第24話その2 少女とおつかい
──人里──
霊夢が俺に黙って妖怪退治に行ってしまったせいで、とても暇だ。
意外と依頼が来ない日が多いのに、分かってて霊夢は1人で行ってしまう。
「はぁー暇。暇すぎて死にそ・・・ん?」
暇すぎて歩いていた人里に、意外な人物を見つける。
(あれは・・・フラン? 霊夢と一緒じゃないのに来て平気なのか?)
そう、彼女のような存在が歩いていると、人が怯えてしまうため、通常は霊夢と一緒の時だけしか人里のような場所には来られないのだ。
「近くに咲夜さんがいるわけでもな・・・」
・・・いた。フランの後ろの方の路地から思いっきりあとを付けてた。
「おーい咲夜さ」
そこまで言ったところで一瞬で景色が切り替わる。
(静かにしなさいよバカ!!)
思いっきり口を押さえられ、なんか物凄い怒られた。なんでだ。
少女説明中・・・
(と、言うわけなのよ)
(なるほど、でもなんで1人で歩いても平気なんだ?)
(・・・私が、説得したからよ)
あぁ、そういうことか。彼女のことだ、自分のミスでフランを嫌な目に合わせることなど出来るわけがない。
咲夜が必死に里の人たちを説得する様子が目に浮かぶ。
おそらく、彼女の人望もあったからできたことだ。改めて咲夜の人気を思い知る。
(お二人とも、フラン様を見失っちゃいますよ!)
さっきからフランを監視していた美鈴が声をかけてくる。
(そ、そうだったわね。銀はどうするの?)
俺は迷わずに即答する。
(もちろんついてく。あんなかわいい生物この世にいないぞ)
(あ、妹様が最初の店に入るようですよ!)
美鈴に言われてフランのほうを見ると、ちょうど店に入ったところだった。
「えーっと、必要なのはこれと・・・」
フランはひとつずつ頼まれたものを買っていく。
「おっ、お嬢ちゃんひとりでお使い? 偉いねぇ」
フランの先ほどからの行動を見ていた店主が話しかける。
「そうだよー」
「そんな偉いお嬢ちゃんにはこいつをあげよう」
そう言うと、店主はおもむろに飴を取り出し、フランに渡す。
「いいの?」
フランの声が少し弾む。
「お嬢ちゃんかわいいから半額にしたげるよ」
「本当!? おじちゃんありがとう!」
羽をパタパタと動かし、顔を輝かせてフランは言う。
「また来なよ、お嬢ちゃん」
「うん! またね、おじちゃん!」
少女は大きく手を振ってその店を後にしたのだった。
ちなみに店主はフランのあまりのかわいさに1時間ほど悶絶して動けなかったという。
(・・・・・・・・・)
(((かわいすぎかっっっっ!!)))
3人の心が1つになった瞬間だった。
(なんだよあれかわいすぎんだよ。悪魔(笑)じゃねえか天使だよおおおあああ)
(あぁ妹様・・・失礼ですが本当に可愛らしい・・・)
(フラン様はいつでも可愛らしいですねぇ)
悶絶したりにこにこと少女を眺める3人組が怪しくないわけもなく。
道行く人々が危ないものを見るような目で見ていたことを、3人は知らない。
少女買い物中・・・
(さ、咲夜さんあれ!)
(妹様の動きが止まったわね・・・)
そう、フランはさっきから同じところをウロウロしたりしていたが、ついに止まってしまった。
これは、つまり・・・
((迷っちゃったかー・・・))
フランはあたりを見渡したりしながら首を傾げている。
(あぁもう見てられない!)
(待て咲夜さん!)
飛び出そうとする咲夜を全力で抑える。
(何よ!変装していくから大丈夫でしょう!?)
手に変装する用なのか、カツラや眼鏡を持っている。
(そういう問題じゃねぇ! 今ここで出ていってもフランの為にならない。分かってるんだろ?)
そうだ。彼女はここまで1人で頑張ってきた。なら最後まで見守ってあげるのが俺たちの責任じゃないのか。
(・・・そうね。銀の言う通りよ)
咲夜が弱々しく俺の手を振りほどく。
(子どもを見守る親ってこんなにつらい気持ちだったのね・・・)
(あぁ、確かにこれは辛いぜ・・・)
(この人達ホント見てて飽きないなぁ)
茶番を繰り広げる2人を見ながら、美鈴はそんなことを思うのだった。
1、2分した時だろうか。
フランに声をかける人物が現れる。
(ん? あ、あれは・・・)
「大丈夫? もしかして迷子かな」
白玉楼の庭師である少女は優しくフランに話しかける。
「お姉ちゃんだあれ?」
「私は魂魄妖夢。あなたは?」
「フラン、フランドール・スカーレットだよ」
「フランちゃんって言うのね。じゃあフランちゃん、どこか行きたい場所があるの?」
妖夢がしゃがんでフランと同じ目線で質問する。
「うんとね、ここに行きたいの」
そう言って、フランは小さなバッグから地図を取り出す。
(うわっ、綺麗な地図・・・)
「私がここに連れてってあげようか?」
妖夢が優しく微笑むと、フランの顔も明るくなる。
「うん!」
「それじゃ、はぐれないよう手繋ごっか」
そう言うと、妖夢は立ち上がり、フランに手を差し出す。
「ありがとう! 妖夢お姉ちゃん!」
「ふふっ、どういたしまして」
妖夢の顔が赤くなったように見えたのは、気のせいではないだろう。
(・・・・・・・・・)
(俺もお兄ちゃんって呼ばれてぇぇぇえ!!!)
(私もお姉ちゃんって呼ばれたいいいい!!!)
(あああ妖夢ずるい! この時ばかりは俺が男なのを心底後悔してる!!)
(くっ、立場上無理だと分かっていても呼ばれてみたいっ!)
(フラン様かわいいなぁ)
もはや悶絶しすぎて転がり出す2人の周りには見物客すらできていた。
「? 後ろのほうで人が集まってる。今日なにかあったかな」
「そんなことよりはやく行こ!」
「ふふ、そうだね」
ほんの少しだけ違和感を感じた妖夢だが、目の前の少女を案内することに専念するのだった。




