第92話 闘技大会編 鬼と大魔法使い
「こっちから行かせてもらうぜ!」
「させない! 土符・レイジィトリリトン!」
突っ込んでくる勇儀の足元や周囲から次々と石柱が飛び出す。
「うざってぇッ!」
思わず石柱を叩きおってから、勇儀はそれがなんなのか気づいた。
石柱の先端にエネルギーが溜まり始める。
「チッ……」
短く舌打ちをした勇儀は、逃げることはせずに立ち止まる。
石柱が輝きだし、放電する。
「……さすがの耐久力、なんて呑気じゃいられないわね……」
勇儀を足止めできたのは、本当に一瞬だけだった。電撃などものともせずに近づいてくる。
「パチュリー様! 合わせてくとさい!」
「分かったわ!」
「極光・華厳明星!!」
「土&金符・エメラルドメガリス!」
美鈴の放った極大の光弾の周りを、パチュリーが作り出したエメラルドを模した弾が追随する。
「威力が足りてねぇんじゃねぇか!?」
電撃をノーガードで凌ぎ切った勇儀が叫び、構える。
「光鬼・金剛螺旋!」
自分で作り出した螺旋状に構成された弾を掴み、美鈴たちの攻撃に真っ向からぶつける。
「オラァァッッ!!」
圧倒的な火力の差で、勇儀は二人の弾幕を打ち破る。
「くっ……」
(身体強化の魔法ももうそろそろ限界だ。ここはもう……賭けるしか……!)
「パチュリー様、援護お願いします!」
「美鈴……!? ……分かったわ」
すぐに美鈴の考えていることを把握したパチュリーは、美鈴を援護する態勢に入る。
「正面から来る……か。いいねぇ、その意気だ!」
勇儀も美鈴を迎え撃とうと走り出す。
「火&日符・フレアイグニッション!」
美鈴と勇儀のちょうど中間あたりで火球が爆発し、二人を飲み込む。
だが、その炎は美鈴を避けるかのように燃えていた。
「決めさせてもらいますっ!」
美鈴が、あまりの豪炎に思わず立ち止まった勇儀の前に躍り出る。
「三華・崩山彩極砲!!」
勇儀の鳩尾に、全力の一撃を叩き込む。
前回銀と戦った時よりもはるかに高い威力の一撃だ。
だが
「捕まえたぜ、紅美鈴」
決まったと同時に、腕を掴まれる。
「そんなっ……!?」
「なかなか楽しめた。ありがとな」
「くっ……!?」
咄嗟に腕でガードするが、すでに身体強化は切れている。そんな状態では防ごうにも防げない。一瞬で壁まで飛ばされる。
「試合続行は危険ですね。紅美鈴、敗退です」
映姫は美鈴を流し見て、黒旗を上げる。
「美鈴!」
「残るは魔法使い、お前だけだな」
勇儀はゆっくりと近づいて来る。
「日符・ロイヤルフレア!」
頭上に火球を作り出し、勇儀へとぶつける。
だが、腕の一振りでそれはかき消されてしまう。
「どうする? 棄権するってーならアタシは止めないぜ?」
目の前に立ち塞がる勇儀が、パチュリーに向かってそう言う。
そんな勇儀を彼女は真っ直ぐに見つめ返す。
「美鈴があれだけ頑張ってくれたんだもの。私が諦める訳にはいかないでしょう?」
「……! ……そうだな。今のは忘れてくれ」
そう言うと、勇儀は一度後ろへ飛び、パチュリーから距離をとる。
「仕切り直しだ。最後の大一番と行こうぜ?」
「火水木符・ヴァッサァフォイアデントロ!」
驚異の三属性同時発動。ここに来てすでに体力も魔力も限界だが、七曜の魔女と呼ばれる者としての意地がある。
「いいねぇ、その勇気に応えよう!」
勇儀がその場で拳を構える。
そして、向かってくるエネルギー弾を全力で殴りつけた。
「ぶっ飛べぇぇぇぇ!!」
勇儀が振り抜いた拳は、エネルギー弾を打ち消しただけでなく、その衝撃波だけで咄嗟に防壁を張ったパチュリーを壁まで吹き飛ばす。
「パチュリー・ノーレッジ。楽しかったぜ」
距離を詰めた勇儀は、一瞬目を伏せるが、すぐに拳を振り上げる。
そして、拳を振り下ろそうとした瞬間、
「両者そこまで!」
映姫の声が割って入った。
「試合はそこまで、星熊勇儀の勝利です。レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット、貴方たちもそこまでです」
パチュリーをかばうように勇儀の前に立ち塞がった二人に、映姫は静かに告げる。
「そいつ強かったよ。後で礼言っといてくれ」
それだけ言うと、勇儀は二人に背を向ける。
「次の試合、覚悟してなさい」
レミリアのその言葉に、勇儀は片手を上げるだけだった。
「……圧倒的ね」
「やっぱ姐さんだったか」
「さて、私は今日は帰るわね」
勇儀の試合が終わった途端にパルスィが立ち上がる。
「後の試合は見ていかないのか?」
「ヤマメ達を連れてかなきゃいけないし」
言うだけ言うと、パルスィはさっさと行ってしまった。
「……!」
勇儀が、闘技場を出る瞬間にこちらを見た気がした。
あの時のこと、まだ根に持ってるらしい。強さを見せつけるため、なのだろうか。いや、たぶん単純に楽しみたかっただけだろう。
今日はまだあと一試合ある。
次の勝者は、一体どっちだろうな?




