表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
閑話 幻想に生きる
78/120

第71話 守矢神社と二柱の神

 ──守矢神社──


「おぉ……どこがとは言わねぇが博麗神社とはえらい違いだな……」


 見たまんまの率直な感想を述べた瞬間にお祓い棒が頭に飛んでくる。俺は太鼓じゃねぇぞ。


「あやや、気のせいか前来た時よりもすごくなってませんかねぇ」


「あんた帰れって言ったでしょ」


 霊夢が鳥居の前まで来ても帰っていない文の方へ振り向いて言う。


「鳥なもので忘れてしまいましたー」


「あんたはアホの鶏じゃなくてずる賢い鴉でしょうが」


 頭に拳をコツンと当て、星でも飛ばしてそうなポーズをとる文に、霊夢はいつもの如く的確なツッコミを入れる。


「でもまぁ私はもう帰りますよ。あまり会いたくな……」

「いやいやそう言わずにゆっくりして行け? もてなしぐらいはするぞ 」


 そこで、新たな人物が文の言葉を遮った。

 特徴的、と言われれば特徴的だ。むしろ幻想郷で一番目立つのではないだろうか。

 とりあえずその最たる部分を教えよう。

 背中にある大きな注連縄だ。

 正直自分の目を疑った。


「あーすいません急用思い出したんでそれではまたー」


 もはや自分の言葉を言い終わらないうちに全速力で文が逃げ出す。


「やれやれ、また逃げられたか」


 その女性は手を腰にあて、小さくため息をつく。


「かーなこー、そんなにいじめちゃダメだよー」


「いじめてる訳じゃないがなぁ」


 注連縄の女性はかなこと言うらしい。あれ、どっかで聞いたような……。


「ただいま戻りました! 神奈子様、諏訪子様!」


 早苗がその二人に元気よく一礼する。

 あぁそういうことか。あの二人が早苗の言っていたここの神か。


「おかえり早苗」

「はいはいおかえり〜」


 緩く返し、二人が俺と霊夢を交互に見比べる。


「あー……そっちのは博麗の巫女で……男のほうは誰だ? 初めて見る気がするんだが……」


「早苗の知り合い?」


 二人の質問には早苗が答えた。


「霊夢さんのとこに居候してる銀さんです! こちらは八坂神奈子やさかかなこ様、そして洩矢諏訪子もりやすわこ様です!」


「よろしくな」

「よろしくねーん」


「うーす」


 神、というものだから可視化できるものではないと思ってたのだが、どうやらそんなこともなかったらしい。そういや天人だっているんだし当たり前っちゃあ当たり前か。


「早苗、そいつらを案内してやるといい」

「私と神奈子はその辺にいるから〜」


 こっちに気をつかってくれたのか、二人は神社の方へと戻っていった。人間とほとんど変わらないんだな。


「それじゃあ許可も貰ったので案内しますね!」


「はいはい、もうなんでもいいわよ」


 張り切る早苗とは反対に、霊夢は完全にやっつけ状態のようだ。いつもの光景だが。

 少し前を歩く早苗の後ろを、俺たちもゆっくりついて行った。





「この守矢神社は妖怪の山に位置しているでしょう? だから若干妖怪よりなんですよ〜」


 大体妖怪:人間で6:4くらいらしい。ただ、博麗神社と比べればそもそもの参拝者の数が違うだろう。


「神奈子様は乾、つまり天を作る能力を持っていらっしゃるんです」


「天を作るって……具体的にはどんな?」


 神らしいっちゃ神らしい能力だが、規模がデカすぎる。


「そうですね……私もよく知らないんですが、天気を操る程度は造作もないようです。あとは太陽も作れるとか聞いた気が……」


 太陽を作れる……? もしかして……。


「それって誰かに与えることもできるのか?」


「うーん……できるんじゃないですかね、神奈子さまですし」


 そういうことか。この前のお空が超強化されたっていうのはそれが原因か。今となっては過ぎたことだが一体何を考えてそんなことしたんだか……。


「諏訪子様は神奈子様とは対になっていて、坤、つまり大地を創造することができるんです。土とかみずかとか植物を無から創り出す能力ですね」


 天と地、か。規模が大きくてあまり実感が湧かないな。守矢神社ではどうやらこの二人を祀っているらしい。あ、神といえば。


「博麗神社はなんの神を祀ってるんだ?」


 横を歩いている霊夢に思い出したかのように問いかける。今まで居候してて疑問には思っていたが、聞くのを忘れていた。


「え、知らない」


「…………はぁ?」


 返ってきた答えに思わず拍子抜けした声を上げてしまう。


「知らないっておま……マジか」


「だって知らなくたって死にはしないし守矢神社ここみたいに見えるわけでもないし」


 確かに霊夢の言うことも一理あるが、そもそもの前提として自分が祀っている存在が何か分からないって怖すぎだろ。


「ふふっ、そんな霊夢さんもかわいいですよ!」


「早苗は黙ってて」


「あう」


 早苗の額に霊夢のチョップが入る。そんないつも通りの微笑ましい光景を、なんとも言えない気持ちで眺めていた。





「あ、もうこんな時間になっちゃいましたね」


 早苗の言葉で外を見てみると、確かにもう暗くなってきている。


「ん、そろそろ帰らなきゃね」


「えぇ!?帰っちゃうんですかぁ!?」


 霊夢の発言に早苗が少し大げさに驚く。


「明日は依頼あるし」


「でもでも、夜ご飯くらい一緒に……」


 だが、早苗の言葉を遮って霊夢が言う。


「ダメよ」


 それを聞いた早苗はかなりしょんぼりした様子で肩を落とす。

 さすがに見てるこっちが可哀想になってきた。


(霊夢、さすがに可哀想じゃないか)


(うぅ……んなこと言われても……)


 霊夢のほうも少し困惑、というよりいたたまれないようだ。


「あーもう分かった!」


 もう何度も聞いた流れだ。この先はたぶん予想がつく。


「今日はダメだけど、また今度ならいいわよ。だから……」

「ホントですか!?」


 霊夢の言葉を聞き終わるよりはやく早苗が口を開く。


「ホントのホントですか!?」


「え、えぇ」


「やったー!」


 たじろぎながらも了承した霊夢を見て早苗がガッツポーズをする。

 あーあれか。これが前に霖之助から教えてもらった「尊い」ってやつか。

 ぴょんぴょん跳ね回る早苗を見てそんなことを思う。


「あぁもう……いいんだか悪いんだか……」


 その口調や動きこそやれやれといった感じのものだったが、霊夢が小さく頬を緩めているのを、俺の目は見逃さなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ