第2話 常識と巫女
──博麗神社 境内──
「まずはあんたの名前を教えてもらおうかしら」
目の前の少女、博麗霊夢は言った。
「そうだなぁ、俺の名前は銀。見た目じゃ分かんないかもしれんが半妖だ。よろしくな」
「私は博麗神社の巫女、博麗霊夢よ。霊夢でいいわ」
「おう」
さらっと俺が人間ではないと言ったが、霊夢は別段驚きはしなかった。それだけ幻想郷は人種の多様性に溢れているのだろうか。あるいは霊夢が他人に興味がないだけかもしれないが。
「……で、紫はなんの説明もしていないと」
机で向かい合い、心底呆れたような声で霊夢は言った。
こればっかりは俺のせいじゃないし、許してほしい。
「はぁ……とりあえず人里だけ案内するわね。ほかは後で」
「おう、その方が俺も探索しがいがあって楽しいしな」
まぁ俺は一人で歩くほうが好きなタイプだし、そのほうが余計な気を遣わせずにすむしな。それにこいつ心底面倒そうな顔してるし。
「そうと決まればさっさと行くわよ」
突然立ち上がるや否や霊夢はそう言う。近くにあったお祓い棒を手に取り、それを肩に担ぐように持つ。
「あれ、さっき昼寝するとか言ってなかったか」
「面倒ごとは先に片付けたいのよ」
面倒で悪かったな。文句あるなら紫に言ってくれ。
「ほら、行くわよ」
「へいへい」
適当に返事をし、のろのろと立ち上がろうとした時だった。
「れ・い・む・さ~~~~ん」
静かな神社に明るい声が響き渡った。
「今回ばかりはいいタイミングね、早苗」
「ほえ?」
早苗と呼ばれたその少女は、突然のことに、間抜けな声をあげることしかできなかった。
少女説明中…
「なるほど!そういうことならお任せください!私も霊夢さんと一緒に人里を案内しますよ~!」
この元気な少女は東風谷早苗。守矢神社で風祝というざっくり言えば巫女のようなものをやっているらしい。なんでも、彼女も幻想郷ではないところから来たんだとか。一体どんな場所なんだろうか、ほんの少しだけ気になる。
「ふっふっふー、それに私、こう見えて神様なんですよー!」
「はぁ?神ィ?」
余りにも突拍子すぎて、真偽を確かめようと霊夢のほうを見る。
「本当よ。ただ、外の人間が信仰の対象を間違えた結果の、生きながらにして神となった現人神、だけどね」
マジか、嘘だろ。こんなちょっと抜けてるようなうるさ……明るい少女が!?
広いなー、世界。
「それにしても、霊夢さんが私を頼ってくれるなんて、早苗感激です!」
「はいはい」
若干興奮気味に目を輝かせて言う早苗を霊夢は適当にあしらう。
「それで、人里まではどれくらいなんだ?」
「そんな遠くもないわよ。ただ、面倒だから飛んでいくわ」
「飛ぶ?」
霊夢から予想外の答えが返ってくる。
鳥のように飛べってーのか、いくら半妖でも無理だぞ。いやまぁ探せば飛べるやつもいるかもしれないが。
「私の近くにいて。それで飛べるから」
ほう、便利な能力だ。巫女としての力かなんかだろうか。
紫とかもそうだけどそんな便利な能力俺も欲しい。
「はい!私もしっかりつかまってますね!」
「あんたは自分で飛びなさい」
「えー霊夢さんのけちー」
霊夢はさりげなくくっつこうとする早苗を引っペがす。
「ほら、ぼーっとしてないで、さっさと行くわよ」
そう言って、霊夢は俺の手をとり、人里へと飛びたった。
ちなみに、早苗は終始何かを言っていたようだが、こちらには聞こえてこなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
前の話で、次のお話し(つまり第2話)までは戦闘シーン書かないとかほざいてましたが、違いますね。書けません(絶望)
というわけでよければ次回までゆったりとお待ちいただけると幸いです。