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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
第5章 霊知の太陽信仰
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第54話 地底編 鬼と四天王

──地底──


「魔理沙、遅いわよ」


「霊夢が……速すぎるんだぜ……!!」


帽子を押さえながら走る魔理沙に先を走る霊夢は呆れ気味に振り返る。


「仕方ないわねぇ」


霊夢はため息混じりにそう呟いて、速度を落とし魔理沙の横を並走する。


「それにしても……静かね」


「あぁ……まるで誰もいないみたいだぜ」


旧都に入ってみると、その見た目とは裏腹に、全くといっていいほど人気がない。いるのは妖怪だから人気というのはおかしいかもしれないが。


「路地に隠れてこっちを見てる奴もいるみたいだぜ」


そう言って路地に目を向ければ、妖怪と目が合う。だがその妖怪は魔理沙を見るなりすぐに隠れてしまった。


「私たちに怯えているのか、単にいつも静かなだけなのか。それとも……」


霊夢が旧都の中央に位置する建物に目を向ける。


「この異変が原因なのか」


霊夢の勘はどうやらその建物が怪しいと示したらしい。次の目的地は決まったようだ。


「怯えてるんじゃねーの? なんたってこの魔理沙様がいるからな」


魔理沙がそう言った時、少し先の店の戸が開く。


「魔理沙、止まって」

「分かってる、あれは……ヤバい」


霊夢と魔理沙が足を止める。

出てきたのは長身の女性だった。大体美鈴と同じくらいだろうか。長い金髪、両の手首には手枷、右手には盃を持っている。

だが、1番の特徴は……


「こんなとこまで来るなんて……物好きな人間も居たもんだねぇ」


振り向いた彼女の額には、彼女が普通の妖怪ではないことを示す、角が生えていた。




「なぁ文」


「なんです?」


走りながら文に話しかける。

霊夢たちの姿は未だに見えない。相当先に行ってしまったのだろう。

先ほどから妖怪が姿を見せないのは霊夢たちがボコしたのか、ただ隠れているだけなのか。


「萃香から聞いたんだけど、地底にも鬼が居るんだって?」


「あぁ、いますねぇ。とびきり強いお方が」


思い出したかのように顎に指を当てながら文が言う。


「どんな奴だか分かるか?」


「んーっとですね。山の四天王って分かりますか?」


首を横に振る。山はおそらく妖怪の山のことだろうが、そんな話は聞いたことがない。


「分かりました」


そう言って、文は説明を始める。


妖怪の山は昔、鬼たちが治めていました。私たち天狗やそれ以下は従っていた感じですね。それで、その鬼の中でも特に強い者を『山の四天王』と呼んだのです。彼らが居なくなってからは、私たち天狗が統治するようになりましたがね。


「その四天王の一人は銀さんもご存知の伊吹萃香さんです」


予想はしてたがやっぱりか。あいつは鬼の中でも強かったんだな。


「そしてもう一人が」

「この地底にいると」


文が無言で頷く。


「ただ、あとの2人は私も知らないんですよね。名前も姿も見たことがない。でも確かに居たと伝えられているだけなんです」


そう……なのか。まぁ地底に1人いるという情報だけでもありがたいか。


「それで、その地底にいる奴の名前は?」


「はい、彼女の名前は……」




「…………鬼……ね」


霊夢が小さく呟く。


「おお正解、よく分かったな。ってこんな角生えてりゃ分かるか」


話しながら、鬼が近づいてくる。

霊夢はいつもの無表情だが、魔理沙は少し緊張しているようだ。表情に出ている。


「まぁそう怯えんなって。取って食ったりはしねぇよ」


そうやって鬼は笑い、霊夢と魔理沙を見回す。


「お前たち、異変解決に来たんだろ」


「えぇ、そうよ。だからここを通してくれないかしら」


物怖じせずに霊夢ははっきりと返す。


「私を見て逃げ出さない時点で相当肝は据わってるようだが……この先に行くなら実力も必要だ」


少し含みのある言い方で鬼は続ける。


「どうだ、私と手合わせしないか? それで実力が充分だと分かれば先に行ってもいい。悪いことはないと思うぞ?」


断れる訳がなかった。だが、手合わせしたところでこの鬼に勝てるという確証もない。

霊夢が何も答えずに黙っていると、それを見透かしたように鬼が言う。


「もちろん手加減はしてやる。そうだな……『この盃に入った酒を一滴もこぼさない』っていう条件でどうだ? もちろんアタシが実力を認めればそれでいいし、こぼせばその時点でアタシの負けだ」


そこまで言われては、さすがの霊夢も黙っていない。


「いいわよ、秒で終わらせてやるわ」


「お、おい霊夢!」


「決まりだな、じゃあちと移動するか。建物壊したら直すの面倒だしな」


魔理沙の意思は関係なく話が進んでいく。


(霊夢、本当に大丈夫なんだぜ……?)

(大丈夫、私の勘がそう言ってる)


霊夢がそう言い切ったのを見た魔理沙は、それ以上何も言わなかった。




「この辺でいいか」


連れてこられたのは壁に囲まれた広い中庭のようだった。


「それじゃあ始めるか」


鬼は霊夢たちを見据える。


「アタシの名前は星熊勇儀ほしぐまゆうぎ。全力でかかってきな」


そう言って、鬼は楽しげに笑みを浮かべた。




「へぇ、勇儀……か」


「まぁ会えるかどうかは分からないですがね」


それもそうだ。なにせ今は異変解決の途中。そんな道草を食っているヒマはない。


「とりあえず、先を急がねぇと」


霊夢たちはもう着いているかもしれない。

そんなことを考え、中央の建物目指してさらに加速するのだった。

いかがだったでしょうか。

ちょっと戦闘が長くなりそうだったので無理やり切ってしまったんですが、お許しを。

次回は姐さんとの戦闘から始まる予定です。

それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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