第63話 女子会と男子会その1
──博麗神社──
「第1回、女子会の開催だぜっっっ!!」
「わぁ〜」
勢いよく叫んだ魔理沙に苦笑しながら拍手をする妖夢。
鈴仙は呆れ気味にため息をつき、霊夢と咲夜は心底興味無さそうな顔をする。
「なんでそんなにテンション低いんだぜ?」
「私の貴重な休みなんだけど?」
「師匠がせっかくくれた休み……」
「単純にうるさい」
咲夜、鈴仙、霊夢の順で魔理沙の発言をばっさりと切り捨てる。
「最後のやつはおかしいだろ!?」
指をさされても当の本人は呑気にお茶を飲んでいる。
「まぁまぁ、こんな風に集まれることなんてあんまりないんだし、たまにはいいんじゃない?」
そんな魔理沙を見かねてか、妖夢が助け舟を出す。
「集まるのは別にいいのよ……問題は」
珍しく霊夢が肯定的に話す。が
「なんでウチなのよ」
魔理沙を睨みつけてそう言う。
だがその場にいた霊夢以外は口を合わせてこう言った。
「「「「なんとなく」」」」
「帰れ!!」
キレた霊夢をなんとかなだめて、仕切り直す。
「そういえば、早苗はいないのね。女子会なんて、真っ先に来そうなものだけど……」
「早苗は今日は忙しくて無理なんだと」
少し意外そうに呟いた咲夜に、魔理沙がつまらなそうに返す。
しかしすぐにさっきのテンションに戻す。
「よし、それじゃあ女子会っぽく恋バナでもしようぜ!」
だがその言葉にピンときていない者が2人。
「「恋バナ……?」」
もちろん霊夢と咲夜だ。
「霊夢……咲夜……恋バナも知らないのか……」
「さすがに女としてそれはどうなの……」
魔理沙と鈴仙に口々に言われるも、二人は
「「興味ないし」」
ですませるだけだった。
「えっと……好きな人とか、気になってる人とか、そういうのを話す感じよ」
そんな二人にも妖夢は丁寧に教えている。
本人達に聞く姿勢があるかは別として。
妖夢からの説明が終わったあとに、霊夢が口を開く。
「じゃ、こういうのは言い出しっぺからよ。魔理沙お願いね」
「えっ」
さすがに自分がターゲットになるとは思ってなかったのか、魔理沙は一瞬戸惑ったような顔をする。
しかし周りから有無を言わさぬ雰囲気を感じ取り、仕方なく一番をつとめることとなった。
「じゃあ私、霊夢、咲夜、妖夢、鈴仙の順で行くぜ」
「異議なーし」
鈴仙が緩く返事をし、女子会(恋バナ)が始まった。
──香霖堂──
「で、今日は何のようだい?」
かれこれ店に居座って30分ほど、霖之助がついにその言葉を発する。
「追い出されたんだよ」
「え?」
なんの事だかさっぱりといった霖之助に、仕方なく説明する。
「神社で女子会なるものやるらしくてさ、俺は出てけだと」
せっかく寝てようかと思ったのに酷いことするぜ。ったく……。
「それでここに来た訳か」
ようやく納得した霖之助が苦笑しつつも頷く。
どうやらその光景が目に浮かんだらしい。
「そゆこと。んで、あっちが女子会ならこっちは男子会をやってやろうかとね」
「………………男子会」
「そ、男子会」
二人の間に沈黙が流れる。
霖之助が口を開く。
「具体的には何を?」
「分からん!」
「はぁぁぁ……」
大きなため息とともに、霖之助は頭を抑えるのだった。
──博麗神社──
「好きな人、ねぇ……」
魔理沙が顎に手をあて、少し思案する。
「今思うと私自身そういうの分かんなかったわ」
「言い出しっぺがそれってどうなのよ」
鈴仙が的確なツッコミを入れる。
「じゃあ香霖堂の店主はどうなの? 仲いいみたいだけど……」
妖夢がなんとか話題を広げようと魔理沙に質問する。
「香霖のことか? あいつは……うーん」
魔理沙はさっきよりもうんうん唸りながら悩んで、話し始める。
「香霖とはそういうんじゃないんだよ。なんつーか……兄妹? みたいな感じだな」
魔理沙の話を四人は静かに聞いている。
「物心ついた時から一緒にいたし、家族みたいなもんなんだよ。だからあんまそういうのは分かんねぇなぁ」
「そうだったんだぁ」
「ま、魔理沙がそういうのに疎いのは分かってたけどね」
妖夢が微笑み、鈴仙はやれやれといった様子で首を振る。
「う、うるさいのぜ! と、とにかく次は霊夢だ」
今のを恋バナにカウントしていいのかは不明だが、流れ的にこのまま霊夢の番になるようだ。
「はいはい、私ね」
気だるげな態度で霊夢は返事をした。
──香霖堂──
「そういや霖之助って魔理沙のことどう思ってんだ?」
俺の質問の意図が分からなかったのか、霖之助は首を傾げる。
「異性としてどう思ってるのか、って話」
「あぁ、そういうことか」
理解した、というようにメガネに手を触れる。
「結論から言うと僕は銀の期待しているようなことは魔理沙に対して感じていないよ」
「……そっかー」
霖之助の言葉に少し驚いたが、すぐにいつもの半笑いにもどす。
「僕は一度魔理沙の父に弟子入りしたことがあってね。その時から魔理沙とは遊び相手になってあげてたのさ」
どこか懐かしそうに話す霖之助は、やはり見た目通りの年齢ではないことを感じさせる。
「どちらかといえば兄、という位置だろうね。兄なら、妹の幸せを願うのが普通だろう?」
そう言ってメガネ越しに見つめてくる瞳は、どこか楽しげだった。
「だからミニ八卦炉とかも作ってやってるのか」
「そういうことになるね。友達も増えたみたいで、兄貴は嬉しいもんさ」
「ははっ、違いない」
霖之助のそういう誠実さはとてもいいと思う。本当に面倒見のよい兄、みたいな感じだ。
俺に兄がいたら、こんな感じだと嬉しいかな。
「じゃあ、銀のほうはどうなんだい?」
「ん? 何が?」
「気になる人の話さ。霊夢とは一緒に住んでいるんだろう?」
「あぁ、そうだな……俺は──」
意外にも、男同士でも会話が途切れることはなく、まだしばらくは語り合えそうだ。
もちろん女子会のほうも、まだまだ終わる気配はなかった。




