第10話 紅魔編 元凶と吸血鬼
──紅魔館 執務室前──
ここが、吸血鬼がいるという部屋。
廊下などに窓が少なかったのは、日光に弱いという特性上だろう。
(……入るか。)
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開く。
──執務室──
そこには、小さな女の子がいた。
見た目は10歳くらいだろうか。だが、明らかに普通ではないのが分かる。少女の背中には、黒い羽が生えていたからだ。
「少し遅かったわね、道にでも迷ったのかしら?」
見た目通りの幼い声で、少女は話し始める。
「おかげさまでね。案内くらいよこしやがれ」
「フフッ、やっぱりあなた面白いわね」
「そりゃどーも」
正直皮肉で言ったんだが、その態度がお気に召したようだ。
「この雲出してるのはお前か?」
その問いに、彼女は笑みを浮かべて言う。
「正解。ようやく元凶にたどり着いたってわけね」
ホントにクソ長かったわ。何回か死を覚悟したし。
「で、この雲を消してくれるのか、くれないのか」
「あなた、私の従者にならない?」
俺の質問を完全に無視して目の前の少女は問いかけてくる。
「あのな、話を」
「従者が進言するなら多少は聞くかも知れないわよ?」
話を聞いてくれない。むしろ話を聞いてくれた美鈴やパチュリーがよかったのか。普通はこうだよな、うん。泣きそう。
「悪いけど、断る。俺は・・・」
「咲夜が超一流の食事を作ってくれるしあなた専用の部屋もあげるわ。それにいくら寝てても誰も咎めないわ、どう?」
「・・・・・・断る」
「間があったわね」
しゃーねぇじゃん。魅力的すぎるんだもん内容が。特にメシの話とか。
「理由を教えなさい」
「しいて言うなら、俺は誰の下にもつきたくないから、かな」
思ったことをそのまま伝える。
「くだらない理由ね」
「自分でもそう思うよ」
嘘は、ついていない。ただ、彼女の下についたところで、この異変を止めるとは思えないし、なによりせっかくの初依頼、成功させたいじゃん?
「……私、とても我が儘なの」
彼女の纏う雰囲気が変わる。
「あなたがどうしても嫌がるのなら……」
影が、より一層濃くなる。
「殺してでも手に入れるわ!」
「ついに本性あらわししやがったなこのガキ!!」
殺気を隠そうともしなくなった少女に、思わず頬が引き攣る。
「あら失礼ね、これでも私500歳なのよ?」
「ごひゃっ!?」
見た目より50倍くらい上の年齢だった。ホント何でもありだな幻想郷。
「力ずくになっちゃうから、腕の1本や2本は我慢してね?」
「そいつは困る、メシ食えなくなっちまうしな」
彼女は、子供のように無邪気で、残酷で、純粋な笑顔を浮かべている。
「私は紅魔館の主、レミリア・スカーレット」
「半妖、銀だ」
鬼化はし終わっている。いつでも始められる。
二匹の鬼が、対峙する。
「さあ、始めましょう?」
「かかってこいや吸血鬼……!」
2人の戦いが、幕を開けた。
──そのころ 霧の湖付近──
「もう夜になるころかしらね……」
「さあ?雲が厚くてよく分かんないぜ」
魔理沙はこう言っているが、おそらく夜だ。私の勘だから間違いはないだろう。
「この異変を起こしてるのって吸血鬼なんだよな?」
魔理沙が聞いてくる。
「えぇ、そうらしいわ」
ここまで来る途中に何匹か妖怪をふんじばって吐かせたところ、同じように「吸血鬼の仕業だ」と言っていた。
「だったら夜になったら強くなっちゃうんじゃないのか?」
「あら、魔理沙にしては珍しく弱気ね」
たしかに吸血鬼は夜になると力を増す、と聞いたことがある。実際のところどうなのかは知らないが。
「何言ってんだよ、強い奴と戦えるほうが楽しいだろ?」
「ただ面倒くさいだけよ」
どうせ、私が勝つんだろうし。
「霊夢はもっと楽しんだほうがいいぜ?いっつもぬーんて顔してるから」
そう言うと、魔理沙がおそらく私の顔真似をする。
「あんたねぇ……」
「ひゃー霊夢が怒ったー!」
そう言うと、魔理沙は加速して逃げ出す。
「あっ、こら待ちなさーい!」
さっきからするいやな予感が的中しないことを祈りながら、私は魔理沙を追いかけた。
いかがだったでしょうか。今回少し短めになってしまいましたが、お許しを。次回から紅魔館の主、レミリアとの戦いです。ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。




