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白ウサギのVRMMO世界旅  作者:
【第三章】白ウサギと水の都
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63.別れと出会い

 喫茶店から解放されても嵐は止まなかったため、俺はまだ店内で待機させてもらっていた。


 場所は移動し、ここは裁縫ギルドの一室。


『スタッフ・フロア』


 そう刻まれた扉の先に設けられたこの場所には裁縫道具がそこら中に並んでいた。


 俺はその一つを借りて、新たな防具を作り上げようと奮闘していた。


 喫茶店は結果的に嵐で時間が短くなってしまったけど、大成功を収めることができたため、たくさんボーナスがもらえた。


 クリスと地図代を分け合ってもお釣りが出たので、それを利用して裁縫用の素材である『毛糸』を購入。

 後は先日戦ったサハギンのドロップアイテムである『上部な布(身につけていた衣服)』を使って、俺は作り出した。



【冒険者の服】ランク:E

効果

DEF+12



「やった!」


 裁縫スキルを上げていたため、少し難しかったけど強い防具を作り出すことができた。


 初めてFランクよりも高いものを作れた、嬉しいな。


 早速、武具ポーチを開いて装備を取り替える。そして近くに配置されていた縦長の鏡に駆け寄った。


 首元に緑色のフードが巻きつけられており、その下に白い布製の服。下は黒いパンツだった。


「へー、様になってるじゃない」


 ひょこっとクリスが鏡に顔を出してくる。


「可愛い可愛い」

「そこはカッコいいが良かったな……わふっ」


 フードを被せられたっ。


「わああ、何も見えない」

「はは、ホント可愛いわよね。女の子なんじゃない?」


 ぬぬ……失礼なことを!


 真っ暗闇の中でムスッとしていると、不意に頭の天辺に硬い感触が乗った。


 これは多分、顎だ。つまりクリスが乗っけているというわけだ。悪ふざけかな?


「……ゼンはさ、これからどうするの?」


 けど、頭上からの声に一切笑みは含まれていなかった。どちらかといえば寂しいような、悲しいような。


「これから……そうだね、武器を新調して、少し街を散歩してから船に乗ろうと思ってるよ」

「船……そっか。もう次の街に向かうのかぁ」


 コン、コン、とクリスは顎を軽くバウンドさせて、


「うーん、寂しくなるわねー!」


 俺の側から離れていった。


 フードを少し持ち上げて振り返ると、こちらに背を向けるクリスの姿があった。


「ねぇゼン、さ。もし良かったらなんだけど……」


 こちらに背を向けたまま、告げてくる。


「あたしたちと一緒に行動しない?」

「?」

「短い間だったけどさ、ゼンと一緒にクエスト行って一緒に喫茶店で働いて……凄く楽しかった。その、これからも一緒にゲームを楽しみたいなって思って……どうかな?」


 その問いに、俺は首を横に振った。


「……ごめんクリス、俺は一人で旅を続けたいな」

「ぐはー! 残念」


 顔を両手で覆い、天井を見上げるクリス。


 そんな彼女に、俺は言った。


「でも、俺も楽しかったよ。ほとんど強引に連れてかれた感じだったけど……本当に楽しかった。仲間の人たちがクリスを大好きな気持ちが分かったな」

「あ、ありがと……で、でも恥ずかしいって……」


 こちらを向いたクリスの顔は、真っ赤だった。


「それと……色々ごめんね? あたし自分勝手でさ」

「ええっ、自覚あったの!?」

「アンタって意外と辛口よね……」


 ムッと額に眉を寄せるクリス。そのまま見合って、


 自然と、お互いに笑みがこぼれ出した。


「……ふぅ。まあよく考えればフレンド登録すればいつでも会話できるし、会えるわよね」

「うん、登録しよっか」


 ウィンドウを開き、登録を完了させる。


「よし、いただき! そんじゃまた何かピンチになったら呼ぶから、ちゃんと助けに来てよね!」


 クリスはそう言うと、扉に向かって駆け出した。


「ぴ、ピンチになる前に改善すれば良いんじゃ?」

「何言ってんの! できたら苦労してないわよ!」


 そこはドヤ顔をするところじゃないと思うな。


「ははっ。……さて。それじゃゼン、またね!」

「うん、またねー!」





 メンバーさんたちに別れを告げ、外に出る。


 雨や風はすっかり消滅し、空には雲一つない青空が広がっていた。……さっきの嵐が嘘みたいだなぁ。


 水たまりを避けながら、俺はゴンドラに向かう。


 目指す場所は武具店。この街を訪れた初日に行こうとして進路を大きく崩されてしまった場所だ。


 まだ湿っぽさが残る席に腰かけ、船を動かしてもらう。


 しばらくすると、前方からゴンドラの姿が。


 ……嫌な予感しかしない。


 思わず作ってしまった怪訝な表情で、俺はそっと近づいてきたゴンドラの中を覗いた。


 けど、そこには二人組の男は乗っていなかった。


 良かった、さすがに避難したらしい。


 安心してゴンドラを見送り、先に進んでいく。


 ――コツン。


「ん?」


 何か船の先端にぶつかったような?


 気になったので、顔を傾けて覗いてみる。


 ぷかり、と何か浮かんでいた。それは鉄の帷子だった。そしてもう一つ簡素なパンツ。革のブーツ。


 ……つまり、プレイヤーだった。ちなみに二人。


「…………」


 本来は助けるべきなんだろうけど、思考も体も動かなかった。


 ゴンドラはその人たちを置いて進んでいく。


 俺は後ろを振り返り、その小さく変わっていく姿に、


「(ビシッ)」


 気がつけば、敬礼を送っていた。


 同じ男として、何か感じ取ったのかもしれない。


 そんなドラマを超えて、無事に船着場へ到着。


 嵐の影響のためか、露店となっている武具店の前にプレイヤーの姿はなかった。


 店主に話しかけ、メニューをもらう。


 画面端に設けられたスライドを下に動かし、並べられた武具に目を向けていく。


 そして、目当ての商品の名前を見つけた。



【チャクラム】ランク:F

効果

・ATK+9

・『10%で流血』

①投げると、装備したプレイヤーの元に返ってくる。②《投擲》スキルのレベルが上がるごとに飛距離が伸び、遠いほど威力は落ちる(ちなみに手で持った状態での攻撃威力は最大飛距離と同じ)。③地面に落ちると武器ポーチから外れ、ドロップアイテムとなる。



 あれ、効果が一つ増えてる。


 そういえばチャクラムって聞いたことがあるな。確か外側に刃がついていて……もしかしたら、ブーメランにも種類があるのかもしれないな。


 さて。この武器だけど、今利用しているブロンズブーメランと比べると攻撃力が高く、効果付きだ。それにお金はまだ十分にあるので普通に買っても問題ない。

 …でも、うーん、ブロンズブーメランはナギにもらった物なんだよな。買い換えてしまうのはちょっと悪い気がするような。けどそんな風に考えていたら延々と武器を変えることに躊躇しちゃうよなぁ。


「……あ」


 不意にこぼれ出した声。


 だがそれは、俺の口から出たものじゃない。


 隣に立っていた長身のプレイヤー。暑い鎧に全て隠されていて、どんな容姿かは分からない。けど醸し出される威圧感から、ゴツゴツとした屈強そうな見た目を想像させる。


 その姿に、俺は見覚えがあった。


「……先日はウチのが失礼した」


 ガシャンと重い音を立ててこちらに頭を下げてくる鎧さん。


 見た目は怖いけど、良い人なのかもしれない。


「い、いえいえ……」


「「うおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」


 この街に来て何度も聞いた歓声。


 見れば、通路の先からプレイヤーたちの姿が。


「……チッ、もう出てきたか」


「マタタビのサブリーダーだ! 鉄壁がいるぞ!」

「おーい! 俺もメンバーに入れてくれー!」

「あ、あの女の子! 百獣の仲間じゃねえか!?」


 ま、マズい! 照準が俺にも!


「……こっちだ」

「わっ」


 硬い腕に持ち上げられ、裏路地に連れていかれる。


 ……この街に来てからいつも攫われてるなぁ。


 そんなことを冷静に考えられるようになった自分がいた。


申し訳ございません、ステータスにミスがありました! 修正をさせていだきます。


【修正前】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【スキル】

《ブーメランLv12》《クライミングLv1》《料理Lv1》《調合Lv4》《筋力Lv4》《裁縫Lv14》《釣りLv1》

【バースト】

《ブーメラン》

Lv5:『ウィンドエッジ』

Lv10:『リフレクト』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【修正後】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【スキル】

《ブーメランLv12》『《投擲Lv12》』《クライミングLv1》《料理Lv1》《調合Lv4》《筋力Lv4》《裁縫Lv14》《釣りLv1》

【バースト】

《ブーメラン》

Lv5:『ウィンドエッジ』

Lv10:『リフレクト』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ブーメランの説明に、《投擲》スキル、とあったのですが表記していませんでした。

追加をさせていただきます。


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