
「ですねー。皆さんうまく相手と会えたみたいですし、楽しみですね!」
「……そうね」
笑顔でこちらを向く早苗に、微笑んで返す。
勇儀と幽香、か。それも確かに気になる。でも優曇華と妖夢のほうも気になるわね。あの二人はたぶん同じくらいの実力だし……。
「妖夢……なんでさっき斬らなかったの?」
ゆっくりと立ち上がりながら、妖夢に質問する。
「不意打ちは嫌いなので」
たった一言、笑顔で返してきた。
どれだけ真面目なんだこの子は。
ため息をつきながらゆっくりと手を構える。
「じゃあ、今からは正々堂々手加減なしで戦ってくれる、ってこと?」
「もちろんです」
妖夢も刀を構える。
「……じゃあ」
「……いざ」
二人の間を、風が通り抜ける。
「いくわよ!」
「行きます!」
二人の戦いの火蓋が切って落とされた。




