第66話 鬼と半人半鬼
──人里──
「ふぁ〜……」
比較的人通りの少ない道を霊夢と歩く。今は買い出しの最中で、あと少しでそれも終わる。
「あくびしてないでキビキビ歩きなさい」
霊夢にデコピンされる。
「いてっ、歩いてんじゃねぇか……ってあれ?」
そんなやり取りをしていると、前から見覚えのある金髪二人組が歩いてくる。
「あれ、地底から出てくるなんて珍しいわね」
片方は金髪ショート、鮮やかな碧眼の妬み妖怪。
もう片方は金髪ロング、俺は初対面かな? だが、確実に分かることがある。彼女は鬼だ。それは額から生える立派な赤い角が物語っていた。
「あん時の巫女……とそっちは誰だ?」
「私がやり合った奴よ。会わなかった?」
「いや〜……会った覚えはねぇなぁ……」
何やら向こうは二人だけで情報のすり合わせが行われたようだ。
「まぁどうでもいいか。んで巫女は調子どうだ?」
「別にいつも通りよ」
「パルスィ今日も妬んでんのか?」
「その直球さが妬ましいわね」
「いつも通りだな……」
その後も数分程度世間話をし、俺たちとパルスィたちは別れた。
なにか見定めるような視線を感じたのは、気のせい……だったのだろうか。
「なぁ霊夢」
「んー? 何?」
さっき出会った女性。鬼のことを思い描く。
「さっきのが……星熊勇儀?」
「え、そうだけど……どうかした?」
「いや、なんでもない」
あれが……萃香と同じ山の四天王。俺と同じ……鬼。
そのあとの買い出しはほとんど何をやったか覚えていない。ただ、あの鬼のことを考えていた。
「なぁパルスィ」
「ん、何?」
さっき会った男、奇妙な匂いのした男を思い出す。
どことなく……ただの人間ではない気がする……。
「さっきの男……ただの人間か……?」
勇儀のその質問に、パルスィは少し意外そうな顔をする。
「意外ね。勇儀が人に興味を持つなんて」
「そうかぁ……? アタシはそんなことないと思うけどなぁ」
「まぁいいわ。で、銀のことだっけ? あいつ、確か鬼と人が半々よ」
パルスィの答えに勇儀がなにかを考え込むような仕草をする。
「なんかあったの?」
「……いや、なんでもない」
「そ、あんま怪我しないようにね」
「……ッ!?」
予想外の言葉に完全に不意をつかれる。
「は、ははっ パルスィにゃ敵わねぇや」
そう言って、勇儀は笑い出す。
まさかそこまで見抜かれてるとは。こりゃ無傷で帰るしかねぇかな……。
そんなことを考えながら、勇儀はパルスィとともに地底へと帰った。
朝、陽も昇らないうちに神社を出る。
「………………居るといいんだけど」
彼が向かうのは、地底。
理由は至極単純、人に会うためだ。
「意外と……来てみるもんだな」
地底に降り立つと、ちょうど向こうから目的の人物が来てくれたところだった。
「なんの打ち合わせもないのに来てくれるとは思わなかったぜ? 半人半鬼」
盃片手に堂々とした立ち振る舞いで彼女は話し出す。
「星熊……勇儀……。純粋な鬼……か」
二人の間に微妙な距離感が浮き出る。
「俺は今日、あんたに聞きたいことがあって来たんだ」
別に何かを考えていた訳ではない。ただ、勝手に言葉が出てきた。
「でも、まぁあんたに会ってどうでもよくなった」
闘争心をギラつかせて勇儀を睨む。
「殴り合い、のが分かりやすいだろ?」
「ははっ、そりゃあいい。だがここはちと狭すぎるな……場所を移動しよう」
勇儀の提案により、場所を移動する。
──草原──
「ここならちょうどいいだろ」
連れてこられたのはだだっ広い草原地帯。遮蔽物は横にある山くらいなものか。多少だが木も生えているようだ。
「俺は、あんたと戦うにあたって決めたことがあるんだ」
「あん? 何だ、言ってみな」
不思議そうな顔をしてこちらを見る。
「俺はあらゆるものを見極める能力を持ってる。だけど、今回その能力は一切使わない」
「……ほう」
勇儀が目を細める。
「俺自身の能力だけで、あんたに勝つ」
俺のその宣言に、勇儀が大声で笑い出す。
「アタシに勝つと出たか! いや中々面白い奴だなお前も」
「能力の発動したかしてないかは俺の目で分かる。能力使うと目が青くなるんだ。こんな風にな」
実際に能力を発動させ、目の色を変える。
彼女は戦闘中に相手の異変に気づかない訳がない。
「うん、いいだろう。じゃあアタシもアタシの能力を使わずにやってやるよ」
そう言って、勇儀が構える。
「まずはお前の攻撃ターンにしてやる。遠慮なくかかってきな」
「じゃ……遠慮なくっ!」
二人の間を一陣の風が吹き抜ける。
二匹の鬼の戦いが、幕を開けた。




