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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
第4章 幼心地の有頂天
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第47話 緋想編 半人前と兎

「……で、どこへ行ったか分からないと」


「あぁ! 悪いな霊夢!」


全く悪びれていない魔理沙は元気に謝る。こいつも一度痛い目見たほうがいいんじゃないだろうか。


「……はぁ。一旦神社に戻ってみようかしらね」


「天人探し、頑張れよー」


「はいはい……」


魔理沙の言葉にもはや呆れしかなかったが、ほんの少しの確信を持って、神社へ戻るのだった。

──博麗神社近く 草原──


「幽々子様、この辺にいるって言ってたけど……ホントかなぁ」


現在妖夢がいるのは博麗神社の近く。こんなところで何かあれば霊夢がすぐに飛んでくるはずだ。それでも幽々子様がここと言ったなら何かあるはずなのだが……。


「うーん、やっぱり何にも……ん? あれは……」


妖夢が立ち尽くしていると、何やら向こうから人がやってくるようだ。どこからか風も吹き始める。


「うぅ……師匠は人使い、いや兎使いが荒いです……」


やってきたのは耳をしわしわにした鈴仙だった。


「あ、鈴仙さんもここに来てたんですね」


「あれ、妖夢?」


山風を引き連れて来た鈴仙は、妖夢とお互いにここに来た経緯を話し始めた。


「それで、幽々子様が『幽霊の数が減ってるわねぇ、見てきてくれない?』って。こんなとこ、霊夢がすぐ解決すると思うんだけどねぇ」


妖夢がそう言うと、鈴仙はうんうんと頷き


「私も師匠に言われたのよね。『あぁ優曇華、ちょっと見てきてほしい場所があるの。地震に関係するところだから』って。分かってるなら自分で行きなさいっての」


と、上司の愚痴を言い始める。もちろん耳は生き生きと動いている。


「でも結局何も……」

「待って、誰か来る」


妖夢の声を遮って、鈴仙は耳を澄ませる。


(足音の感じから女性……私たちと同じくらい……迷わずこっちに向かってくる……!)


「妖夢、たぶん異変の関係者よ」


「…………!」


鈴仙にそう告げられた妖夢は長刀を構える。


「あら、もうバレてるとは予想外」


現れたのは、青髪の少女。手には刃が不明瞭な剣を持っている。


「あなたは……この異変の敵?」


優曇華の質問に、少女は笑い出す。


「せーかい! あなたたちは異変解決者ね」


その言葉を聞いた2人は即座に戦闘態勢に入る。


「私は比那名居天子。さぁ、戦いましょう!」


ほぼ同時に鈴仙と天子がスペルを展開する。


赤眼催眠マインドシェイカー!!」

「無念無想の境地!」


鈴仙が銃弾のような弾幕を展開、天子の視界を操り、全方位から仕掛けたように見せかけるが、彼女自身の防御力強化のせいでまるで意味を為さない。


「弾幕が通らない……!」

「鈴仙さん、援護をお願いします!」


それを見た妖夢は即座に前に出る。

足下から飛び出る要石を右へ左へ躱しながら、あっという間に天子の元へ辿り着く。


「いいわ! 剣の勝負と行こうじゎない!」


妖夢の突きを右へ流し、切り上げる。だが妖夢はそれを短刀で防ぎ、十文字に斬りつける。


(短刀は捨て、長刀を防ぐ!)


瞬時に判断し、妖夢の長刀を防ぐ。硬化しているため、短刀のほうも刃が通らない。


「この程度なの!?」


天子が剣を大きく振りおろす。

妖夢はそれを後ろに飛び退いて躱し、刀を上段に構える。


「行きます。未来永劫斬!!」


妖夢の体が動くと同時に、鈴仙もスペルを展開する。


幻視ビジョナリ調律チューニング!!」


彼女は能力を応用し、効果の対象を妖夢にずらすことで、分身したと錯覚させる。


「な、分身!?」


もちろん天子がそれを知る訳がない。突然のことに対応できず、かろうじて身を捻ることで致命傷は避ける。


「やったの!?」

「まだ浅いです!」


「中々やるじゃない……」


(剣なら、本気を出してもいいかもね)


ほんの一瞬のための後、天子は妖夢に突進する。


「捌ききれるかしら! 気炎万丈の剣!!」


「くっ……!」


次々と繰り出される剣撃を、2本の刀を使って捌いていく。

そして、ほんの少しではあるが

────妖夢の方が上だった。


「せいっ!!」


「なっ!?」


天子の隙を突き、剣を弾きあげる。


「剣技・桜花閃々!」


妖夢はすかさず斬り下ろす。

剣閃が描いたところで桜色が弾ける。


「ぐっ……」


「まだ、立つのね」


妖夢の一撃を受けた後でも、まだかなりの余力を残しているようだ。


「鈴仙さん、次で決めます……」

「タイミングはそっちに任せたわよ……」


妖夢が左手を前に伸ばし、剣先をその上に乗せる。半身になり、下半身へと力を込める。


「来なさい、下界の者ども!」


「行きます!!」


妖夢が地面を蹴る。


「こんな技……!」


妖夢が全身のバネを使い、弾かれたように刺突する。

天子がそれを右へ流し、隙だらけの背中に剣を振り下ろそうとした。



刹那、妖夢の姿が消える。


「!?」

幻朧ルナティック月睨レッドアイズ


鈴仙の目が、紅く光っている。つまり消えたのは、彼女のスペルによるもの。


(まさか、今見ていたのは全て幻覚……?)


「空観剣」


背後から、妖夢の気配がした。


「ッ!!」


咄嗟に振り向き全力で剣を振るう。

だが、やはり焦りがあったのだろう。完全に重心がズレていた。

妖夢が天子の剣を流せば、彼女のバランスが完全に崩れる。

もちろん、そこには隙しかなく。


「六根清浄斬!!」


鮮やかな一閃。

妖夢の会心の一撃が決まり、天子がその場に倒れ込む。


「…………ふぅ」


妖夢が剣を収める。


「やったね妖夢!」

「やりましたよ鈴仙さん!」


2人が駆け寄ってハイタッチを交わす。


「鈴仙さんのサポートのおかげでなんとか勝てました……」


「ふふっ、妖夢の剣技が相手より上だったからだよ」


お互いのことを褒め合い、思い出したかのように天子のほうを振り向くと


「あ、あれ?」

「…………いないわね」


そこには、人がいた形跡だけを残して、天子は姿を消していた。

いつの間にか、2人の周辺の天気も直っていた。




「まさか半妖なんかに剣技で負けるなんて……」


悔しさに歯噛みする。


「……あと残るは、博麗の巫女ね」


その悔しさを胸の内に押し込み、歩いて行く。


そして彼女は静かに、神社のあった場所で霊夢を待つのだった。

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