第20話 白玉楼編 庭師と幽霊
──白玉楼周辺──
「そういえば」
白玉楼へ向かっている途中で、急に霊夢が口を開いた。
「どうしたんだぜ」
「異変のときは騒霊三姉妹に会ったなーって」
「騒霊三姉妹?」
俺の疑問を、咲夜が先に聞いてくれた。
「プリズムリバー三姉妹、のほうが分かりやすいかしら」
プリズムリバー三姉妹、ルナサ・プリズムリバー、メルラン・プリズムリバー、リリカ・プリズムリバーの3人の呼び名らしい。
ルナサが弦楽器、メルランが管楽器、リリカが鍵盤楽器を担当していて、最近ではライブなるものも開催しているんだとか。
「へぇ、1回聞いてみたいわね」
「やっぱり咲夜もそういうの聞いてリフレッシュとかしたいのか?」
珍しく咲夜が興味を示したのに対し、魔理沙が問いかける。
「そりゃ私だってひと月に1度くらいは休みたいわよ」
「ええっ、紅魔館そんな厳しいのぜ!?」
魔理沙が驚くのも当たり前だ。俺だって今のは初耳だしかなりキツいと思う。
たが咲夜はそれを慌てて訂正する。
「ち、違うのよ!?お嬢様はとてもお優しくて、週に1度は休みをくださるのよ!?」
「な、なんだぁびっくりさせやがって……」
ものすごい勢いで説明する咲夜を見て魔理沙は安堵している。
「ただ……」
「ん?」
「ただ、お休みを貰ってもつい体が動いちゃうのよね……この間もそれでお叱りを受けたし……」
あぁ……私ってなんてダメなの……と言っている咲夜の横では、霊夢と魔理沙がガチで引いていた。
いや、まぁ咲夜の奉仕精神はすごいしそんな従者を持てたレミリアは幸せ者だけど、さすがにこれは重症だろ……
その後の道中は、霊夢と魔理沙がいかにして仕事をサボ……いや、手を抜くかの指南をしていたが、たぶん効果はないだろう。
──白玉楼前 大階段──
「すげぇでっかい階段だなぁ」
思わずそんな言葉がこぼれるくらいには大きい階段だった。
あまりの長さに終わりが見えないくらいだ。
「面倒だからさっさと飛んでいくわよ」
そう言う霊夢を咲夜が引き止める。
「さすがにそれは失礼じゃない?」
「じゃあなに?これを歩いて昇るっていうの?」
「それは……」
「まぁまぁ霊夢、とりあえず問題はないからはやく昇ろうぜ?」
口ごもる咲夜に魔理沙が助け舟を出す。
「はいはい、ほら行くわよ」
霊夢ももともと責める気はなかったようだ。それだけ言うと、階段の上を目指して飛びはじめた。
少しして
どれくらい昇っただろうか。辺りが少し暗くなり始めたころ、その少女は現れた。
「誰かと思ったら霊夢と魔理沙じゃない」
「おー妖夢!久しぶりだな!」
「わざわざお出迎え?気が利くわね」
妖夢、と呼ばれたその少女は見た目こそ人間ぽいが、たぶん違う。
それは彼女の横をふわふわ浮いている白い人魂のようなものが証明していた。
白髪に、黒いカチューシャというものをつけていて、背中には刀を2本携えている。
「もう、来るなら来るで言っておいてくれればいいのに」
まだお夕飯つくってなかったからいいけど、と彼女は呟く。
「いやーすまんすまん」
「今日突然だったのに連絡できるわけないでしょ」
「ご、ごめん?」
全く反省していない魔理沙と若干キレ気味の霊夢になぜか謝る妖夢というよく分かんない図ができてしまった。
「ところでこの人たちは……?」
今更ながら妖夢がこちらに気づき、説明を求める。
「俺は半妖の銀、博麗神社の居候やってる」
「紅魔館メイド長十六夜咲夜、以後お見知り置きを」
「紅魔館ていうと……あの?」
「そうよ、霧の湖の畔のとこ」
妖夢の疑問には霊夢が答えた。
何やら咲夜の態度に感心しているようだ。
……俺空気?
「それで、貴方は?」
しびれを切らしたのか、咲夜の方から聞きにいった。
「あ、申し遅れました。私、魂魄妖夢と言います。ここ白玉楼の庭師兼主である幽々子様の剣術指南役です」
どうかよろしくお願いします、と彼女は微笑んだ。
「それで、今日はなんでウチに来たの?」
「ん?あぁ肝試し」
「……肝試し」
「そう」
魔理沙の言葉に妖夢はもう考えることをやめたようだ。
──白玉楼──
「すっげぇ綺麗な庭だな……」
「ふふ、いつも頑張ってますからね」
ふとこぼした感嘆の言葉に、妖夢は照れくさそうに言った。
そこに、1人の女性がやってくる。
「あら妖夢、戻ってきたのね」
「あ、幽々子様」
幽々子、ここの主のことか。
「霊夢と魔理沙は知ってると思うけど、こちらは幽々子様。この白玉楼の主ですよ」
「お友達を連れて来てたのね。私は西行寺幽々子、よろしくね」
……なんだか、紫に雰囲気が似ている気がする。うまくは言えないが、ふわふわしている、という感じだ。
「半妖、銀です。どうぞよろしく」
「紅魔館メイド長、十六夜咲夜と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
「あら真面目な子だこと」
「そんなことより幽霊出してくれよ幽々子!」
魔理沙が真面目な雰囲気を思いっきりぶち破っていく。
「お前なぁ……」
「いいのよ、でももう少し待ってね。まだ少し早いから」
中々に器が大きいようだ。
「あと少しってどれくらい?」
「うーん、1,2時間くらいかしらね」
霊夢からはもう休みたいという気が体中から溢れ出ている。
「そ、じゃあ私その辺の部屋借りて寝てるわ。ご飯のとき起こして……」
「じゃあ妖夢、案内してあげなさい」
「はーい。霊夢、こっちの部屋よ」
そう言うと、霊夢は妖夢のあとをついてふらふらと行ってしまった。
「なぁ幽々子、私久々に妖夢の剣術が見たいのぜ」
「妖夢の?私はいいけど相手はあなたがするの?」
「うんにゃ、私は横で見てるだけ、相手はこいつ」
そう言って魔理沙が指をさしたのは俺だった。ちょっと待ちやがれ。
「なんで俺が相手しなきゃいけないんだよ」
「えぇーいいだろー別に、お前妖夢と戦いたそうに見てたじゃねぇか」
バレてた。そんなにがっつり見てたかな……。
「それじゃあ決まりね、場所はあっちにしましょうか」
とんとん拍子に話が決まって、幽々子がすぐに案内してくれる。
「ねぇ、ホントにいいの?」
「ん、まぁ戦いたいのは本心だしな」
咲夜が小声で聞いてきたが、まぁ本心だったので別に構わない。
数分後……
「ホントに相手してくれるとはな」
「幽々子様の頼みですから」
提案を聞いた時は驚いたようだが、意外とすんなり勝負を受けてくれた。
「妖夢〜頑張ってね~」
「銀なんかボコボコにしてやれー」
間延びした声で妖夢を応援する幽々子とただの野次を飛ばす魔理沙。
後で覚えとけよこの野郎。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
幽々子が立ち上がり、指を鳴らすと庭の灯篭に明かりがともる。
「おぉ……中々いい雰囲気だな」
「ふふ、でしょう?これなら明るいから大丈夫よね」
そう言うと、幽々子は縁側に座り直した。
「それじゃ、ルールはオーケー?」
審判を買ってでた咲夜が俺たちに確認をとる。
「問題ない」
「大丈夫です」
スペカなし(俺はもともと使えないが)。殺しなし。それ以外は基本フリーという適当なルールだ。
「まだ半人前ですが・・・よろしくお願いします」
刀を1本構え、妖夢は言う。
「ま、俺はそうそう死なないし、遠慮なくどうぞ?」
こちらも拳を構え、それに答える。
「両者準備はいいようね。それじゃ」
意識を集中する。相手は刀だ、こちらとは間合いが違う。それを測り間違えれば俺の負けは確定だ。
「はじめっ!!」
月明かりに照らされて、刀が銀色に煌めいていた。
いかがだったでしょうか。今回は妖夢と幽々子が初登場です。やっぱり刀使うのってかっこいいと思うんですよね。真面目な流派でも適当でも。
というわけで次回、妖夢と銀の試合もぜひ読んでいただけると嬉しいです。




