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人と妖怪とetc.  作者: 那々氏さん
プロローグ 神々が恋した幻想郷
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第1話 巫女と居候

初作品なので駄文ではありますが楽しんでいただけたら幸いです。キャラの口調、性格は自分好みの設定なのでご注意ください。


 

 幻想郷──一つの例外もなく、あらゆる生物を受け入れる場所。

 そこには人間、妖怪、吸血鬼、果ては天人に神霊までもが住んでいる。

 異界から来た者ですら拒まない幻想郷に、彼もまた、誘われて来たのかもしれない。




 この幻想郷には、妖怪退治を専門とする巫女さんがいるそうだ。名前は博麗霊夢(はくれいれいむ)

 何か困った事や面倒ごとがあったらとりあえず行ってみるといいらしい。

 俺をこの幻想郷に連れてきた人物(?)によれば、「話はしてある」そうだ。正直あまり信用できないが、とりあえず行ってみなければ何も始まらない。


「こういうのって、振り返るといい景色が広がって……」


 長い階段を上っている途中、ふと呟いて振り向いてみる。


「…………なんもねぇな。山と木と田んぼしかねぇ」


 田舎も田舎、ドのつくレベルだろう。少しでもテンションを上げようと思ったが、むしろ下がった気がする。おとなしく階段を上ることにした。


「さて、この階段を上りきれば……」


 鳥居の向こうには、少女がいた。

 赤と白を基調とした巫女服に頭につけている大きなリボンが目を引く。そしてなにより美人だった。整った顔立ちに白い肌、少し眠たげに細められた目も、目の前の少女にとっては、美しさを引き立てる為の要因でしかなかった。


「ジロジロ何かしら?」


「いやなに、ずいぶんと美人な巫女さんもいるもんだなって。桜が映えるねぇ」


 神社を見回してみれば、中々キレイに掃除されていて、ここにあまり人間が来ないというのが意外なくらいだ。

 確か、妖怪が多く出現するから人が寄り付かない、と聞いた。


「あらありがと、お帰りは今来た道よ」


 あからさまなお世辞だとすぐに理解したのだろう、彼女は棘を隠さずに言葉を発する。


「そんなこと言われたって、俺はここ(博麗神社)、というよりあんたに用があって来たんだけど?」


 そう言うと、一瞬ではあるが、彼女はこちらを見定めるような目で眺める。


「悪いけど、私は無償で面倒ごとを引き受けるような便利屋じゃないの。見たところ大した物も持ってなさそうだし……帰ってくれないかしら」


 それだけ言うと、霊夢は再び庭を掃除し始める。

 聞いていたよりも数倍ドライな反応に心が折れそうだが、ここで帰ってもどうしようもない。気を強く持ち、めげずに話を続けることにする。


八雲紫(やくもゆかり)って知ってるか? まさか知らないことはないだろうけど」


「………………」


 そこで初めて、彼女が俺のことをしっかりと見据えた。


「その反応は知ってるってことでいいな」


 彼女からの返答はない。


「じゃあ単刀直入に。俺を居候させてください!!」


 数秒くらいの間だっただろうか。あまりの静けさに、風に舞う葉の音がやけに大きく聞こえた。


「……は? ……頭でもおかしいの?」


 全く予想もしていなかった解答(?)に、これまた数秒間呆けてしまう。


「初対面の相手に散々無礼をはたらいておいて挙句の果てには居候させてほしい? アンタが妖怪だったら滅してるわよ」


「なっ、紫から話聞いてないのか!?」


「不審者が来るなんて情報は聞いてなかったわね……」


 そう言うと、霊夢は懐から札を取り出し始める。


「そもそもあんた、本当に人間……? なんか違和感が……」


 周囲に不穏な空気が漂い始めた時だった。

 二人の間に割って入るように、突如()()()()()()。さっき話に出た、紫の能力である()()()による空間への干渉だ。そのスキマから、おもむろに手が伸びてくる。何か持っているようだ。


「なにこれ、手紙? あのねぇ紫、話があるなら直接……もう帰りやがった……」


(……今のは……紫? なんか渡してたみたいだけど……)


 スキマを開けたんだから普通に話せばいいものを、どうやら手紙だけ渡して帰っていったようだ。


「全く、いつもいつも突然来て帰ってくんだから……」


 ぶつぶつ言いながらも霊夢は手紙を読んでいく。


「なぁ、それなんだ?」


「………………」


 霊夢は答えない。というより手紙を食い入るように凝視していて、こちらの声など聞こえていないようだ。


「おい……ってなんだよ」


 もう一度聞こうと彼女のほうを見れば、ものすごい形相でこちらを睨んでいた。心なしか、震えているようだ。羞恥心ではなく怒りで。


「あんた、名前は?」


 こちらの質問に答えるはずもなく彼女は質問で返してくる。

 文句の一つも言いたいが、話がややこしくなりそうだ、ここは我慢して答えておこう。


「銀だ」


「…………」


 霊夢は紙と俺を交互に見ながら、さらに深く眉間にしわを寄せている。


「種族」


 面倒くさくなったのか、もはや単語だけで質問してくる。癪に障るが答えておこう。


「人間だよ」


「“半分”でしょ」


「なんだよ、知ってんじゃねぇか」


 霊夢はすでに俺の事情を知っているようだ。いや、今さっき渡された紙で知ったのだろう。

 彼女は目で俺に続きを言え、と促す。


「はいはい。人間と鬼、半分ずつだよ」


「だから違和感があったのね……」


 どうやら彼女、相当勘が鋭いらしい。そうでもなきゃ妖怪退治などやってられないのかもしれない。


「とりあえず、次に紫と会うのが楽しみね。こっちから会いに行こうかしら」


 弾んだ声で言っているが、目が笑っていない。怖い。なにが楽園の素敵な巫女だ。


「さて、と」


 霊夢は気持ちを切り替えるかのように大きく息を吐き、こちらを見る。


「居候させるにあたって、ルールを言っておくわ」


 とても、とても面倒くさそうだ。あまり細かい決め事などは昔から苦手だ。


「私が絶対(ルール)。以上よ。ほら、掃除やっときなさい」


 一言で済ませた彼女は箒をこちらへ放り投げ、さっさと神社のほうへ戻っていく。


「ちょちょ待っ……」

「いいのかしら? 庭で野宿することになるわよ?」


 こちらに有無を言わさぬ圧力を感じる。凄みどころか殺気まで感じる気がする。


「もし、もしだ。力ずくで入るって言ったら……?」


 恐る恐る口を開き、霊夢の表情をうかがってみる。

 すると彼女はにこやかな笑みを浮かべ、


「博麗の巫女を舐めないほうがいいわよ? 叩きのめして捨てるわ」


 怖すぎる。それでも人間かよ。

 おそらくは攻撃用の札をチラつかせ、これ以上歯向かえばぶちのめす、という強い意志を感じる。


「まぁ、面倒くさければ結界張るわ」


 どちらにせよえげつないな……。口に出しては言えないけど。


「じゃ、あとは頼んだわよ」


 これ以上は時間の無駄だと考えたのか、会話を切り上げ、今度こそ戻っていく。

 仕方なく、ぶつぶつ文句を言いながらも、俺は庭の掃き掃除を始める。


「あぁそうだ、言い忘れてたわ」


「今度はなんだよ……」


 次はどんな面倒ごとを押し付けるのかと辟易しながら霊夢を見る。

 旋風が落ちた桜の花びらを巻き上げる。


「ようこそ、幻想郷へ」


 この瞬間、俺は初めて幻想郷に来たのだと再認識することになった。

いかがでしたでしょうか。次のお話しまでは、戦闘シーンはない予定です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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