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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
第4章 幼心地の有頂天
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第48話 緋想編 巫女と天人

──草原──


「……明らかに誰か戦った跡があるわね」


誰もいなくても、確かにそこで戦った者がいたはずだ。


「戻ってきて正解だったかもね」


予想が確信に変わりつつあるなか、彼女は神社へと戻るのだった。

──博麗神社──


快晴とともに、博麗霊夢は神社に辿り着く。


「……ようやく見つけたわよ」


神社のあった場所に佇む少女を見て、霊夢予想は確信に変わった。


「私は天人、比那名居天子」


天子は静かに話し始める。


「今回の異変の目的は博麗霊夢、あなたよ」


「…………」


天子が霊夢に向き直る。


「幻想郷最強と言われるあなたを私の暇つぶしに付き合わせてあげるという目的がね!」


バーン、と効果音がしそうなくらいの勢いで言い切る。


「最強? 私より紫や萃香のが強いわよ? 人間で言えばそうかもしれないけど」


紫と聞いた天子はビクッと肩を震わせたが、霊夢は気づかなかった。


「と・に・か・く! 私があんたを選んであげたの! だから戦いなさい! 勝てば天気も直すから!」


天子が霊夢に剣を向ける。

だが、霊夢はそれに動じない。


「ひとつだけ、質問いいかしら」


「……? いいわよ?」


突然霊夢が話したのに驚きつつも天子は質問を許可する。


「神社を壊したのはなぜ?」


気の所為か、少し言葉に力がこもっている気がする。


「え、決まってるじゃない。あなたに本気を出させるためよ」


なんの悪気もない笑顔で天子は言い切る。

霊夢はと言うと……言うまでもないか。


「へぇ〜なるほどなるほど……私に本気を出させる……ねぇ」


「な、なによ……」


低い声で繰り返す霊夢に、若干の恐怖を覚える。


「決めたわ、謝ったらボコボコはやめようと思ったけどダメね。お望み通り全力でフルボッコにしてやるわ!!」


「え、あ、き、来なさい!」


(……さっきまでの妖怪たちは手を抜いてあげてたけど、こいつは本気でやらなきゃね)


剣を構え、霊夢に意識を集中させる。


「絶対ぶっ潰して弁償させる……夢想封印!!」


「開幕からやる気ね!」


天子に向かって放たれたカラフルな弾幕を、緋想の剣を使って全て一刀両断する。


「ふふん、どーよ」


ドヤ顔で霊夢のほうを見れば、彼女はすでにそこにはいなかった。


「夢想封印 集!!」


今度は天子を囲むように弾幕が配置される。


(これは避けられない……!)


「無念無想の境地!!」


瞬時にスペルを唱え、霊夢の弾幕を凌ぐ。


「………………クソ硬いわねこの天人」


「次はこっちの番よ!」


巻き上がった砂煙を突っ切って、霊夢の目前に迫る。


「気炎万丈の剣!!」


咲夜と戦った時、いや、妖夢と戦った時よりもさらに早く斬撃を繰り出す。


(なのに……なのに、なんで……)


攻撃が当たらない。

言ったところで信じないかもしれない。強いて言うならば、霊夢は何も考えていない。ただ、純粋に勘と生まれ持った身体能力だけで躱しているのだ。もちろん天子の斬撃など見えていない。


「くっ……! 勇気凛々の剣!!」


大きく飛び退りながら剣を振り下ろす。そこから大小の光弾と斬撃が飛んでくる。


「二重結界」


霊夢はそれを二重に結界を張ることにより防ぎきる。


「なら……荒々しくも母なる大地よ!!」


地面が所々隆起し始め、霊夢を下から突き上げようとする。


「このクソ天人……敷地まで荒らして……」


だがそれすらも霊夢は勘で避けていく。


「でも本当の狙いは……要石・カナメファンネル!」


そう、天子の狙いは避けた霊夢の軌道を読み、そこへ弾幕を撃ち込むことだった。


「当たる……!」


思わず声を出してしまうほどには天子も切羽詰まっていた。

しかし、それでも霊夢は焦りすら見せず、余裕の表情を崩さない。


「八方鬼縛陣」


自身の周囲に先ほどよりも強力な結界を張り、天子のレーザーをすべて受けきる。


「あんたホントに人間なの!?」


「人間よ」


跳躍する天子を見ながら霊夢は答える。


「天地開闢プレス!!」


天子は博麗神社より一回り大きな要石を霊夢に落としてくる。


「……あそこね。陰陽鬼神玉」


霊夢が要石に向かって弾幕を放つ。


「そんなので壊せるわけ……」


壊せるわけない。そう言おうとした瞬間、要石が粉々に砕け散った。


「んなぁっ!?」


理由は至極単純。たまたま、要石にヒビが入っており、たまたま、霊夢の弾幕がそこに当たり、要石を砕いたのだ。


「ど、どんな確率よそれ!」


「運も実力の内、よ」


そう言った霊夢は、天子の隙を突き、彼女の腹部に手を当てる。


(あ、しまっ……)


「夢想封印 散」


散、という名の通り、本来は夢想封印が細かく散らばったものを当てるスペルだ。それを拡散する瞬間。最大威力、最高ヒットする場所で放つ。


「きゃぁぁぁぁ」


猛烈な勢いで天子の体が吹っ飛ぶ。彼女が天人でなければ、今ごろ木っ端微塵だったかもしれない。


「ぐぅ……なんで……」


「もう終わりかしら?」


霊夢がそう告げる様は、さながら死神のそれだった。楽園の素敵な巫女はどこへ行ったのか……。


「まだ……まだよ……!!」


天子が空に向かって手をかざす。


「私の……正真正銘全力全開……」


天子の周りに気が集まり始める。

もうすでに赤く可視化できるほどには密集されている。


「行くわよ……! 全人類の……緋想天!!!」


天子が霊夢に手を向け極太のレーザー、否、超高速、超高密度の気弾を放つ。気弾の周りでは、過剰に集まった気が、パチパチと火花のように弾ける。


「はあああああ!!」


「…………夢想天生」


ここで、初めて霊夢が本気を出した。あらゆる事象から浮き、全ての攻撃が霊夢を通り抜ける。


「嘘……でしょう……」


放たれる弾幕の中を悠々と歩いてくる霊夢を見た天子は、それしか言えなかった。


「これで終わりよ」


無慈悲に、彼女は告げる。


「ッ!!」


目の前に来た霊夢に、ふらつきながらも剣を振るう。

もちろん、当たるわけがない。


「天覇風神脚!」


霊力を乗せた足での、鳩尾を的確に突く連続の昇龍脚。


「ガハッ……」


すでに全てのエネルギーを使い果たした天子は、地に倒れ伏したまま立ち上がることができない。


「……そこ、動くんじゃないわよ。私は河童を呼んでくるから」


それを見た霊夢は、すぐにどこかへ飛んでいってしまった。


「心配しなくったって……しばらく動けやしないわよ……」


天子はそう呟いて、空を仰ぎ見る。


いつの間にか、緋色の雲も消え去っていた。

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