第43話 緋想編 予兆と調査
──人里──
「ふぃー……そんじゃ、聞き込み始めっかな」
正直、あの緋色に染まった雲を見ていないという者はいないだろうし、ご覧の通り誰もが空を指さして噂してるくらいだ。たぶん人物についての情報なんかは手に入らないだろうけど。
「とりあえず……慧音のとこに行くか」
初めに会う人物を決め、俺は寺子屋へと向かうのだった。
──人里 寺子屋前──
寺子屋の前まで行くと、慧音が生徒たちに何かを話しているところだった。
「おーい、慧音ー」
名前を呼ばれた彼女はすぐにこちらを振り向く。
「なんだ、銀だったか。霊夢に異変について聞いてこいとでも言われたか?」
頭いいやつは察しがよくて助かるな。説明する手間が省けるってのは結構ありがたいものだ。
「そんなとこ。この異変について知っていることは何でもいい、教えてくれ」
そう言うと、慧音は迷わず説明し始める。
「すまないが黒幕についてはさっぱりだ。だがあの緋色の雲についてなら言える」
慧音が雲を指差す。
「歴史書で見たんだが、あの雲は地震の予兆らしいんだ」
「地震の?」
神社を襲ったあれか。関連していないとは言いきれないな。
「なんでも60年に一度の大きさのが来るらしい。嘘だ、とも言えないからこうして準備だけはしているんだ」
なるほど。だから念の為外で話してたのか。神社みたいに崩れたら大惨事だしな。
「そうだ、里の人たちから突然現れて『地震が起こる』とだけ言って去る人物がいるって聞いたぞ。さっき東、北と順に来たから西のほうに行けば会えるんじゃないか?」
「そりゃ怪しいな……分かった、行ってみるよ」
「あぁ、助かる」
そう言うと、慧音はすぐに生徒たちに向き直った。
──人里 西──
「さてと……この辺で聞き込みを……」
「あれ、銀じゃないか」
「お?」
聞き込みをしようと立ち止まったところを、背後から聞きなれた声が俺の名前を呼ぶ。
「なんだ藍か、紫に頼まれたん?」
振り返れば、紫の式である九尾の藍がいた。紫のとこで修行している時は結構お世話になった。
「お前も同じだろう? どうせなら一緒に探さないか?」
断る理由があるわけでもない。
「あぁ、そのほうが速いだろうしな」
「よし、それじゃあ聞き込みを」
「一体なんなんだアンタは!!」
「「!!」」
藍の言葉を遮る怒鳴り声に振り返れば、一人の男性となにやらよく分からない派手な羽衣(?)のようなものを着た女性が言い合っていた。
「ですから、これから地震が起こるから」
「突然入ってきてそんなこと言われて信じられるか! あの雲もアンタがやってるんじゃないのか!?」
「いえ、私は……」
女性は何か知っているようだ。聞いてみるか……。
「あの、少し話が聞きたいんですが」
「あぁ!? って銀か。お前からもこの女に言ってやってくれ」
「分かったからとりあえず落ち着いてくれ」
なんとか男性を落ち着かせたあと、話を再開する。
「んで、なんで地震がくるって分かんだ?」
「はぁ……そうですね。説明します」
仕方なし、といった様子で女性は話し始めた。
「私は永江衣玖。龍と人の世の狭間に住んでいる、俗に言う龍宮の使いです」
「その話、私にも聞かせなさい」
突如スキマが出現、その中から紫が顔を出す。天気雨を持ってきながら。
「紫様!? どうしてここに……」
「それは後、はやく教えなさい」
なぜか焦って、いや、怒っている紫に少し驚いたが、そのまま衣玖に話を続けてもらう。
「と言っても私は本当に地震が起こることを伝えに来ただけなんです」
「起こしているのは貴女の関係者でしょう?」
紫の鋭い指摘に衣玖が一瞬反応したのを俺は見逃さなかった。
「図星か。それは答えられないことなのか?」
「………………」
衣玖は答えない。
「見当はついたわ。私はもう行く」
「あ、ま、待ってください」
すぐにスキマに戻ろうとした紫を衣玖が引き止める。
「その、あの方は結構ワガママなので、少しお灸を据えてやってください」
「…………それで済むよう努力はするわ」
そう言うと、今度こそ紫はスキマに消えてしまった。
「全く分からないんだが」
「紫様が分かったならそれでいいんじゃないか?」
さっぱり状況が掴めない俺に、もう帰る気なのか藍が適当なことを言う。
「そう……だな。あとは紫や霊夢に任せりゃいいか」
俺の出番がないことに若干不服だがまぁいい。
「そうだ、久しぶりに藍の飯食いたい」
「ん、私もやることなくなったし、それぐらいなら紫様も許してくれるだろうし。いいぞ、うちへ行こう」
「よっしゃー」
60年に一度の地震が来ると言われても、いつものマイペースを崩さない俺たちだった。
──どこかの草原──
「あ、天気雨」
青髪の少女は、晴れているのに落ちてきた雫を見て呟く。
「ということは……やっぱり貴女が最初みたいね」
ゆっくりと振り向いた、その先には
「八雲紫」
スキマから現れた紫が殺気を放ちながら立っていた。




