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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
第5章 霊知の太陽信仰
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第55話 地底編 鬼と怪力

──地底──


「来な、人間」


勇儀は不敵な笑みを浮かべる。


「じゃあ遠慮なく、封魔針、夢想妙珠!」

「行くぜ! 魔符・スターダストレヴァリエ!!」


霊夢は封魔の力が籠った針と、5色の弾幕を放ち、魔理沙は星型の弾幕を大量に放つ。

向かってくる大量の弾幕を前に勇儀は

────動かなかった。


「なっ、あいつ、受け切る気か!?」


「いやいや、さすがにそんなことはしないさ」


驚愕する魔理沙の言葉をやんわりと否定する。


「これを受けたら、私は無事でも酒が零れちまう。だから……」


勇儀はそこで言葉を止め、大きく息を吸い込む。

そして


「────ッ!!」


()()()()


「なっうるさっ……!」

「なんて大声出しやがる……!」


大地をも揺るがす極大咆哮は、霊夢と魔理沙の放った弾幕をすべて打ち消す。


「とんだデタラメ種族ね……」

「咆哮だけで……弾幕を……」


「ふぅ……。ほら、もっと本気でかかってこい?」




「……勇儀って奴はどれくらい強いんだ?」


「……どれくらい強いかと来ましたか」


文は顎に手を当て、少し悩んでから答える。


「そうですねぇ……萃香さんと同じくらい、と言って分かりますかね」


「あー……デタラメってことは分かった」


そのレベルならどこか他の奴らとは違う酔狂な奴だとは思うが、今の異変中には会いたくないな。


「どんな能力を持ってるんだ?」


「ええと……確か怪力乱神(かいりょくらんしん)を持つ程度の能力、でしたかね」


「怪力乱神?」


「おや、ご存知でない。それでは恒例の清く正しい射命丸の説明会を始めましょう!」


「聞いてる奴ひとりだけどな」


そんな言葉は聞こえないといった態度で、文は話し始めた。


まず怪力乱神とはなんぞや。それは人知を超えた不思議な現象や存在のことです。理性では説明できないもの、と言った方がはやいですかね。それぞれ怪異・勇力・悖乱・鬼神で怪力乱神です。

『怪』は尋常ではないこと、『力』は力の強いこと、『乱』は道理に反して社会を乱すこと、『神』は神妙不可思議なことであるとされています。

まぁこんな風に言われていますが分かりやすく言えば『単純に力が強い』ですかね。

おそらく勇儀さんが全力ならば殴っただけで山が消えます。



「ごめんもう1回」


俺の聞き間違いだろうか。いや聞き間違いに違いない。だって山が消えるって、え?


「全力ならば()()()()()()()()()()()


「マジかよ……」


(聞き間違いじゃなかった……ヤバいな幻想郷の鬼……)



咆哮する声だけで弾幕すら発生させるとも言われていますね。

それと、萃香さん曰く「呪術的なことには疎いが、単純な力比べなら私より圧倒的に強い」と仰られていました。



「……萃香にそこまで言わせるのか」


「えぇ。幻想郷の実力者の中で、最も分かりやすく強い方、とも言えますね」


確かにただひたすらに怪力、というのは分かりやすいかもしれないが、その規模が狂ってる。


「今1番会いたくねぇ相手だな……」

「殺されることはないでしょうが会いたくはないですねぇ」




「くっ……マスター……スパーク!!」


魔理沙が小さな八卦炉から高出力のレーザーを放つ。


「お前魔法使いか、なるほどなぁ」


そんなことを言いながら、勇儀は足を半歩引き、拳を構える。


「よっ」


レーザーを殴った。


「どうしたどうしたァ! 威力足んねぇぞ!」


魔理沙のマスタースパークを殴っただけで相殺し、再び仁王立ちする。


「ん〜、技受けてんのも飽きたな。アタシからもその『弾幕』ってのに付き合ってやるよ」


そう言って、勇儀が構える。


「怪輪・地獄の苦輪」


勇儀からちょうど彼女が着けている手枷のようなリング弾が放たれる。


「ブレイジングスター!」

「夢想封印・集」


魔理沙と霊夢がほぼ同時にリング弾を消滅させるべくスペルを発動する。だが、リング弾が消滅すると同時にそこから小さな光弾が弾け飛び、2人に迫る。


「弾幕なら私は負けないぜ!」

「二重結界」


魔理沙は箒に跨り、空中を自由自在に飛び回って光弾を躱しきる。

霊夢は冷静に結界を張り、弾幕を防ぎきった。


「おぉ、中々やるじゃねぇか」


そこで、勇儀は何か思いついたような顔をする。


「そうだ、ルールの訂正といこう。『実力を認めたら』の部分を『アタシの攻撃を凌ぎきったら』に変更だ。ただし酒を零したらアタシの負けってのは続行でな」


その提案は、どちらかといえば霊夢たちに勝機の表れるものだった。今のところ勇儀の決定打となるものはなく、酒を零させることすらできそうになかった。


「そうと決まりゃ早速いくぜ、力業・大江山嵐」


勇儀の頭上に大量の大型光弾が出現、2人目掛けて放たれた。


「量が多いのぜ……!」

「避けきる……!」


霊夢と魔理沙は縦横無尽に駆け回り、飛び回り、なんとか全ての光弾を躱しきる。


「いいねぇ、楽しくなってきた! 光鬼・金剛螺旋!!」


勇儀が左の手のひらを掲げると、その上に大型の光弾で構成された螺旋が出来上がる。


「オラァァ!!」


彼女はそれを振り回した。


「スペル振り回すとか聞いたことないぜっ……!」

「魔理沙、こっちに。八方鬼縛陣!」


霊夢が結界を張り、勇儀のスペルとの力比べが始まる。


「ぐっ……くぅ……」


「ほらほらどうしたァ!」


やがて霊夢の結界にヒビが入り、ついには砕け散った。


「私に任せろ! マスタースパーク!!」


魔理沙の放ったスペルにより、勢いの弱まった勇儀のスペルが相殺される。


「危なかったぜ……」


魔理沙が安堵したのも束の間。


「隙が多いぜ? 魔法使い」

「なっ!?」


一瞬のうちに勇儀が魔理沙の背後に回っていた。


「魔理沙ッ!!」


「ほらよ」


勇儀が放ったのはただのデコピン。

だが、それは魔理沙を突き飛ばし結界まで張った霊夢を、結界ごと壁まで吹き飛ばした。彼女が本気だったら結界など紙のようなものだが。


「霊夢!!」


「仲間の心配してる場合か?」


「クソッ!」


魔理沙は咄嗟にスカートから失敗作の魔道具を放り投げ、起爆する。目眩し程度だが、やらないよりマシだ。


「いいねぇ……隙は多いが状況の処理能力はあるみたいだ……」


心底から楽しそうに勇儀は話す。


「さて、じゃあ次で最後にしてみるか」


霊夢が起き上がったのを見て彼女がそう言うと、周囲の空気が瞬間的に凍りつく。


勇儀が、構えをとる。


「四天王奥義・三歩必殺」


勇儀が、一歩踏み込む。

勇儀を中心に地面が揺れ、周囲に高密度の弾幕が展開される。

勇儀が、二歩踏み込む。

先ほどより大きく地面が揺れ、一段目より外側に少しまばらに弾幕が展開される。


少しの間を空け、大きく力を溜める。


勇儀が、三歩踏み込んだ。

近くの建物が倒壊するほどの揺れが起き、二段目より外側を再び高密度の弾幕で埋め尽くす。


「さァ避け切ってみせろ、人間!!」


目の前が真っ白になるほどの高密度の弾幕が、動き出す。


「弾幕なら……私は絶対負けないぜ!!」


魔理沙は弾幕の間の小さな隙間に体を入れ込む。ひたすらに、ただひたすらに避け続ける。


「夢想天生……!」


霊夢はスペルを唱え、あらゆる事象から浮く。

弾幕が彼女の体を通り抜けていく。


「「私たちの……勝ちだ!!」」




超高密度、その名に恥じない弾幕を抜けた先で、勇儀は

──呑気に酒を飲んでいた。


「見事見事、お前らすげぇな!」


もはや2人は怒る気力すら湧かず、ジト目で勇儀を見る。


「まさか必殺の一撃を躱しきるとはなぁ」


その言葉に霊夢がぼそりと呟く。


「手ぇ抜いてたクセに」


「さぁ、なんのことやら」


だが、勇儀はその真偽を明らかにはしなかった。


「さて、もう行っていいぞ。実力は分かったしな」


「……あんたはどうするの?」


「またその辺を散歩するさ。アタシの助けが欲しけりゃ呼んでみな。気が向きゃあ行くと思うぞ?」


最後にウィンクしながらそう言って、勇儀は旧都へと消えていった。


「…………死ぬかと思ったぜ……」


「まだ異変は終わってない。もうひと踏ん張り行くわよ、魔理沙」


「うぅ……そうだな……」


霊夢はグロッキーになっている魔理沙を励まし、旧都の中央に位置する建物に目を向ける。


「あいつらはもう着いたかしらね……」


小さく呟いて、自分たちも先を急ぐのだった。


いかがだったでしょうか。

今回は勇儀姐さんとの戦闘でした。

いやぁ……今回は頑張って書きましたよ。姐さんの強さが少しでも伝わってくれれば嬉しいです。

それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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