表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
第3章 竹取飛翔
36/120

第32話 永夜編 瞳と心

──永遠亭 廊下──


「なぁ、咲夜さんたちは大丈夫かな」


先行する霊夢を走って追いかけながら聞く。


「・・・大丈夫だと思うわよ。咲夜のことだし」


ほんの少し考えるような素振りを見せたが、霊夢ははっきりと言い切った。


うまくいけばいいんだけどな・・・




──永遠亭 外周──


金属同士がぶつかり合う音がする。

無数のナイフが飛び交い、刀がそれを弾く。


「う・・・ぐ・・・斬ル・・・」


「妖夢・・・」


咲夜は悲しげな瞳で向かってくる妖夢を見つめた。




「どうしたの? 兎さん。随分と息が上がっているようだけど」


偽の月を背に、レミリアはスペルを展開していく。


「くっ・・・なんて強さなの」


すでに鈴仙はボロボロの状態で、歯ぎしりしながらレミリアを見上げる。


「あの子、咲夜の友達なのよね」


「?」


レミリアが、唐突に語り始める。

鈴仙は、何のことだか分からないといった様子で、訝しむようにこちらを見る。まぁ、分からないのも当然のことだが。


「あの子、私の前ではほとんど感情を出さないから友達が少なかったの」


横目で咲夜を見やる。彼女はいつも通り無表情だ。


「でも、霊夢や銀、妖夢だったかしら。あの子たちが咲夜の友人になってくれた」


レミリアの膨大な魔力が、紅いオーラとなって少しずつ漏れ出す。


「なぜ、咲夜が真っ先に残ると言ったか分かる?」


レミリアの独白に近い言葉に、鈴仙は答えない。答える必要もないのだが。


「それだけ、大切だったからよ」


彼女の手に真紅の槍が握られる。


「これからするのはただの八つ当たり。それ以上でも以下でもないわ」


最後に見た目相応の可愛らしい笑みを浮かべ、彼女は言う。


「せいぜい可愛い悲鳴を聞かせてちょうだい?」


異常な数の蝙蝠が、鈴仙の視界を埋めつくした。




「・・・人符・現世斬」


妖夢が刀を納め、一瞬ためをつくる。


「はっ!」


瞬時に咲夜の元へ踏み込み、刀を抜き放つ。この前銀と戦った時よりも、明らかに速くなっている。

だが、咲夜はそれを能力を使わずに避ける。


「くっ・・・舐め・・・てるの・・・?」


「・・・・・・」


悔しそうにこちらを見る妖夢に、咲夜は何も答えない。会話をする気すらないのかもしれない。


「この・・・断命剣・冥想斬!」


妖夢が刀を振り上げる。

緑色のオーラが剣を包み、切れ味、射程ともに格段に上がっている。


だが、それでも咲夜は能力を使わない。


「なぜ・・・なぜ・・・当たラなイ・・・」


そんな妖夢を見て、とうとう咲夜が話し始める。


「あなたの剣に、なんの意志も籠ってないからよ」


「な・・・に・・・?」


妖夢が聞き返すが、咲夜はすぐに黙り込んでしまう。


「くっ・・・人鬼・未来永劫斬!!」


一段目、妖夢が踏み込み、切り上げる。

咲夜はそれを少し体を捻るだけでかわす。

二段目、そのまま全力で切り下ろす。

それも彼女は華麗な身のこなしでかわす。


「ぐぅぅ・・・このォッ!!」


三段目、一瞬刀を引き、神速の突きを放つ。

だが、それすら彼女に届く前に、いとも容易く受け止められる。


「な、なん・・・で・・・ッ!」


「妖夢、もう分かってるんでしょう?」


咲夜が悲しげに妖夢に聞く。

おそらく、すでに狂化状態がすでに解け始めているのかもしれない。妖夢の目には、ほんの少し涙が滲んでいる。


「うる・・・さい、ウル・・・さ・・・イ、うる・・・さい!!」


妖夢が叫ぶ。


「オ前に・・・何が・・・分かル!! 何でも完璧二こなス・・・お前ニ!! 」


それは、咲夜を見ていた妖夢の本心だったのかもしれない。そんなことは、確かめようもないが。


「空観剣・六根清浄斬!!!」


妖夢の、正真正銘全力の一撃。

目視不可、受ければ致命傷は必至のその技を前に、咲夜は初めて能力を使った。



止まった時間の中で、刀を振り抜いた姿勢で動かない妖夢を見る。


「・・・あなたは、まだ強くなれるわ」


誰かに聞こえるわけではない。

そう分かっていても、彼女は小さく呟いた。



時間停止が解除された瞬間、妖夢の首に手刀を振り下ろす。


「うっ・・・」


それは、妖夢の意識を容易に刈り取る。


「あなたの剣は人を傷つけるためにあるわけじゃない。そんな空っぽの剣じゃ、私に掠ることすらできないわ」


すでに薄れゆく意識の中で、妖夢はそんな言葉を聞いた気がした。



倒れ込んだ妖夢を支えたのは、咲夜ではなかった。


「西行寺様!?」


「ありがとう、この子を助けてくれて」


驚く咲夜に、幽々子は礼を言う。


「そっちももうやめてあげて」


幽々子の言葉に、初めて咲夜がレミリアのほうを見る。


見るも無残な鈴仙の胸倉を、レミリアが掴みあげていた。


「あらそう、ちょっとやりすぎたかしらね」


パッと手を離し、鈴仙が地面に落ちる。


「妖夢は私が白玉楼に連れて帰るわ。本当にありがとう」


咲夜が何か言うよりもはやく、幽々子は妖夢を連れて白玉楼へ帰ってしまった。




「・・・・・・」


「・・・大丈夫? 咲夜」


すでに妖夢の姿は見えなくなったが、ずっとその方向を見ている咲夜に問いかける。


「えぇ、何一つ問題はありません」


(・・・嘘ね)


何一つ表情を変えずに咲夜が答えたが、おそらく本心は・・・


「それよりお嬢様、異変の黒幕はどうしますか?」


レミリアがそこまで考えたところで、いきなり咲夜に声をかけられる。


「え? あぁ、もういいわよ。今から行ったって、霊夢たちには追いつけないだろうし」


たぶん、追いつけたところで、すでに異変は解決されているだろう。霊夢はこういう時に限って、本気を出すし。


「では、いかがいたしましょう」


「そうね・・・ゆっくり紅魔館にでも帰りましょうか」


「かしこまりました」


レミリアの提案に、咲夜は即座に了承の意を示す。


(もう少し、自分に正直になってくれてもいいんだけどね)


そんな言葉は口にされることはなく、レミリアの心の中で消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ