第23話 白玉楼編 友人と白玉楼
──白玉楼 和室──
誰もが寝静まる丑三つ時。
目が、覚めてしまった。
「やっぱりか・・・」
前にもこういうことはあった。
博麗神社に来た時も、1週間くらいはよく寝れなかった。
どうやら自分は慣れない場所では寝れない質らしい。
「少し、外の空気を吸ってくるか・・・」
こういう時は少し気分を入れ替えたほうがいい。
そう思って、俺は立ち上がった。
──白玉楼 中庭──
ここはさっきみんなで一緒に見た場所だっけか・・・
本当に、本当に綺麗だと思った。
幻想郷には、まだあんな景色がたくさんあるのだろうか。そう考えると、これからの毎日がとても楽しみに思えるかもしれない。
「・・・なんてな、そろそろ戻るか」
ひとり呟き、部屋に戻ろうとした時だった。
どこからともなく、声が聞こえた。
息を潜め、耳を澄ますとどうやら廊下を曲がった先から聞こえてくるようだ。
足音を消し、少しづつ近づいていく。
最初は泥棒かなんかかと思ったが、何やら聞いたことのある声だ。
(この声は幽々子と・・・紫?)
なぜここに紫が?
いろいろな考えが頭をめぐるが、正直見当もつかない。
とりあえず、2人の会話を聞いてみることにした。
「紫の連れてきたあの子、中々見どころがあるじゃない」
「銀のこと? そうでもないと思うけど」
「妖夢の剣を人間が捌き切るなんて聞いたことないもの」
「あいつが半妖って知っててそれ言ってるでしょ」
「それでもよ」
「スペカどころか弾幕すら出せないポンコツだけどね」
(ポンコツで悪かったな)
危うく飛び出て反論しそうになるのをこらえて、続きを聞く。
「それに、幽々子のとこの・・・妖夢だっけ、あの子も・・・」
「そう。妖夢の剣にはまだ迷いがあるのよね・・・」
(迷い・・・か)
妖夢との試合を思い出す。あの時彼女に感じたのはそれだったのか。
そんなことを考えた時だった。
「あなたもそう思うでしょう? 盗み聞きしてる半妖さん」
・・・バレてた。いつからだ。
「・・・いつから気づいてた?」
「そうね、眠れなくて目が覚めたところからかしら。まるで子供ね」
俺の質問には紫が答えた。
なんだよそんな前から気づいてたのかよ。てか分かっててポンコツ言いやがったなこの女。
「なんで紫がここに?」
この際もう聞いていいだろう。1番気になってなことだし。
「それは・・・」
「私と紫はね、私が人間だった時からの付き合いなのよ」
人間の時の記憶はないんだけどね、と幽々子は舌を出す。
「ま、そういうことね。友人の家に遊びに行くくらい普通でしょう?」
「まぁ、そうだな」
なるほど、幽々子のふわふわした雰囲気、誰かに似ていると思ったら紫だったのか。喋り方や性格は違えど、この2人は根底ではとても似通っている。
「そういう訳だから、邪魔者は帰った帰った」
しっしっと、紫が手で促す。
「ふふ、正直じゃないんだから。でも寝たほうがいいのは確かね」
「正直・・・?」
少し引っかかったが、幽々子に笑顔で流される。この2人そろって掴みどころないのも似てるな。似なくてよかったのに。
「はいはいもう寝ますよっと」
そう言って歩き出すと、
「妖夢のこと、これからもよろしくね」
幽々子がそんなことを言ってくる。
「・・・・・・」
軽く頷き、俺はその場を後にした。
数時間後──
「もう・・・魔理沙ったら寝相悪すぎ・・・」
「霊夢はよくあれで眠れたね・・・」
「慣れよ慣れ」
「いやーすまんすまん!」
霊夢たちが起きてくる。どうやらよく眠れたのは霊夢と魔理沙だけだったらしい。
「あらずいぶんと早起きね」
「そうでもねぇよ、いつもこんくらいだ」
霊夢が意外そうに言うが、神社でもいつも俺のほうが先に起きてる。部屋から出ないだけで。
「さて、あんまり長居するのもあれだから朝ごはんだけ食べたら帰るわよ」
「さんせー」
霊夢の提案に魔理沙が同意を示す。
「それじゃあご飯作ってきますね」
「私も手伝うわ」
妖夢に続いて咲夜も朝ごはんを作りに行った。
そうして、もうしばらくの間、白玉楼を楽しんだのだった。
「それじゃ、私たちはもう帰るわね」
「突然押しかけてすみませんでした・・・」
「次は絶対私が勝つのぜ!!」
「はいはい帰るわよ」
魔理沙が霊夢に引きずられながらもずっと叫んでいる。
「咲夜さん、また今度料理とか教えてくださいね」
「ん、紅魔館に来ればいつでも相手するわよ」
妖夢と咲夜はかなり仲良くなったようで、握手さえしている。
「ふふっ、よかったわね妖夢」
「な、なんのことですか」
幽々子が茶化すと、妖夢の顔がみるみる赤くなっていった。
「ほら銀、行くわよ」
咲夜が、こちらを振り返って声をかけてくる。
「あぁ、すぐ行く」
幽々子のほうを見る。
彼女は笑顔で小さく手を振っていた。
軽く会釈をし、すぐに霊夢たちのもとへ行く。
「ほらはやくしろよー。まだまだやることはあるんだからなー」
「まだ何をするつもりなのよ・・・」
「私は紅魔館に帰るからね。絶対よ」
ホントにやかましい連中だけど・・・
当分は、退屈なんて感情とはおさらばできそうだ。
ちなみに咲夜が紅魔館に帰れたのは真夜中だったという。
いかがだったでしょうか。
個人的に紫と幽々子はいつまでも仲良くいてほしいですね。紫は理解者が少ないので・・・
それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




