第28話 永夜編 教師と里
霊夢、銀、魔理沙、アリスたちが再び竹林を目指して飛び立ったころ、レミリアたちは・・・
──人里──
「人里ってこんな風になってたのね」
レミリアが、人里を歩きながら言う。
「えぇ、案外いい場所ですよ?」
ただでさえ霊夢と一緒でなければ人里を歩けないから、見るものが新鮮なんだろう。これくらいの寄り道なら全然いいだろう。
そう思って、咲夜はレミリアの後ろをついて行っている。
「そうね、少し欲しくなっちゃうわ」
レミリアがそんなことを言った時だった。
「そこにいるのは誰だ?」
背後から、女性の声がする。
振り返ると、小さな提灯を手にした女がいた。
「あら」
「しまった・・・」
「な、お前たちは紅魔館の吸血鬼!?」
少しオーバーなくらいに目の前の女性が驚く。
「幻想郷を支配しようとしていたのは本当だったのか・・・!」
((ん?))
咲夜とレミリアが同時に違和感を感じる。
「まさかこんなにはやく攻めてくるとは・・・!」
(あの、お嬢様・・・)
(えぇ、たぶんこれは・・・)
((この人、勘違いしてる・・・!))
なぜかは知らないがこの女性はレミリアがすでに諦めたことを知らないようだ。
「私ひとりでも・・・止める!」
「ん?」
「おや」
唐突に女性が叫ぶと
────人里が、消えた。
「なっ!?」
「・・・・・・」
「お前たちの好きにはさせない!!」
この女性の能力なのだろうか。一瞬にして、目の前にあったはずの人里がなくなる。
この規模で能力を使えるということはかなりの能力者なのだろうか。
(咲夜、咲夜)
(何でしょうお嬢様)
レミリアが咲夜に耳打ちしてくる。
(私あれと戦ってみたいわ)
(ですが、あの方は勘違いしておられるようですが・・・)
(だから咲夜には乗ってほしいのよ。ね、お願い!)
主に手を合わせて『お願い』とまで言われてしまっては、断ることもできない。
(分かりました。でも怪我をさせてはいけませんよ? 霊夢に怒られてしまいます)
(分かってるわよ)
そう言うと、レミリアが前の女性に向き直る。
「私は紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ」
「同じくメイド長、十六夜咲夜」
「私は上白沢慧音、お前たちを・・・止める!」
そう言うと同時に、慧音が弾幕を展開する。
「咲夜、手を出さないでちょうだい」
「かしこまりました」
咲夜が一歩下がる。
「行くぞ! 始符・エフェメラリティ・・・」
「どこを見てるの?」
背後に、レミリアがいた。
「ねぇ、こんなことができるくらいなんだからもっとできるでしょう?」
指で頬を撫でられる。
「クソッ!」
「アハハッ、もっと本気でかかってきなさい!」
全力で振り払ったが、レミリアは余裕の表情で距離をとる。
「くっ・・・野符・武烈クライシス!!」
慧音の周囲に魔法陣が3つ展開されれ、それぞれが違う速度でレミリアに向かっていく。
「ほらほらその程度なの?」
慧音の放つ弾幕をレミリアは余裕でかわしていく。
咲夜のほうも、レミリアの言われた通りに全く動こうとしない。
「こうなったら・・・!」
慧音が再び魔法陣を展開し始める。
「今度はちゃんと狙いなさいよ?」
挑発するかのようにレミリアが言う。
「終符・幻想天皇!」
慧音がスペルを発動すると、左右の魔法陣からはレーザー、真下からは大量の光弾が放たれる。
だが、レミリアはそれを退屈そうにかわしていく。
(この子・・・もしかして・・・)
レミリアは試しに弾幕を放ってみる。
「紅符・スカーレットシュート」
慧音めがけて光弾を数発飛ばす。
その威力は銀に放ったときよりは弱めにしてあったはずだった。
「ぐあっ!」
慧音が避けきれずに吹っ飛ぶ。
(この子、そんなに強くない・・・!)
まさかの事実にレミリアが驚きの表情を隠せない。
慧音が弱いわけではないのだが、レミリアにとってはそれでも弱く感じてしまう。
レミリアも吸血鬼といえど良心はある。なんだか申し訳ない気がしてきているようだ。
(お嬢様も気がついたようだし、そろそろ終わりにしましょうか)
「クソッなんて強さだ・・・!」
起き上がってそう言う慧音の前に、咲夜が転移する。
「なっ」
「上白沢様、お話があります」
「・・・・・・へ?」
あまりに突然のことに、慧音の処理が追いついていない。
「ちょっと咲夜!」
「お嬢様、さすがにお戯れはもうよろしいでしょう?」
「むぅ・・・」
さすがのレミリアもこれ以上やるつもりはないようだ。
「え、待ってくれ、一体どういう」
「私たちは人里を襲いに来たのではありません。異変を解決に来たのです」
あたふたする慧音にお構い無しで咲夜は説明を始める。
「お嬢様がお望みでしたので、上白沢様にお相手をしていただきました」
「つまり・・・私の勘違いということか?」
「その通りでございます」
厳密に言えば慧音は正当防衛をしただけなのでそんなに悪くはないのだが、それを言うとめんどくさいので咲夜は言わなかった。
「・・・・・・」
慧音が無言になる。
「上白沢様?」
「す」
「す?」
するといきなり慧音が頭を下げる。
「すまん! まさか勘違いで他人を攻撃してしまうとは・・・!」
ものすごい勢いで謝ってくる慧音に、レミリアも咲夜もたじたじになりながら対応する。
「うぅ・・・こういうの減らさなきゃな・・・」
((前にもあったのか・・・))
反省している慧音に、若干同情する二人だった。
「申し訳ないが私は異変については知らないんだ」
「大丈夫です。目星はついていますから」
少し落ち込んだ様子で言う慧音に、咲夜がフォローを入れる。
「咲夜、はやく行くわよー」
「はっ、ただいま」
レミリアの声に、咲夜がすぐに反応する。
「それでは上白沢様、またいつか」
「あぁ、またな」
こうして慧音と別れたレミリアと咲夜は、少し遅れて竹林に向かうのだった。
いかがだったでしょうか。
今回は紅魔組が慧音と出会うお話でした。
次回は霊夢たちの話になります。
また次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




