第15話 男と友情
──博麗神社──
「…………」
「…………」
無言で縁側に座る霊夢と俺。
「……なぁ、霊夢」
「……言わなくても分かるわ」
そう、実は幻想郷には四季がある。春、夏、秋、冬それぞれが一定の周期で訪れるのだ。
そして今の季節は、夏。
つまりは……
「……暑い!!」
暑い、最近本当に暑くなり始め、干上がるのではないかと思うほどだ。
「仕方ない、アレを出すか……」
かなり怠そうにしながら霊夢が立ち上がる。
「……アレ?」
「確かこの辺に……」
霊夢が隣の部屋でなにかをいじっている。このクソ暑い中なにをしようと言うのだろうか。
「よっこいしょ、と」
「……何だそれ?」
何か羽根のついたカラクリのようなものを霊夢が持ってくる。
「扇風機よ」
「せんぷうき?」
「そ、ボタン一つで風を送り出してくれる優れもの」
初めて聞いた。こんな変な形したのがそんな便利なことができるのか。
「それ、誰が作ったんだ?」
「河童よ」
「河童ぁ?」
「技術力だけなら幻想郷一。カラクリなら何でもおまかせ、だそうよ」
俺の知ってる河童じゃねぇ……
相撲とかしないのか……
「ん、あれ」
さっきから扇風機なるものをカチカチいじっている霊夢が呟く。
「どした?」
「……動かない。壊れたかも」
「え」
嘘だろ。まだ動いてるとこすら見たことないのに。
「ダメね、動かない。霖之助さんに聞きに行くしかないわね」
さっきから知らない単語ばっか出てくるな。
もう一ヶ月近くいるはずなんだけど。
「それ、誰だ?初めて聞くんだけど」
「言ってなかったかしら、香霖堂の店主の……」
森近霖之助、人妖で、人間妖怪問わず物を売っているある種の何でも屋。ただ、本人の蒐集癖のせいか非売品が多くどちらかといえば趣味で店をやっているらしい。
魔理沙とも長い付き合いなんだとか。ちなみに霊夢の巫女服も彼が作っているらしい。気が合いそうだ。
「へぇ、そんなとこがあったんだな」
「少し奥まった所にあるから分かりづらかったのかもね」
珍しく霊夢が賛同してくれる。
「暑いまんまってのも嫌だし、さっさと行くわよ」
「行ってらっさ」
「あんたも来るの。飛ぶからちゃんとついてきなさい」
あわよくば神社で休んでようと思ったが、そうは問屋が卸さないらしい。まぁ霖之助なる人物に多少なりとも興味があったのでいいっちゃいいんだが。
「じゃ、扇風機持ちなさい」
「え、俺が持つの」
じゃんけんの結果、結局俺が持つことになった。本気だしやがってチクショウ。
──人里 香霖堂──
「霖之助さーん、入るわよー」
返事を待たずに霊夢は店内に入っていく。
「どうしたんだい霊夢。お祓い棒はこの前直したばかりだと思うんだが」
一見散らかったように見える店の奥に、声の主はいた。
銀髪に眼鏡、黒と青の左右非対称の和服と洋服の特徴をもつ服を着ている。
「今日は見てもらいたいものがあって……」
「ん?そっちの彼のことかい?」
見定めるような目でこちらを見てくる。
「あぁ、そっちのは銀。霖之助さんなら聞いたことはあるでしょう?うちの居候よ」
「あぁ、君が例の」
「例の?」
俺の知らないところで噂にでもなっているのだろうか。俺なんかしたっけ。
「吸血鬼を手なずけたってもっぱらの噂だよ。僕はこの香霖堂の店主、森近霖之助だ。よろしく」
手なずけてねぇんだよな・・・どっちかっつったら負けてるし。
あぁなんか悔しさが蘇ってきた。いつか絶対レミリアに勝つ。
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「くしゅん」
「お嬢様、風邪ですか?」
「……かしらねぇ」
───────────────
「どうも、噂の半妖銀でーす」
扇風機を渡しながら適当に名前を言う。
「今日はこっちだったか。壊れたのかい?」
「そ、霖之助さん、少し店内見てるわね」
「あぁ、好きにしてくれ」
そう言うと、霊夢はどこかへ行き、霖之助は作業を始めてしまった。
……霊夢もいないし、聞いてみるか。
霊夢に霖之助のことを聞いたときから、ずっと聞きたいことがあったのだ。
「なぁ、霖之助さん」
「なんだい?」
扇風機をいじりながらも聞いてくれるようだ。
「霊夢の巫女服を作ったのってあんただよな?」
「ん?ああ、確かに作ったのは僕だ」
「じゃあ、ひとつだけ聞きたいことがある」
少し涼しい店内で、霊夢が聞いてない今だから聞けること。
それは
「あの服を作ったのはあんたの趣味か?それともただ規定かなにかで作っただけか?」
扇風機をいじる手を止め、霖之助の目が鋭くなる。
「それに答えるのに意味はあるのかい?」
「ない。ただ、俺が知りたいだけだ」
真っ直ぐに霖之助の目を見る。
いい目をしている……。
「……そうだ、あれは僕の趣味で作った。規定のものは性に合わなかったのでね」
……やっぱりこの人は……!
「霖之助さん、あんたって奴は……」
霖之助に手を差し出す。
「フッ、霖之助でいい」
ガシィッと音が聞こえそうなほどに熱い握手を交わす。
男の友情が芽生えた瞬間である。
「ちなみに俺の能力はあらゆるものを見極める程度の能力なんだ。つまり……」
ハッとしたような顔でこちらを見る霖之助。気づいたようだな、さすがは男の中の男。
「スリーサイズかッッ!!」
「ビンゴ!!俺はスリーサイズでさえ見抜けrへぶぁっ!!」
いつの間にか背後に来ていた霊夢に、お祓い棒で思いっきり殴られる。
「なーにくだらないこと話してんのよ」
「ま、待ってくれ霊夢、これには深い訳が……」
「問答無用」
弁明しようとした霖之助も同じくぶん殴られる。
「あのねぇ、見極めるのはいいけど、それを言いふらしたらあんたらも容赦なく祓うからね?」
「「す、すんまっせんした……」」
意外と寛容な霊夢に驚きつつ全力で謝っておいた。
「で、霖之助さん。扇風機は直りそう?」
「うーん、あと1時間くらいもらえたら直せるかな」
扇風機をいじりながら少し考えるように言う。
「そ、じゃあ直ったら神社に持ってきてね」
「えぇ!?僕が持ってくn」
「祓われるのがお望みかしら?」
あらやだ怖い。霊夢さん激おこですやん。
「直り次第持っていくよ……」
さすがに逆らえないようだ。
まぁそうだよな。誰が見ても今のは怖い。
「あと銀、罰として明日の家事の一切をやりなさい。今日も歩いて帰ってきなさいね」
「え、ちょっと待」
「な・に・か・し・ら?」
「なんでもございません」
笑顔でお祓い棒を構える霊夢にもはや逆らえる訳がない。超怖い。
「じゃ、私先帰るから」
それだけ言うと、霊夢はさっさと神社に帰ってしまった。
「…………」
「…………」
しばらくの間、無言で立ちすくんだあと、ポツリと呟いた。
「霖之助……」
「あぁ……」
「「霊夢には、逆らわないようにしよう……」」
そんな教訓を身をもって知ったとともに、男の友情はさらに深まった。ような気がした。
……世知辛いな、幻想郷。
その後、二人は哀愁漂う姿で帰ったらしい。
いかがだったでしょうか。今回は香霖堂の店主、霖之助とのお話です。数少ない男キャラなので、ちょくちょく銀と絡ませてみたいですね。
それではまた次回、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。




