第59話 地底編 核融合と家族
──灼熱地獄跡──
「いっくよー! 爆符・プチフレア!」
お空が左腕をこちらに向け、赤い大玉を撃ち出してくる。だが文が言っていたほどの危険さを感じさせるものではない。
「言うほど……じゃねぇか?」
ところどころに飛び出た鉄や手すりを飛び移り、弾幕を躱しながら呟く。
「むぅーすばしっこい! 爆符・メガフレア!」
先ほどよりも大きな、そして多くの火球を出してくる。
(段階的に強くなるって感じか……)
文なら大丈夫だと分かってはいるが、念の為そっちに弾幕が飛ばないよう配慮しつつ避ける。おかげで攻めるに攻めれない。
「そうだ!」
そこで、お空が何か思いついたように手(棒)を打つ。
「逃げるなら逃げれなくすればいいんだ!」
「……は?」
お空が何を言いたいのか全く分からなかったが、次の瞬間に身をもって知ることとなる。
「爆符・ペタフレア!」
お空の手から火球が放たれる。
そこまでは先ほどと同じだ。
「おいおい嘘だろ!?」
問題はその大きさ。
視界全てを覆い尽くすだろう大きさだ。もちろん先刻のお空のセリフ通り逃げる場所がないほどには大きい。
「これはさすがにマズいですね」
文がそう呟き、前に出てくる。
「少し下がってください。風神無双!!」
お空のスペルに対抗し、文もスペルを唱える。超高速で移動しながら火球に向かって大量の光弾をぶつけ続ける。
「ダメみたいですね……」
しかし、それはお空のスペルの威力を弱めることはできても、打ち消すまでには至らない。即座にそう判断した文はさとりと銀をひっつかんで飛ぶ。
「あ、文っ!? 何し」
「口閉じて! 舌噛みますよっ!」
彼女は問答無用で火球に突っ込む。若干の追尾性能があるのか、左右の火球が内側を向く。
「お、おい……信用していいんだよな」
「………………」
文の考えていることが何となく理解できた。理解できたが、本当にいけるのか? 少しでもタイミングを間違えれば、あの火球に一瞬で焼き尽くされるだろう。だがここまでくればもう文を信じるしかない。
「ここ、ですっ!」
火球が目前に迫り、その熱気を肌で感じられるほどの距離で急停止、急降下する。
「さとりさんしっかり掴まっててください!」
「……はい!」
マグマの熱で肌が焼けるすんでのところで再び急停止、文の弾幕により多少小さくなった火球の後ろにできた、ほんの少しの隙間目掛けて急上昇する。
火球は高速移動する文を追いきれず、ついには火球同士で衝突、大爆発を起こす。
「ふぅ……なんとかなりましたね……」
眼下で大爆発を起こす火球を見て、文は安堵のため息をつく。
「大丈夫ですか? さとりさん」
「はい、オールOKです」
「んなことより俺の心配もしろぉぉぉぉ!!」
無事を確認し合う二人に宙ぶらりんになりながら叫ぶ。
文はさとりのことは左腕でしっかりと抱え上げ、細心の注意を払っていたが、俺の方は首根っこを掴んだだけというこの待遇の差。おかげでガックンガックン物凄い揺れで若干方向感覚がおかしくなっている。
「うるさい人はこうしましょう」
「えっ、おまっ、何す、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
文は一回転して俺をお空の方へぶん投げる。遠心力もプラスされたいい投げだ。かなりの速さでお空へと飛んでいく。
「ぶつかるうううううう!!」
「わわわ待って待ってー!」
お空が棒をこちらに向け、スペルを発動しようとする。
HAHAHA、冗談はよしてくれよ。これ俺避けらんねぇじゃん。
「光熱・ハイテンション……」
「彗星・ブレイジングスター!」
お空がスペルを発動する直前に、白黒の何かが横切り、お空の棒に衝突、軌道を変える。
「ぐえっ」
ついでに伸びてきた手が俺の胸ぐらを掴んで飛ぶ。おかげで思いっきり首が絞まった、なんでこう乱暴な奴が多いんだ。
「げほっ……魔理沙が来てるってことは……」
「あぁ、間に合ったぜ」
そう言って魔理沙が見上げる先には──
「うにゅ? また新しい人ー?」
「えぇ、私は異変の解決者」
少女は、お祓い棒を構える。
「博麗霊夢よ」
霊夢が来たということは、この異変ももう終わりだな。あまり活躍の場が無かった気がするがそこはそれ。解決できるんだから良しとしよう。
「なんで戦ってるかわかんないけどとりあえず倒していいよね!」
「おいちょっと待てぃ!!」
もはや彼女自身なぜ俺たちがここにいるのかも忘れているらしい。なんてこった。
「お空……鳥頭なので……」
「それ言えば許される訳じゃねぇからな!?」
真顔で言うさとりに宙ぶらりんのままツッコミを入れる。
「行っくよー!」
お空が力をため始める。赤いオーラが出始め、見るからに危険なのが分かる。
「魔理沙、文のとこまで行ってなさい」
霊夢のその言葉に魔理沙は何か言おうとした様子だったが、無言で頷き、文の所まで上昇していく。
☢Caution!!☢
「アビスノヴァ!!」
お空が溜めていた力を解き放つ。
彼女を中心にあらゆるものを灼き尽くすまさに地獄の業火が巻き起こる。
「八方鬼縛陣!」
霊夢が結界を張ったことにより、まるで炎のほうが霊夢を避けているように見える。
「あれ……すげぇ温度だな」
「なぜそう思うんです?」
ついこぼした言葉を文が耳ざとく聞き取り、質問してくる。
「あー……最近できるようになったんだ。なんつーか、俺の能力はどこまでできるのかまだ分かんないんだよ」
温度が見極められるようになったのはつい最近。どう言い表せばいいのだろうか。
色分けできる、というのが適切か。高い温度なら赤く、低い温度なら青く見える。
自分で意識してものの見方を『切り替える』ことで、温度を見極められることに気づいた。
そういえばさっきの文の本気の移動もハッキリと見えていた。以前ならば残像すら見えなかったのに。…………成長している、ということだろうか。
「さぁ、終わりの時間よ」
お空のスペルが切れると同時に霊夢がお空のもとへ突っ込んでいく。
「うわわ炎星・十凶……」
お空が慌ててスペルを唱えようとするが、さすがに距離が近すぎた。
お祓い棒が振り下ろされ、お空の脳天に綺麗に直撃する。
「よっと」
「きゅう……」
気絶したお空を霊夢が掴み、下に落ちるのを防ぐ。
その光景を上から眺めていた俺たちはようやく緊張を解き、全員で地霊殿へと戻っていった。
「……う……ん?」
お空が目を覚ます。
「ここどこー……?」
まだ意識がハッキリしないのか、目をこすりながら辺りを見回す。
「お空、ここは地霊殿よ」
さとりはお空の顔を覗き込み、優しい声色でそう言う。
「この人達は?」
「この方々はお客さんよ。お燐が案内してくれるから大丈夫よ」
さとりから、お空は目を覚ましたら何も覚えていないと思うから初対面のように対応してくれ、と言われたが、まさか本当に覚えてないとはな。
「初めまして、まぁすぐ帰るから気にすんな」
すぐに忘れてしまうなら、名前を言う必要もない。そう思って、すぐに帰ろうとしたのだが。
「私は霊烏路空、お空でいいよ。おにーさんたち、名前は?」
なかなかに予想外の反応だ。
さとりの方を見ると、何やら苦笑を浮かべている。
「俺は銀だ」
「霊夢」
「天才魔女の魔理沙さんだぜ」
「清く正しい射命丸、どうぞお見知り置きを」
それぞれがお空の目を見て名前を言う。
「私忘れっぽいけどちゃんと覚えるよ! また来てね!」
どうやらちゃんと覚えてくれるらしい。
お空は笑顔でこちらに手を振る。
「一応地上まであたいが見送るよ」
「ありがとな」
お燐が前を歩き、その後を霊夢たちが続く。
「そうだ、銀さん」
「んあ?」
俺も霊夢たちの後を追おうとすると、さとりに呼び止められる。
「もし私の妹を見つけたら、一度地霊殿に帰ってくるよう言ってくれませんか? 緑の服を着た子で、私と同じくらいの背の」
「ん、分かった。そん時は言っとくよ」
そう言って、さとりたちに背を向ける。
「ねぇさとり様」
「ん? どうしたの」
「大好き!」
「……えぇ、私もよ」
「えへへー」
さすがにここで振り向くのははばかられた。二人の表情は振り向かなくても手に取るように分かる。
お空の今の言葉が、さっきのさとりの配慮を理解してか、それともただの日頃からくる感謝の意なのか。どっちかは分からない。
でもそんなことはどうでもいい。
なんせ今のやり取りを聞けただけで、ここに来てよかったと思えたのだから。
「ほら銀、早く行くのぜ!」
「はやくしないと置いてきますよー」
「はいはい今行くよ」
相変わらずせっかちな三人のことを、足早に追いかけるのだった。
いかがだったでしょうか。
ようやくお空との戦闘が終わりました。
アホの子ってなんか可愛いですよね。
地霊殿メンバーは紅魔館とはまた違った家族の在り方でそういうとこ好きです。
それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




