第27話 永夜編 鳥と歌
霊夢たちがリグルと出会っていたころ、魔理沙たちは・・・
──人里 はずれ──
「なぁアリス、新魔法の研究ってどうなったんだ?」
迷いの竹林に向かって飛んでいると、魔理沙が唐突に聞いてくる。
「え、いきなり何?」
「いや、前にそんなこと言ってた気がしたなーと思ってさ」
なにか考えるような仕草をしながら魔理沙が言う。
「今も続けてるんだけど、あと一歩が遠いのよね。どこを改善するかは分かるんだけど方法がね・・・」
少し残念そうに言うアリスに、魔理沙が提案をする。
「私がパチュリーから借りてきた本を読むか?」
「借りてきたって・・・盗んできたの間違いでしょ?」
「人聞きが悪いぜアリス。私は死ぬまで借りてるだけだ」
堂々と言い切る魔理沙に、もはやアリスは呆れるしかなかった。
「で、読むのか? 読まないのか?」
魔理沙が再度聞いてくる。
「・・・・・・・・・読む」
長い沈黙の後、アリスが小さく呟く。
良心と探究心がせめぎ合い、どうやら探究心が勝ったようだ。やはり彼女も魔法使いだということなんだろう。
「決まりだな。今度アリスん家に持ってくぜ」
にやりと笑って魔理沙は言う。
(ごめん、パチュリー・・・)
図書館で本を読む少女を思い浮かべながら、彼女は心の中で謝るのだった。
──数分後──
突如アリスが何かを警戒するような素振りを見せる。
「おいどうしたんだぜアリ・・・」
「しっ、静かに。何か聞こえる・・・」
アリスに言われて魔理沙も耳を澄ます。
(これは・・・歌、か?)
(少し近づいてみましょう。何か関係あるかもしれないし)
アリスの提案で、歌の聞こえるほうへ少しづつ近づいていく。
だんだん歌が大きくなる。
(歌上手いな・・・)
(そうね・・・)
どうやら歌っているのは妖怪のようだ。鳥のような羽も生えている。
「~♪」
(綺麗な歌声・・・)
そう思いながら、アリスが一歩踏み出した時だった。
足下にあった木の枝を踏んでしまう。
「誰!?」
「えっと、その、私たちは」
「お前めっちゃ歌上手いな!」
このバカ!! この状況でなんでそれを言うのよ! 確かに上手かったけど!
「えっ、い、今の聞かれて・・・」
「ま、待って! 聞いちゃったのは申し訳ないけど悪気はなか・・・」
「今すぐ忘れてくださいぃぃぃぃ!!」
少女はそう叫ぶと、突如さっきまでとはうってかわって、激しく歌い始める。
「な、くぅ・・・耳が・・・」
確か一度だけ聞いたことがある。外の世界ではロックというジャンルに入る歌だ。
だが、彼女の歌にはそれ以上の何かが働いているように思えてならない。
「魔理沙、大丈夫・・・」
心配になって魔理沙を見ると、なぜか彼女は平気そうだった。
「ア、アリス! どうしたんだぜ!?」
少女が歌い出した途端に頭を抱えた私を見て魔理沙が声をかけてくる。
「うぐっ・・・頭の中で・・・響いて・・・」
魔理沙の声、少女の声、ありとあらゆる音が頭の中で反響する。
(頭がパンクしそう・・・)
だが、少女の歌声の勢いは増すばかりだ。
その上歌声に混じって弾幕が飛んでくる。
(避けられない・・・!)
なんとか弾幕を防いだが、なぜか周りが見えない。全て真っ黒だ。
「い、一体何が」
「おいアリス! 聞こえてるかアリス!」
何かが私を呼んでいる気がする。
なんで、どうして、声が聞こえるのに何も見えない。
何も、見えない。
「ま、魔理沙、どこに」
「アリス!!」
魔理沙の声がする何かに肩を掴まれる。
「アリス、よく聞け! あいつを止めるのにはお前の力が必要だ。だけどお前は今目が見えていない。そうだろ?」
魔理沙の言葉に、アリスが冷静さを取り戻していく。
かろうじて頷くことで、魔理沙に伝える。
「よし、私が場所を伝える。アリスはそこに糸を放ってくれるだけでいい」
「で、でも、それだけじゃ」
「いいから私の声だけ聞いてろ!!」
魔理沙が声を張り上げる。
魔理沙に怒鳴られたのはいつ以来だろうか。もしかしたら一度もなかったかもしれない。
でも今は、おかげで、正気に戻れた。
「アリス、右方向に約15メートル、人形を飛ばしてくれ」
魔理沙の指示に従い、人形を飛ばす。
「次、人形に糸を持たせて正面に7メートル」
そうやって、ひとつひとつ魔理沙の指示を聞いていく。
時々弾幕が飛んでくるが、魔理沙がすべて防いでくれている。
「よし、あとは任せろ」
「ま、魔理沙、どうす」
アリスの言葉を最後まで聞かずに魔理沙は歌い続ける少女に向かっていく。
「なんで歌が効かな」
「私は案外こういう曲好きなんだよ!」
そう言うと、魔理沙は少女の胸倉をつかみ、ぶん投げる。
「きゃっ、てえぇ!?」
さっきアリスに指示をして張り巡らせていた糸に少女がぐるぐる巻きにされている。
驚きのあまり歌が止まる。
「視界が・・・!」
歌が止まったからか、アリスの身体的異常がたちまち治る。
「落ち着いてくれたか? お嬢ちゃん」
魔理沙が少女に近づいて声をかける。
「あぁ、私なんてことを・・・」
少女はどうやら反省しているようだ。
「まったく、何で急に攻撃してきたんだぜ」
魔理沙が呆れ気味にそう言うと、体をもじもじさせながら少女が答える。
「その、私バンドを組んでて、いつもここで練習してたんです。それで、その・・・」
「その、なんなんだぜ」
「練習してるのを見られた恥ずかしさからつい・・・」
頬を赤らめながら言う少女に、魔理沙だけでなく、1番の被害者であるアリスですら呆れたようなため息をつく。
「こいつは関係なさそうだぜアリス」
「そうね、まぁ仕方ないわ」
今回の異変に関係なさそうだと分かった途端に落胆する二人。
「あ、あの」
「ん?」
そんな2人に少女が恐る恐る声をかける。
「私、お二人に謝罪したくて、何がいいか考えたんですけど・・・」
謝罪、妖怪なのに珍しいことを言うものだ。
「私、ミスティア・ローレライと言います。それで、私人里の近くで屋台をやってるんです」
「「屋台?」」
二人が聞き返す。
「はい、ですのでよかったら今度来てください。もちろんお代はいりませんので」
なるほど、屋台か。無料で食べられるなら嬉しいかもね。
魔理沙のほうを見ると、すでに行きたそうな顔をしている。
「ダメよ魔理沙、まずは異変を解決してからじゃないと」
「うぐ、分かってるぜ・・・」
そう言うと、魔理沙がミスティアを拘束している糸を解く。
「歌上手いんだから、恥ずかしがらなくてもいいんだぜ? もっと堂々としとけ」
「は、はい! ありがとうございます!」
そんじゃなーと言い、魔理沙がすぐに飛んでいってしまう。
「もう待ちなさいよ魔理沙!」
アリスもすぐに追いかける。
魔理沙に追いついたアリスが、小さく呟く。
「その・・・ありがとね、魔理沙」
「おう」
そうして、魔理沙とアリスは再び迷いの竹林目指して飛んで行くのだった。
いかがだったでしょうか。
今回は魔理沙&アリス組でした。二人にはいつも仲良くしていてほしいですね。
次回はレミリアと咲夜の紅魔組のお話です。
また次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




