第30話 永夜編 兎といたずら
──迷いの竹林──
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
無言で歩き続ける二人。
先に口を開いたのは咲夜だった。
「お嬢様」
「何かしら」
「非常に言いにくいのですが・・・」
咲夜が周りを見回してからレミリアの目を真っ直ぐに見据えて言う。
「お嬢様、迷いましたね?」
「・・・・・・・・・」
レミリアはなにも答えない。
「あれほど私は迷わないから大丈夫とおっしゃって・・・」
「だぁぁもう分かった分かった私が悪かったわよ!」
咲夜の小言が始まる前にレミリアがさっさと謝る。
「いいですかお嬢様。こういう時はまず・・・」
「あーあー聞ーこーえーなーいー」
二人がそんなやり取りを繰り広げていた時だった。
何者かの視線を感じる。
「そこで見てるヤツ、出てきなさい」
レミリアがそう言うと、竹林の奥からひとりの少女が出てくる。
「私に気づくとはさすが紅魔館の主とその従者だね」
「あなたは何者?」
うさぎの耳を生やした少女に咲夜が問いかける。
「私は因幡の白兎で有名な因幡てゐちゃんだよ!」
キラッと効果音でも出そうなくらいにいい笑顔でうさ耳の少女、てゐが言う。
だが
(咲夜、因幡の白兎ってなに)
(申し訳ありません、おそらく昔話かなにかだとは思うのですが、私にはさっぱり・・・)
「ちょっと、聞こえてるんだけど」
小声で話す二人にてゐがジト目で言う。
「まったく、せっかくお師匠様が言ったから来たのに・・・」
てゐのその言葉を、咲夜は聞き逃さなかった。
「つまりあなたは黒幕の仲間、ということね」
咲夜が指摘すると、てゐはいかにもわざとらしい驚きの演技をする。
「あっちゃーバレちゃったら仕方ないなぁ」
「わざとバラしたんでしょうが」
「聞こえないなー」
レミリアの言葉もどこ吹く風。そもそも兎なのに今のが聞こえないわけはない。
「いかがいたしましょう、お嬢様」
「踏んじばって吐かせる」
咲夜の質問に即答する。
「ちょっと待ちなって、私に戦う気はないんだからさ」
てゐはすぐに戦闘態勢に入った二人を止める。
「じゃあ何のために・・・」
「さっきも言ったでしょ? 案内してあげるって」
にやりと笑っててゐが言う。
「・・・それは本当なのね」
「もちろん。でもただでは教えられないよね?」
咲夜の言葉に、にやにやしながらこちらに向かって言う。
「・・・条件は?」
「さすが話が分かるね!」
「いいから言いなさい」
レミリアが強気にてゐに言う。
「そうだね・・・私を捕まえることができたら案内してあげるよ」
「・・・はぁ?」
まったく真意が読めない。なぜそんな無駄なことをするんだろうか。
「1分以内って条件も追加ねー!」
そう言うと、てゐはすぐに逃げ出す。
さすがは兎、といったところだろうか。恐ろしいスピードで竹林を逃げ回る。ただの人間にとっては、だが。
「咲夜、やりなさい」
「よろしいので?」
「もういいわよ、黒幕に会わなきゃ何も始まらないし」
レミリアの指示に、頭を少し下げ、了承の意を示す。
「ふはははー、あまりの速さに目が追いつか」
てゐが言えたのはそこまで。
次の瞬間には、咲夜の手に掴まれて、レミリアの目の前に立たされていた。
「・・・え?」
「喧嘩を売る相手を間違えたわね」
状況を理解できないてゐに、レミリアが皮肉を言う。
「捕まえたんだからはやく教えなさい。さっさと行きたいんだから」
「むぅ・・・何が起こったか分からないけど捕まったものは仕方ないか・・・」
潔く負けを認めたてゐが、案内を始めようとした時だった。
「あれ? 咲夜さん?」
「あら、妖夢じゃない」
聞いたことのある声に咲夜が振り向いてみると、そこには妖夢が立っていた。
「咲夜さんも異変解決に来てたんですね」
「気づいたのはお嬢様よ」
「そうなんですか」
咲夜がそう言うと、レミリアが無い胸を張る。
「よかったら私もご一緒しきゃぁぁぁぁぁぁ」
妖夢がこっちに来ようとした瞬間、悲鳴とともに姿を消す。
「危ないって言おうと思ったけど遅かったみたいだね」
「あれ仕掛けたのあなたでしょう」
「ごめんなさーい」
レミリアの指摘に悪びれることもなくてゐが言う。
「とりあえず妖夢を助けてから行きましょうか」
咲夜の提案にてゐとレミリアが同意し、妖夢を助けた後に黒幕のもとへ向かうこととなった。
歩いている最中妖夢がずっと不機嫌そうだったが、結局後でもう一度落とし穴に落とされるとは、四人の中の誰も予想してなかっただろう。
いかがだったでしょうか。
久しぶりに妖夢が一瞬出てきます。
次回は結構出せると思います。妖夢は意外といたずらに引っかかりそうなイメージです。
それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




