第24話その1 少女とおつかい
──紅魔館 廊下──
「っ・・・」
立ちくらみがして、少しよろめく。
「少し働き過ぎたかしら・・・」
誰もいない廊下で、少しだけ愚痴をこぼす。
「あ、人里への買い出し忘れてた・・・」
ええっと、お嬢様に紅茶を出す時間まであと少し。それが終わってからでいいかしら。
スケジュールを脳内で調整し、少し伸びをした時だった。
背後から突然声がする。
「咲夜、お買い物忘れてたの?」
「い、妹様、聞いてらしたんですか!?」
お嬢様と同じくらいの背丈の可愛らしい少女。フランドール・スカーレット様がこちらを見ていた。
「どうなの?」
「申し訳ございません。ですが夕飯には間に合わせますので・・・」
「でも咲夜は忙しいんでしょ?」
「いえ、この程度」
「フランがお使いいってあげる!」
一瞬、思考が停止する。
「い、いえ!妹様のお手を煩わせるわけには・・・!」
まずい、妹様は意外と言い出したら聞かないタイプのお方だ。なんとかしないと。
「大丈夫大丈夫、心配ならお姉様に聞いてみれば?」
そうか、お嬢様ならなんとかしてくださるかも・・・!
「そ、そうですね。では一緒に参りましょう」
あぁ、なんてことをしでかしてしまったのだろう・・・
レミリアの部屋へ行く間、咲夜は自分の不甲斐なさを責め続けた。
──紅魔館 執務室──
「と、いうわけなんですお嬢様」
「いいんじゃない?」
「お、お嬢様!?」
「わーい!」
お嬢様なら止めてくれると思ったのに・・・!!
「大丈夫よ咲夜。悪い結果にはならないわ」
「! ・・・お嬢様がそう仰るなら」
おそらくお嬢様は運命をご覧になられたのだろう。それならば、ひとまずは安心だが・・・。
「フラン、日傘をちゃんと持って気をつけて行ってくるのよ」
「はーい!お姉様ありがとう!!」
そう言うと、フラン様はよっぽど嬉しかったのか、すぐに準備に向かってしまった。
「申し訳ございませんお嬢様!私が不甲斐ないばかりに・・・!」
「大丈夫よ、さっきも言ったでしょう? 悪い結果にはならないって」
あぁ、なんてお優しい方なんだろう。こんな下らないミスを許してくれるなんて。
「ただし、責任はとること。フランが滞りなく買い出しできるようバレずに支援しなさい」
「はい!もちろんです!」
「それじゃ、すぐに見送ってきなさい。あの子、準備だけははやいから」
「はっ!」
短く返事をし、咲夜はすぐに転移した。
「まったく、我が妹ながらやんちゃだこと」
ふと頬に触れてみると、自分が笑っていることに気づく。
「ふふっ」
その日は、紅魔の紅い悪魔も上機嫌だったという。
──紅魔館 入口──
「忘れ物はございませんか? 妹様」
「ないよー」
小さなバッグにお金とメモを入れ、手には日傘を持ち、準備万端といったところだ。
「分からないことがあったらすぐ呼んでくださいね? 変な人に捕まったらすぐきゅっとしてドカーンするんですよ?」
「もう咲夜ってば心配性なんだから。1人でお使いくらいできるよー」
「ですが」
「だいじょーぶ!」
そう言って、妹様は日傘を手に走り出す。
「行ってきまーす!」
とびきりの笑顔で少女は言う。
「どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ」
少し不安ではあるが、咲夜は笑顔でフランを見送った。
──紅魔館 門前──
「おや、フラン様お出かけですか?」
門を開けて出てきた少女に問いかける。
「うん! 人里にお使いに行くの!」
「そうなんですね。お気をつけてくださいね」
(ん? 人里にお使い?)
「ふ、フラン様おひとりでですか!? わ、私がついて行かなくて大丈夫ですか!?」
一瞬遅れて気づいた美鈴が慌てて聞く。
「もう大丈夫だってばー、咲夜も許してくれたし」
「そ、そうですか。咲夜さんが許したなら・・・」
彼女がそういうことを許すときは何か理由が必ずある。今は心配しなくてもいいだろう。
「うん! 行ってきまーす」
「お気をつけて」
フラン様の姿が見えなくなったころ、背後に来ていた人物に問う。
「咲夜さん、どういうことなんです?」
「理由は妹様が帰ってきたら説明するわ。今日の門番の仕事はいいから、妹様をバレないように護衛して」
「分かりました」
「私も後で合流するわ。頼んだわよ美鈴」
「はい、じゃあ先に行ってますね」
そう言うと、美鈴はすぐさま妹様を追いかけた。
「さて、私も行こうかしら・・・」
そう呟くと、彼女はどこかへ転移した。




