第77話 闘技大会編 選手と観客
「レディースエーンジェントルメーーン!!!」
小指を立てながらマイクを持つ文がどこかで見たようなセリフで話し出す。
「いよいよ皆さんお待ちかね! 幻想郷闘技大会のっ始まりだァーッ!!」
歓声が沸き起こる。
観客席には人間妖怪問わず様々な種族で騒がしいことこの上ない。日頃の鬱憤が溜まっているのはみんな同じらしい。
そもそもこんな大きな建物一体どうやって作ったんだ……。
「この建物はカッパたちの協力によって作られましたァ!」
やっぱりか。どうせそんなとこだと思ったけど。
「それよりさっきは大きな、って思ったけど、この大きさで足りるのかしらね?」
「……何がです?」
たまたま観客席で会った、いや、あとを付けられていたかもしれないが、早苗が疑問符を頭に浮かべる。
「幻想郷の実力者を集めたなら、この大きさだと吹っ飛ぶわよね」
「確かにそうですね。別の場所で戦ってるのをここで中継、みたいな感じじゃないですか?」
「それなら合点がいくけど……どうやって中継するのかしらね」
「さぁ……」
考えても分からないし、文の話でも聞いていようか。
霊夢はそのまま文へと視線を移す。
「それでは選手の紹介……の前に! 今回の審査をしていただく審判を紹介しましょう!」
ドームの中央に写っていたモニターが切り替わり、文の姿が消える。
そして現れたのは
「はぁぁ!? 閻魔がここで何やってんのよ!?」
「有罪か? 無罪か? この人の言葉一つで死後が決まる! 地獄の裁判長、四季映姫ーッ!!」
「誤解のある言い方をしないでください。私は私の中の判断基準で白黒ハッキリつけます。そしてそれは絶対に揺らぐことはありません」
映姫が何か言っていた気がしたが、何も頭に入ってこない。よく呼んでこれたな……。もしかしたら紫とかも絡んでるのかもしれないが。
「そして実況はこの私。清く正しく美しく、射命丸文が、解説は姫海棠はたてでお送りしまぁす!」
「ちょっと文! こんな人いるなんて聞いてな」
「おおっと失礼! ノイズが入ってしまったようです! それでは選手の紹介といきましょう!!」
「文ァァァァァ!!!」
恨みのこもった叫びとともに、画面が切り替わる。
あぁ、あの天狗の被害者がここにも……。
「まずは一人目!言わずと知れた人間の魔法使い、弾幕はパワーだぜ! 霧雨魔理沙ーッ!! 」
「おっしゃ私が絶対優勝してや」
魔理沙がカメラに向かって話し始めた瞬間に映像が切り替わる。悪意たっぷりだった。
「続いて二人目! 白玉楼の庭師兼剣術指南役、斬れないものなどあんまりない! 魂魄妖夢ーッ!!」
「ゆ、幽々子様! 私、頑張ります!」
おそらく幽々子に言いくるめられたのだろう。ただこういうのに参加するのは悪くないのかもしれない。
「お次は三人目! 永遠亭の苦労人、その瞳ですべてを狂わせる! 鈴仙・優曇華院・イナバーッ!!」
「うう……酷いです師匠……自分が出るからって私まで巻き込むなんて……」
この大会被害者多すぎじゃないだろうか。鈴仙なんか半べそかいてるじゃない。
「どんどんいきます四人目! 博麗神社の居候にして幻想郷のイレギュラー! 半人半鬼、銀!!」
「俺が絶対優勝して」
再び魔理沙とほぼ同タイミングで切られる。似たもの同士……だしアホ丸出しね。うちの神社の評判下がったらぶちのめそう。
「さぁさぁ五人目! 八雲紫の式にして最強の式神、その美しい九つの尾は力の証! 八雲藍!!」
「紫様……ちゃんと起きてるといいんだけど……」
もはや大会関係ないわね。主の心配しちゃってるよ。つーか寝てんじゃないわよ紫。
「折り返しはもう過ぎた六人目! 三途の川の渡し人、今日はどんなサボり方を見せるのか! 小野塚小町ーッ!!」
「さすがに四季様の前ではサボれないよ……」
こいつも被害者……いやそういうわけでもないか。サボっていたツケが返ってきたって感じね。
「ラストが近づく七人目! 地底の太陽、八咫烏。その実力はいかに! 霊烏路空ーッ!!」
「さとり様ーこいし様ーお燐ー。私頑張るよー!」
観客席の前の方にさとりやこいしの姿が見えた。応援に来た、ということらしい。なぜお空を出したかはとても謎だが。
「ラスト三人! 続く八人目は炎を自在に操りその魂は不滅! まさに不死鳥のような彼女は藤原妹紅!!」
「見てろバカグヤ! 私が優勝してやるからな!」
カメラに向かって中指を立てている。
前の方で騒いでるのは輝夜か。まぁどうでもいいや。
「さぁこの先二人は優勝候補! 九人目は誰もが知る幻想郷の御意見番! 残虐非道傍若無人、風見幽香ーッ!」
「あの天狗いっぺん教育してあげようかしら」
「おお怖い。さっさと次いきましょう!」
完全に自業自得だが幽香を呼んできたのはさすがと言えるだろう。まぁいっぺんぶっ飛ばされた方がいいのも確かだ。
「さぁ最後の十人目! 破滅的な金剛力、語られる怪力乱神の異名を持つ幻想郷の鬼、星熊勇儀ーッ!!」
「地形変えない程度には遊んでやるよ」
その堂々とした様はやはり自信からくるのだろう。相変わらず酒飲んでるけど。
「さぁ今日はこの十人にバトルロワイヤルをしてもらいます! ルールは明確、最後まで立っていた者の勝利! あとは全部審判におまかせです!」
投げやりすぎるだろ。それでいいのか実況。
「特に禁止事項はありませんので審判の判断が全てです。それに反抗すれば即失格なのでよろしくどうぞー!」
観客たちが再び湧き上がる。
今回の見どころは勇儀と幽香ってとこだろうか。どうやら十人の周りをカメラが追うらしい。その都度最適な映像を送ってくれるんだとか。
「さぁそれでは幻想郷闘技大会、バトルロワイヤル開始です!!」
戦闘開始を告げるサイレンが、ドーム中に鳴り響いた。




