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白ウサギのVRMMO世界旅  作者:
【第一章】白ウサギと打上花火
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6.初戦闘

 帰宅した俺は一目散に【セカンド・ワールド】の世界にログインを済ませていた。


 再開位置は昨日、初ログインをした始まりの街の広場だった。


 ふと、身につけていた背中のバックパックや腰のブーメランが心配になり手を伸ばす。……よかった。どっちも普通にあった。


 地面に落ちたらその場に取り残されるシステムなので、ついビクビクしてしまう。


 無事を確認した俺は、早い足取りでフィールドに向かった。


 今日は旅を中断し、やることを決めている。


 それは、モンスターとの戦闘だ。


 旅を続けていく中で最も避けられない事態と言っても良いし、少しは鍛えておかないとな。


 ……とは言っても、


『テメェ! そいつは俺の獲物だろうが!』

『ンなモン知るか自己中野郎!』

『もーうるさい! ケンカは他所でやってよ!』


 ……何か殺伐としてるなぁ。


 それにプレイヤーの数が多すぎてMOBの姿が全く見えない。やっぱりサービス開始翌日じゃ一日目と変わりないか。


 これじゃMOBと戦うのは不可能に近いな……。


 半ば諦めながら、俺は歩き出す。


 真っ平らで平面な緑の大地。見渡しが良すぎて、POPするや否やすぐにプレイヤーの大群が押し寄せてくる。


「ブルル……」


 だから、こんなに早くMOBと対峙できるとは思ってもみなかった。



【ファングボア】【Lv2】



 眼前で臨戦態勢を取るのは、全身こげ茶の毛並みを持つ、小さめなイノシシ。だが鼻の左右に設けられた牙は巨大かつ鋭利で中々に迫力がある。


 俺は、ゆっくりとブーメランを手に取った。


「ブモッ!」


 直後、唸り声を上げながらファングボアは俺をめがけて一直線に突進を開始した。


 少し恐怖を覚えるが、速さはそれほどじゃない。


 落ち着いて俺は近づいてくる相手を見据え――ギリギリのタイミングで横に跳んだ。


 そして、すぐ側を通り過ぎる相手の横腹に、ブーメランを握ったままで叩きつける。


「ブギッ!?」


 腹部に赤いエフェクトを刻ませ、奇声を上げるファングボア。

 頭上のHPが微量に削れていく。


 ファングボアは少し怯んでいたが、やがて目つきを険しくさせると、再び突進を始めた。


 今度は大分遠い距離で横っ飛びをし安全に回避した俺は、そのまま三メートルほど離れていく。


「ふッ!」


 振り向きざまに、ブーメランを放り投げた。


 ギュルル、と素早く回転しながら真っ直ぐに進んでいき、


「ブギュァッ!?」


 ゴリッ、そう表現できるくらい大幅にファングボアのHPを削り取った。ゲージは黄色(半分)に染まり、あと一歩でレッドゾーンに突入するところだった。


 どうやらブーメランは近接武器のように扱うよりも、放った方がダメージを与えられるようだ。


「わっ、とと……」


 弧を描いて戻ってきたブーメランを危なげなくキャッチした俺は、そのままもう一度グラつくファングボアに投げつける。


 パァン! と。


 見事、敵の脳天にブーメランが直撃し、頭上のHPを全て空にさせた。


 直後「ブヒュ……」と、切ない声をこぼしたファングボアは、地面に崩れ落ちる。そして全身を静かに消滅させた。


「ふぅ……」


 強張っていた肩の力が、自然と抜けていく。


 ――ブゥン。


 くたびれた顔を作っていると、眼前にウィンドウが出現した。そこにはファングボアから入手したドロップアイテムが表示されていた。



【ファングボアの肉】ランク:F

効果

生のままで食べることはできない。



「肉、か……」


 呟きながら、調理キットを持っていたことを思い出す。

 あれを使えば、肉料理が作れるはずだ。


「肉、か……!」


 同じ言葉だが、今度は強みを増していた。


 ……だって、昨日食べた生菓子が本当に美味しかったんだもの! 別の料理を口にするのが楽しみで楽しみで!


 俺は、忙しなく辺りを見渡す。


 相変わらずプレイヤーの姿が多い。これではファングボアと一戦交えるのは困難だろうし、ドロップアイテムだって必ず落とすわけじゃない。出たとしても肉以外のものかもしれない。


 それでも、


「肉ッ!」


 胃袋から湧き上がる欲望に勝てなかった。


 周囲を暴れ回るプレイヤーに紛れ、俺もまた数少ないMOBを追いかけ回し始めた。



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