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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
閑話 されど彼女は幻想を見る
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第17話 スキマ妖怪と幻想郷

──博麗神社──


季節は夏。相も変わらず日に日に暑さを増す毎日。

そんな暑さにも負けない者がひとり。


「れ・い・む・さ~~ん!!」


飛び込む緑。しゃがむ紅白。


華麗に躱された早苗は、見事に大地と熱い抱擁を交わしている。


「い、いひゃい……」


「こんな暑いのにひっつこうとしない」


早苗に向き直った霊夢が言う。


「そ、そんなクールなとこも素敵です……」


鼻をさすりながら早苗が起き上がる。めげないなぁこの子。


「いつもいつも飽きねぇなホント」


苦笑しながら言う俺に早苗が向き直る。


「そりゃ霊夢さんですから!」


「私のせいみたいに言わない」


「あぅ」


胸を張って言う早苗に霊夢がチョップをかます。


そのよく分からない理由は一体なんなんだろう……


毎度毎度思っていることだが、口には出さない。


「で、今日はなんの用?私これから妖怪退治行くんだけど」


「そうだったんですか。特に用がなければウチにお招きしようと思ってたんです」


暇だったんだな。3日にいっぺんは来るもんなこの子。


「そ、じゃあ私はパス。理由は聞いてたでしょ?」


「仕方ないですね。じゃあ妖怪退治のほうについて行きます」


「なんでそうなるのよ!」

「なんでそうなるんだよ!」


霊夢と心がシンクロした瞬間だった。


「いいじゃないですか霊夢さ〜ん」


「だああ暑い!引っ付くな!」


霊夢のペースをここまで乱せるのは早苗くらいじゃないだろうか。ある意味尊敬する。


「もう分かったわよ、連れてくから!」


その言葉を聞いた途端、早苗は霊夢から離れ拳を突き上げ喜ぶ。


「やたー!!」


「ホントにもう……」


もう最初から諦めたほうが早いんじゃないかというレベルで毎回同じ流れだ。飽きないなぁこの2人。


「ま、がんば!!」


とりあえずとびきりの笑顔でサムズアップしておく。

お祓い棒で殴られた。なぜ。


「それじゃ、行ってくるわね」


「おう、行ってらー」


ひらひらと手を振り、2人は仲良く飛んでいった。


「えへへー、デートみたいですね霊夢さん」


「はいはい」


そうやって飛んでいく霊夢の背中が心無しか楽しそうだったのは、きっと気のせいではないのだろう。


「さて、暇になっちまったな……」


ひとり扇風機の前で呟く。


「なぁ、いるんだろ?紫」


虚空に向かって話かける。返事はない。


「おい紫、返事しやがれ」


再度話しかけるが返事はない。


「返事しやがれこンのクソバb」


そこまで言ったところで突如空間が裂け、そこから伸びてきた手が顔を鷲掴みにする。


「師に対しての礼儀がなっていないんじゃないかしら?」

「あだだだだだ!すまん!悪かったって!」


「聞こえないわねぇ」


裂け目から上半身を出した紫はさらに力をこめる。


「すいませんでした!!すいませんって!!」


そこまで言うとようやく手を離してくれた。


「全く、そんな子に育てた覚えはないわよ」


「1ヶ月程度だろうが」


八雲紫、紫の道士服のようなものを着ていて、瞳、髪はどちらも綺麗な金色だ。いつも日傘か扇子を持っている気がする。

能力不明に年齢不詳、何を考えているのかも分からない。

正直今まで見てきた中で1番正体不明だ。


「で、私になにか用?」


「いやさ、あんた俺がレミリアと戦ってたとき、どっかで見てなかったか?」


あのとき、レミリアだけでなくフランと戦っているときも、「何か」を感じていた。それが視線なのか気配なのかは分からなかったが。


「あら、気づいてたの」


「気づいちゃいねぇよ。なんとなく、だ」


今、紫が露骨に気配を漏らしたおかげで、その「何か」に当てはまっただけだ。


「えぇ、確かに私はあの場にいたわ。なに?助けてほしかった?」


「助けて、とまではいかなくても手を貸すぐらいしてもよかったんじゃねぇの?」


「それじゃあ銀のためにならないじゃない」


「死にそうになってたんですが!?」


ホント手厳しい。鬼かよ。鬼は俺だったわ。


「はぁ……もういいよ。もう1つだけ聞きたいんだけど」


「何かしら」


「今更だけどあんた、この幻想郷をどう思ってんだ?」


外の世界にいた俺や早苗、レミリアたち紅魔館の連中を招き入れた理由を知りたい。

なぜ、俺たちなのか。


「そうね……私、全く変わらない幻想郷は幻想郷じゃないと思うのよ」


いつもははぐらかすくせに、なぜか今回はまともに話し始める。


「は?」


「時代に合わせて変化してもなお美しい幻想郷が見たいのよ」


だから、幻想郷にとってどちらかといえば良い影響を与える者、来たいと強く望む者、適正を持ちここにふさわしい者を招き入れ、少しづつ変化させているのだという。


「私は、この幻想郷を愛してるのよ」


いつも人を見透かしたような態度で掴みどころのない彼女だが、その言葉には、不思議と嘘は感じられなかった。

もしかしたら本当に、この幻想郷を愛しているのは、妖怪である彼女なのかもしれないと思えるくらいには。


「さて、私はそろそろ消えようかしらね」


「え、俺これから暇になるんだけど」


「なら修行でもしてなさい。吸血鬼に負けてるようじゃ、私に1発かますなんて永久に無理よ」


げ、バレてる。


「それじゃあね、期待しないで待ってるわ」


そう言うと、彼女は裂け目から帰っていった。

あの裂け目、霊夢はスキマと呼んでいるらしいが、めちゃくちゃ便利だよな……俺も欲しい。


「あぁクソッ、こんなこと考えてても仕方ねぇ」


癪だが、紫の言うことは最もだ。

吸血鬼に負けるようじゃまだまだ。紫に触れることすら出来ないかもしれない。


「いつか絶対見返してやる」


そう心に決め、銀は修行を始めるのだった。




「美鈴に武術教えてもらおうかな……」


そんな適当なことを考えながら。

いかがだったでしょうか。今回ようやく紫の登場です。もっと彼女の能力について書きたいことはあったのですが、それはまた後でまとめることにします。

また次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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