第18話 白玉楼編 人形遣いと実験
──博麗神社──
「私たち、干上がるんじゃないかしら」
「お前何回それ言うんだよ……」
もはや夏が終わるまでずっと言っているんじゃないかと思うくらい毎日同じことを繰り返す。
「霊夢のその様子じゃ、今は夏みたいね」
そこへ、1人の少女がやってくる。
「あら、アリスじゃない」
「久しぶりね、霊夢」
アリスと呼ばれた少女は、軽く会釈を返す。
「霊夢、この子誰だ?」
「私からすればあなたのほうが謎なんだけどね」
「こっちはアリス、魔法使い。こっちは銀、うちの居候よ」
霊夢の説明はあったが、個々で自己紹介をする。
「人形遣い、アリス・マーガトロイドよ。まぁ・・・よろしく」
金髪で、どこか人形のような感じの少女だ。手には難しそうな本を持っている。
「半人半鬼の半妖、銀だ。霊夢の言う通りここの居候やってる」
「で、何しに来たの?アリス」
霊夢が疑問を口にする。
「あぁそうそう、新しく魔法を作ったから試したいのよ。相手になってくれない?」
「この暑いのにやるわけないでしょうが」
霊夢は即答するが、彼女の言うことももっともだ。このクソ暑い中運動とかアホだろ。
「あ、でもそういうことなら」
「ん?」
「お?」
「こいつにやらせればいいじゃない」
何を言っているんだこの巫女は。
「……え?」
霊夢の突然の発言に、対応しきれていないアリスは聞き返す。
「だから、銀なら半妖だしいくらでも魔法ぶつけていいんじゃない?」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ」
「何してもいい居候」
舐めやがってこのアマ。
「いやでも俺今あんま動きたくな」
「宿無しになっていいなら断れば?」
「全身全霊でお相手仕る」
「そ、そう」
態度が一変し、食い気味に言う俺にアリスは少し引いていた。
地味に傷つくからやめてその反応。こっちも居場所がかかってるんだ、分かってくれ。
「まぁいいわ、それじゃあ相手になってもらうわね」
そう言うと、アリスは人形を取り出し始める。
「なんか注意事項とかある?」
軽く準備運動をしながらアリスに聞く。
「そうね、複数の人形を動作させてるときに発動させたいから、軽い模擬戦みたいにしてほしいわ」
「オーケー。他は?」
「他は……うん、人形たちをあまり傷つけないであげて」
「了解」
彼女の人形への接しかたを見ると、本当に大切にしていることが見てとれる。
なら、俺はそれを尊重する。
「あと境内に穴あけないでねー」
扇風機の前を陣取って言う霊夢に手を上げて了承の意を伝える。
「そっちの準備はいい?」
「おう、いつでも来い」
アリスは人形を10体ほど宙に浮かばせている。準備はできているようだ。
「それじゃ、行くわよ」
8体の人形が、それぞれの手に槍や剣を持って突進してくる。
(意外と速い……)
本気は出していないのだろうが、それでも中々の速さだ。
だが、突進、退避を繰り返すだけなので、避けるのは容易。咲夜のナイフと同じ要領で躱していく。
「そろそろ攻撃しに来ていいわよ」
「あいよー」
言われた通りアリスのもとへ行こうとすると、人形たちの動きが複雑化する。
先程までは突進して退避を繰り返すだけだったのが、人形たちで連携をとりはじめた。
(なるほど、こんな感じの状況で発動させたかったわけか)
なんとなくアリスの意図に気づいたところで、少し本気を出しアリスに攻撃を仕掛ける。
「今ね、レベルティターニア」
彼女がそう唱えると、横にいた人形2体が突如巨大化し、行く手を塞いだ。
「うおっ、なんじゃこりゃ!?」
咄嗟に人形から距離を置きつつ周囲を見ると、さっきまで動いていた人形のうち何体かが地面に落ちて動作を停止していた。
(どういうことだ……?)
念のため身構えたが、そこで人形たちの攻撃は急に止んだ。
「?アリス、これで終わりか?」
「今の魔力量は完璧だったはず、でもあの子たちが動かなくなったのは一体……」
どうやら聞こえてないようだ。
「おいアリス?」
「えっ、あ、うん、とりあえずはもういいわ。ありがとう」
「ふぁぁ……どうやら終わったみたいね」
そう言って霊夢が眠そうに立ち上がったときだった。
「おーい霊夢ー!」
空から声が降ってくる。
「今日はずいぶん人が来るわね……何のようかしら、魔理沙」
「何のよう、とはご挨拶だな。霊夢」
そう言いながら箒から降りてくるのは、白と黒のいかにも魔法使いといった格好の霧雨魔理沙だ。
「あれ、アリスも来てたのか」
「たぶん聞こえてないぞ」
アリスは今も何かブツブツ呟いている。軽く恐い。
「まぁいいか、ところでお前たち。暑くないか」
「暑いに決まってんでしょうが」
「暑いに決まってんだろうが」
「お、おう。なんかスマン」
若干キレ気味にハモったせいか珍しく魔理沙がたじろぐ。
「というかあんたは暑くないの?」
「ふっふーん霊夢とは気の入り方が違うからな、暑さなんてへっちゃらだぜ」
霊夢の質問に魔理沙はよく分からない答えを返す。
「って、そんなことはどうでもいいんだ」
どうでもいいのか。
「お化けを見ると涼しくなるっていうだろ?」
「別に涼しくなんかならな」
「涼しくなるんだよ!!」
否定しようとした霊夢の言葉を魔理沙が無理やり遮る。
「ということで!お前たち、肝試ししようぜ!!」
「「肝試しぃ?」」
突然の魔理沙の提案に、霊夢と俺はそんな反応をすることしかできなかった。
いかがだったでしょうか。今回はアリスが登場します。彼女は人形のことを家族みたいに思っているんじゃないかなーと思い、そんな性格にしてみました。
それでは魔理沙の提案から始まる次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




