第11話 紅魔編 蝙蝠と思惑
──紅魔館 執務室──
レミリアが大量の蝙蝠を放ってくる。それはまさに無数と言ってもいいほどだろう。
俺はそれを叩き、潰し、引き裂き、数を減らしていく。
「クソッ!キリがねぇ!」
「後ろがお留守よ」
「ぐっ……!」
背後からもろに蹴りを喰らう。
二部屋ほど吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「まだまだ行くわよ!!」
「させねぇよッ!!」
追撃を仕掛けてくるレミリアに、拳を振り下ろすも、容易に避けられる。
だが、狙いはレミリアではなく床だ。床を殴り壊し、1階に落ちる。
「逃がさないわ!紅符・スカーレットシュート!!」
大・中・小それぞれの光弾が追いかけてくる。扉を蹴破り、なんとか廊下へと逃げる。
「必殺・ハートブレイク!!」
追いかけてきたレミリアが、続けて技を発動する。
巨大な光の槍が心臓を貫こうと迫る。かろうじて身を捻って避けるが、レミリアの攻撃は終わらない。
「ふっ!!」
顎を蹴り上げられ、1階の天井を突き破って吹っ飛ぶ。
「ッそがぁッ!!」
なおも追撃してくるレミリアの腕をつかみ、壁に投げつける。
一瞬とはいえ、彼女を吹き飛ばしたことに安堵してしまう。
だが、
「夜符・デーモンキングクレイドル!!」
その一瞬の隙を突かれ、壁を突き破ってきたレミリアの技をノーガードで喰らってしまった。
「ぐ……っ!!」
「ほらほらほらほら!!」
レミリアはそのまま壁を破壊、轟音とともに外に放り出される。
「あああああこンのデタラメ種族がぁぁ!!」
「半妖がそれを言うのかしら!!」
レミリアが戦っているからか、空の雲は少し薄くなっていて、隙間からは、満月が顔を出していた。
──紅魔館 門前──
「ふぅ……そろそろ大丈夫ですかね」
銀との戦いで負った傷がまだ痛むが、もう動けないほどではない。
あれから1,2時間くらいか。彼はうまくやっているだろうか。
立ち上がり、状況の確認をしようとしたときだった。
紅魔館のほうから、とてつもない破壊音が響き始める。
「なっ、一体何が……」
そう言ったのとほぼ同時に、銀とレミリアが壁を突き破って外へ出てきたのが見えた。
「ホントに何やってるんですかぁぁぁぁ!?」
私が動けない間に一体何が!? 妹様は!?
聞きたいことは山ほどあったが、そのためにも、美鈴は館へと向かった。
──紅魔館 中庭──
口の中の血を勢いよく吐き出す。吸血鬼は血を好んで吸うというが、こんなマズいもの好きだとか訳分からん。
「あら?もう休憩かしら?」
レミリアが宙に浮き、こちらを見下ろしながら言ってくる。
「こんなに月が綺麗なんだから、もっとたくさん遊びましょう?」
「俺はおままごとを所望するよ」
さて、どうしたもんか。相手は飛べる以上こちらが圧倒的に不利なのは変わらない。いつ空から弾幕打ちっ放しになるか分かったもんじゃないしな。
「さぁ、続けましょう?神槍・スピア・ザ──」
レミリアがスペルを発動しようとした時だった。
「お嬢様!!」
「「美鈴!?」」
あいつ、一体何しに……!?
「お嬢様!もう……もう止めましょう!!」
「…………」
「もしこれで妹様が外へ出られても喜ぶはずがないって、分かっていらっしゃるんでしょう?」
「…………」
レミリアは、答えない。
「お嬢様!」
「黙りなさい」
大きな声を出した訳ではない。だが、発した声が小さなものであっても、そこに絶対の意志がある場合、今ここにいる人間を黙らせるには十分だった。
「侵入者をやすやすと通した役立たずのあなたに、私に意見する権利があると思って?」
その声は、何者をも拒絶する響きがあった。
それになにより、ひどく、冷たかった。
「そ、それは……」
美鈴が口ごもる。
「……訂正しろよ」
「え?」
だが、今のはさすがの俺も看過できない。なんせ彼女は役立たずじゃない。
「美鈴が役立たずなんじゃない、俺が美鈴より強かっただけだ」
レミリアの目が据わってくる。
美鈴の本当の強さは、戦闘力にあるのではない。それは、主であるレミリアはもちろん、ほんの少しだが、美鈴と会話をした俺でも分かっている。
それを分かっているレミリアがなぜ今の発言をしたか。そんなのは簡単だ。
要するに彼女は
──ブチ切れてる。
理由は美鈴の発言内容にあるのだろうが、部外者である俺にはよく分からない。ただ、彼女を役立たずと言うのは俺が許せない。
「銀さんそれフォローになってないです……」
美鈴が呟くが聞こえなかったことにしよう。
「ま、お前を倒してそれを証明してやるよ」
「……さっき、腕の1本や2本と言ったわね」
「ん?あぁ」
そういや言ってた気がする。物騒すぎて忘れてたわ。
「前言撤回よ、四肢もいで剥製にしてあげる!!」
お互いに狂気じみた笑みを浮かべて言う。
「やれるもんならやってみやがれ吸血鬼ィ!!」
そして再び、彼《彼女》らは戦闘を始めるのだった。
──紅魔館 1F 廊下──
目を覚ます。
見渡すと妖精メイドたちが心配そうな顔でこちらを見てくる。
あぁ、私は負けたんだった……
「痛つっ……お嬢様は……?」
妖精メイドによると、今まさに侵入者と戦闘しているらしい。
はやく加勢しに行かないと……!
「妖精メイドたちは安全な場所……そうね、図書館に行きなさい」
パチュリー様ならきっとお許しになるだろう。
「私は大丈夫、お嬢様をお手伝いしてくるわ。だからあなたたちは行って」
そう言うと、しぶしぶながらも彼女たちは図書館へ向かっていった。
はやく……お嬢様のところへ……!
ふらつきながらも、戦闘音のするほうへ向かっていった。
──紅魔館 地下 ???──
真っ暗な部屋の中で、少女は一人座り込んでいた。
手にはぼろぼろの人形、周囲にも破壊されたおもちゃが散乱していた。
「なんだかドンドンうるさいね。お客さんでも来たのかな?」
誰もいない室内で、少女は誰にというわけでもなく話しかける。
「でもこれは戦ってる音だよね……」
また、誰かが危ない目にあっているんだろうか。
「助けに行ったほうが……いいのかな」
もういつのことかも分からない記憶を思い出す。
あのときみたいに……なっちゃったら……
「でも、そうだよね。助けに行こう!」
そう言うと、少女は立ち上がり、ドアへと向かう。
「それじゃ、みんな行ってきます」
人形たちに向かってそう言うと、少女はドアを粉砕して、外へと向かうのだった。
いかがだったでしょうか。今回は、紅魔館を縦横無尽に破壊しまくりながら戦闘するお話でした。個人的にうまくいったか不安ですが、楽しんでいただけたら幸いです。また次回も読んでいただけると嬉しいです。




