第36話 永夜編 エピローグ
──永遠亭──
霊夢たちがちょうど輝夜と出会っていたころ、紫と永琳は。
(ここは一体何なのかしらね・・・)
無数の目が浮かび上がっていて、こちらを見ているのかそうでないかすら分からない。自分が立っているかどうかも分からない。
(全く・・・面白いことしてくれるじゃない・・・!)
月の頭脳と言われた自分も全く理解出来ないほどの術かなにか。永琳の性格上そんなものがあれば燃え上がるのは必然と言える。
彼女がこのスキマについて考察を始めた瞬間だった。
「ホント、余計なことしないでいいから大人しくしときなさいよー」
突如として空間が一部裂け、紫が顔を出す。
場所は真上。
永琳はすぐさま矢を放つ。
だが、その矢は紫に当たることはなかった。
「弓矢なんて物騒ねぇ」
「ここのほうが物騒だと思うけれど?」
飛んできた矢を手で弄びながら紫は呟く。
こちらからの一切の干渉はできない。抜け出すチャンスがあるとすれば紫がもう一度スキマを開けた時に彼女を拘束または殺して通り抜けることだ。
だが恐らく彼女がそんなヘマをするとは思えない。最初に言った通りならば、あと十数分でここから出すらしいがいまいち信用できない。
無言で紫を睨みつける。
「あら怖い。そうだ、殺風景だから外の風景を見せてあげるわ」
そう言って紫が指を鳴らすと永琳の目の前にスキマが現れる。
触れることはできなかったため、抜け出すことはできないようだ。
「これになんの意味が・・・って輝夜!?」
スキマから見える景色に輝夜が映っていた。
「しばらくそれでも見てなさい。たぶんすぐに分かるわ」
それだけ言って紫はどこかへ消えていった。
すぐに分かる、一体何が?
攻めてきた彼らの目的? それとも私たちが何か間違えていた?
考えても正直分からない。仕方なく紫に言われた通りにスキマを眺めるのだった。
それからの永琳は傍から見ればそれはそれは面白かったのかもしれない。
「なるほど・・・この子は鬼だったのね・・・」
「あぁもう輝夜ったらまた壁壊して!」
「この子たち意外とやるわね」
と、こんな風に一人でブツブツ呟きながらスキマを眺めていたのである。
そしてスキマを眺め始めて数分後、霊夢から衝撃の言葉を聞く。
「結界があるから月の使者は来れないぃ!?」
なんてことだ。偽の月を作るために月の周期を演算してずらしたり、輝夜とともに時間をかけて月を作ったりしたのに。まさかそれが全て無意味な行動だったとは。
(久しぶりに真面目にやったのにこれって・・・)
ショックだったのかその場に座り込んでしまう。
「そろそろ分かったかしら?」
その声に振り向くと紫が再びスキマから顔を出していた。もはや何かを言う気力すらないが。
「その顔は理解したようね。それじゃ、そこから出すわね」
そう言うと、紫のスキマが永琳を飲み込む。
(この感覚は慣れないわね・・・)
スキマを通り抜け目を開けると、元の永遠亭の部屋へと戻ってきていた。
「ふぁぁ・・・私の仕事はもう終わりね。それじゃ帰るわ」
「え、ちょっとま」
永琳の止める声も無視して欠伸をしながらどこかへ行ってしまった。
「はぁ・・・まぁいいわ。輝夜のほうは大丈夫そうだし、私は優曇華のとこへでも行こうかしらね」
その後ボロボロになった鈴仙を見つけ、驚いた永琳は急いで怪我を治したらしい。さすがにやりすぎじゃないか、と紅魔組に文句を言ったが、
「そんなの覚えてないわね」
と、レミリアに一蹴されてしまったとか。その後レミリアに数日間喋れなくなる薬を飲ませたというのは永遠亭と紅魔館の連中しか知らないことだ。
異変解決後、輝夜たちは永遠亭を隠しておくのをやめ、永琳が医者として里の人間の病気やら何やらを治しているんだとか。なんでも治してくれる上に値段も良心的で払えない時は待ってくれるもんだから連日人がやってくるらしい。
妹紅とてゐが竹林を案内していて、鈴仙は里へよく薬を売りに来る担当のようだ。
レミリアのことが多少トラウマなのか、彼女の名を口にするだけでビクッと反応する鈴仙は、本人には悪いが少し可愛いかった。
そんな感じで、幻想郷は今日も平和だ。
いかがだったでしょうか。
これにて永夜編、終了となります。
永遠亭の人達はこのあとも何かと出てくることがあるかもしれません。
またしばらくは閑話を挟むこととなります。
それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




