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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
閑話 幻想に生きる
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第72話 勇儀とパルスィ

 ──人里──


「あれ、パルスィじゃん」


「ん…………」


 人里をぶらぶら歩いていると、ついこの間見た珍しい人物が座っていた。


「今日勇儀いないの?」


「あとから来るわよ。それよりなんの用?」


「いや、特に用はないんだけど……」


「そ、じゃあさっさと行ってくれないかしら。あんたまで嫌われるわよ」


 パルスィの言葉に少し周囲を見回す。


(嫌われるってそういう……)


 周囲の人間の視線で、言葉の意味を悟る。畏怖、というよりは嫌悪だ。ただの妖怪ならここまで冷たくはないのだが、おそらく彼女が嫉妬妖怪というのがその嫌悪感に拍車をかけているのだろう。


「心配してくれてんの? やっさしい〜」


「頭はじけ飛べ」


「マジトーンやめてくんね?」


 ガチギレされた。怖い。


「そういや思い出したわ。聞きたいことがあったんだ」


「聞きたいこと?」


「そう。勇儀について」


 パルスィが首をかしげる。

 見た目だけは霊夢や魔理沙と同じ美少女といってなんら問題はない。ただ、嫉妬妖怪という先入観だけで嫌悪の対象になるのは少し可哀想だとは思う。


「別にいいけど……」


「いいけど?」


 途中でパルスィが言いよどむ。


「場所くらいは変えるわよ。あんまりいい気分はしないし」


「ほいほい了解」


 さすがにいつものことらしいが彼女の提案なのだからそれに従ったほうがいい。そう思い、二人で人通りの少ない路地のほうへと移動した。




「で、勇儀の何が知りたいって?」


「あぁそう、あの人って本気出したことある?」


「………………は?」


 質問の意図が分からなかったのか、パルスィが聞き返してくる。

 いやついでに睨むのやめて。


「いや、こう戦闘能力的にあの人本気出したら山消えるじゃん? ちょっと気になったからよく一緒にいるパルスィなら知ってるかなーって」


「私がいつも勇儀と一緒にいるみたいなその先入観が妬ましいわね」


 またもやいつもの返しがくる。

 もうなんでも妬ましいんだなこの子。


「まぁいいわ。勇儀の話ね」


 だがすぐに切り替えてパルスィが話し始める。


「そうね……本気かは分からないけど切れたことなら昔一度だけあったわね」


 ほう。怒りの感情ってのは結構予想外の能力上昇につながることもあるしな。今後本気を出させるのに使えるかも。


「そうね、あれは確か……私たちが初めて会って数年経ってからだったかしら」





 ──地底──


 私が橋の上でぼーっとしていた時だった。


「ようパルスィ」


「…………また来たの?」


 毎日毎日来るこの鬼に言っても無駄かもしれないが、それでも言うのをやめられない。


「そんなこと言うなって、アタシとお前の仲だろ?」


「大した仲じゃ無いでしょうが」


 いつもの盃を手に、笑いながら私の横に座る。


「今日はなんの用?」


「んあ、用はないぞ?」


 あたりまえだろ、というような顔でこちらを見上げてくる。


「じゃあなんで私のとこに来るのよ」


「ヒマだったから」


「ヒマなら家にいれば……」

「パルスィといると楽しくなれるからな」


 そんなことを、笑顔で言ってのける。いや、酒飲んでるからそんなことが言えるんだ。きっとそうだ。


「ッ……その図々しさが妬ましいわね」


「ははっ、それだよそれ」


 精一杯睨みつけても勇儀は笑っている。この掴みどころのない感じがホントに嫌いだ。なんで私なんかと。

 そんなことを考えている時、勇儀を呼ぶ声がする。


「おーい勇儀ー」


「なんだー」


 間延びした声で勇儀が返事をする。私も声のしたほうを向く。


「またここにいたのか」


 その言葉には、少し棘を感じた。

 単純にここにいるという呆れと、私への嫌悪感。そして、そんな私とつるんでいる勇儀への失望。

 はっきりと感じられるのはこれくらいか。


「アタシがどこにいたって構いやしねぇだろ?」


「まぁそりゃそうだけどな」


 呼びかけてきた鬼は少しバツの悪そうな顔をする。


「これから飲みに行くんだが……どうだ?」


「ん、いや、アタシは……」


 勇儀が断ろうとしたが、私はそれを遮る。


「行ってきなさいよ。私なんかといるよりその方がいいわよ」


 その言葉を聞いた勇儀が、少し悲しそうな顔をする。何よそれ、なんであんたがそんな顔するのよ。


「…………分かった、行ってくる。また明日な」


「来なくていいっていつも言ってるでしょうが……」


 勇儀は立ち上がってさっきの鬼のあとを歩いていく。

 彼女の姿が見えなくなったところで一人呟く。


「最後まで気遣いやがって……妬ましい……」





「そこまではいつもの流れだったんだけどね……」


「へぇ……」


 どうやらここからが本番らしい。

 ほんの少し寒気がした気がするが、おそらく気のせいだろう。

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