第93話 闘技大会編 アホの子と主従
「さぁ本日最後の試合はこちらぁ!」
最後に姿を現したのは、リグル・チルノと天子・衣玖の二組だ。
「ふっふっふ……あの吸血鬼と当たれないのは残念だけど、まぁ? 前座だと思って相手してあげるわ」
「総領娘様、あまり挑発しないでください」
前に負けたのをやはりというかなんというか根に持っていた天子が、いつものように相手を下に見た言葉を口にし、それを衣玖が諌める、というのがもはや定番になっていた。
「私たちは前座なんかじゃないやい!」
「さいきょーであるあたいをおそれての言葉さ……かわいいもんだろう……?」
真に受けて反論するリグルに、なぜか顔に手を当て、精一杯頑張ってキザなセリフを口にした、という感じのチルノ。
すると突然チルノが震え出す。
「ど、どうしたのよ氷精」
「あたい……あたい……」
突然のことに、さすがの天子も一瞬たじろぐ。衣玖はもはや「早く終わってくれませんかね」というような表情をしている。
「今のあたい、ちょぉぉぉぉかっこよかった!!」
「んなこと知らないわよボケ!」
「それでは試合を始めます、並んでください」
目の前で茶番を繰り広げる二人を完全に無視して映姫は試合開始の準備をさせる。
「それでは、試合開始っ!」
「まず一人目ぇぇぇっっ!!」
試合開始と同時に剣を振りかざしてチルノへと突撃する。
「チルノ危ないっ!」
「おうふっ!?」
ほぼ突進の勢いでチルノにぶつかって掴みあげ、空中へと逃げ出すリグル。
「あっ、空飛ぶのずるい! カナメファンネル!!」
天子が要石を数個呼び出し、チルノとリグルへとレーザーを撃ち込む。
(…………はやく終わらないかなぁ)
心底めんどくさそうな顔をする衣玖。
「むむ、あの石やっかいだな……」
ビームを撃ち出し続ける要石のせいで、チルノとリグルは今のところ避けに徹するしかない。しかも衣玖はまだ何もしていない状態だ。
「ふっ……さいきょーであるあたいを避けさせるとは……やるな、青いの」
「あんたもそこそこ青いでしょうが!」
青い二人はさっきから同じようなやり取りを続けている。
「よーし、みんなおいで!」
「……?」
リグルが何か言ったが、特に何も起こらない。
だが、一瞬ののちに、天子はそれを理解する。
「いやぁぁぁぁ虫とか聞いてないぃぃぃ!!!」
突如場外からやってきた大量の虫に、天子は全速力で闘技場内を走り回る。
悲鳴を上げていたのは天子だけでなく、観客もだったが。
ここにもその被害者が一人。
「逃がさないわよ、銀」
「その手を離せ霊夢ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
「ちょっ……やばっ……衣玖っ! ねぇ衣玖助けてっ!」
全力疾走しながら衣玖に助けを求める。
「仕方ないですね……」
ため息をついてから、天子を追いかける虫玉に指を向ける。
「はっ!」
衣玖の指先から電撃が放たれ、虫玉を全て焼き尽くす。
「うおおーアイシクルフォール!」
チルノが氷のつぶてを精製し、乱射しまくる。
「ちょ、チルノ! それ虫達にも当たってる!」
「とりゃとりゃー!」
「聞いてないし!?」
チルノは本当に乱射しているだけで、特に何も考えていないらしい。
「よくもやってくれたわねあんた達ぃ……」
虫が減ったおかげか、要石に乗ってすでにチルノとリグルの背後に移動していた天子が、剣を構える。
「これで終わあばばばば」
剣を振り上げた瞬間、電撃が天子の体を撃ち抜く。
「すみません総領娘様。狙いが逸れました」
完全にわざとだったがそれを口にするべき人物はすでに痺れていて話せる状態じゃない。
「さて御二方。ひとつ教えてあげましょう」
「「…………?」」
一体なんだ、という顔でチルノとリグルは顔を見合わせる。
「雷って、高いところに落ちるんですよ」
衣玖が手を上から下に振り下ろす。
二人の頭上から雷光が迸り、そのまま二人を貫いた。
「チルノ、リグル、両者戦闘不能。よって比那名居天子、永江衣玖の勝利です」
映姫が黒旗を上げ、試合の終了を告げる。
こうして、闘技大会トーナメント戦一日目が終了した。




