表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白ウサギのVRMMO世界旅  作者:
【第四章】白ウサギと愛の楽園と気ままな旅とその裏で
85/94

75.5.変態と猛獣

「……!?」


 ベンチの下を覗き込んだプレイヤーは、体も脳も硬直させていた。


「…………」


 ……理由は、少女が潜んでいたからだ。


 桃色のツインテールの可愛らしい――いや、特徴なんてどうでもいい。まずは状況を整理したかった。


 何でこの少女はベンチの下にいるんだろう。


 隠れているのか? 何か怖いことでもあったのか? いや怖いのはこっちだけど。声をかけた方がいいのか? よくないのか?


 色々考えたが少女がベンチの下にいる理由は分からなかった。だが、自分が取るべき行動は分かる。


「ん? 何だよ固まって……何かいたのか?」


 駆けつけてきた仲間に、ニコリと微笑んで、


「いや、何もいなかったよ」


 見なかったことにする。


 そう、自分は何も見なかった。何も。


 何事もなかったかのように、この場から離れていく。





「……んぇぇ〜」


 表情を歪め、舌を突き出す少女。


「何で男なんかと見つめ合わなきゃいけないのよぉ……。うぅっ、思い出しただけで……寒気で風邪引いちゃいそう……ああ、もう一度あの子みたいな癒しをこの目に焼きつけたい……あの……小さくて、柔らかそうな『お尻』を……」


 すとん、と。頭上から軽い音。


 反射的に上を見た少女の口から、フォオオ! と、興奮の息が荒く吐き出された。


 彼女の視界の先……座面に隙間が設けられたベンチには、ハッキリとあるプレイヤーの臀部が映し出されている。


「……百二十満点……!」

「はは、それは嬉しいね」

「!」


 上から聞こえてきた感想に、少女は勢いよくベンチの下から飛び出した。


 それは自分の存在がバレてしまったから……違う、その声に聞き覚えがあったからだ。そして、危機を感じたからだ。


 ツインテールを激しく揺らしながら立ち上がった少女の前には、鬣のような銀髪ことレオの姿があった。


「こんにちは、君は……レーズン、だったよね」

「……へぇ、下っ端の名前も覚えてんのね」


 そう返し、少女レーズンは笑う。……苦笑いで。


 いくら『三度の飯よりも美女の尻が好き』の彼女でも、レオから魅力を感じ取ることはできなかった。


 それよりも勝る感情があったからだ。


「まぁね、強いプレイヤーは記憶しているから。それとこれから成長するだろうプレイヤー、化ける見込みがあるプレイヤーも全てチェックしているよ」

「う、うわぁ……」

「ん? 私、何か変なことを言ったかな」


 怪訝な顔を作るレーズンの意味を、レオは理解できなかった。


「べ、別に。それで? ここに何しに来たの?」

「はは、さっきも同じような質問を受けたね。同じ言葉で返そう。……遊びに来たんだよ」

「ふーん……」

「ついでとして人探しをしていてね。ある大男を」

「うちのオカマで間に合ってます」

「……まぁ、君は異性に興味はないか。それじゃもう一つ、可愛いウサギのような女の子がここに」

「えっ! どこっ!? どこどこォッ!?!?」

「……来ているかどうか聞きたかったんだけどね」


 レオは呆れたように肩をすくめると、レーズンに背を向けた。


「他を当たるよ。それじゃあね」


 軽く手を振りながら、この場を去っていった。


 完全に姿が消えてから、レーズンは瞳に映したハートマークを消滅させる。


 最後に口元の唾液を拭って、


「……まさか、あの人も狙ってるなんてね」


 そう呟くレーズンの表情は、真剣そのものだった。


「正直、実力とかは全然感じなかったけど……か弱いっていうか、そう守ってあげたくなるのよね!」


 じゅるり、と再び唾液をこぼして、


「あの子のお尻は……あたしが守る……!」


 うへへ、とレーズンはニヤニヤ笑みを浮かべて、


 再びベンチの下に帰っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ