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白ウサギのVRMMO世界旅  作者:
 【第二章】白ウサギと海と男たちの青春
33/94

32.裁縫スキル

『ガルルガァ!』


 唾液を撒き散らしながら、一体のMOBが眼前からこちらに向かってくる。



【バーサクウルフ】【Lv5】



 薄い緑色の毛皮を持つ、狼の形をしたMOB。


 普通の狼でも怖いのに……こいつはさらに身体が巨大なだけでなく、目付きも鋭くて怖い怖い。


 でも、何度か向き合っていれば、


「ふっ!」


 逃げずに、立ち向かえる。


『ガブガァッ!?』


 真っ直ぐの突進を避けられ、ガラ空きの横腹にブーメランを叩きつけられたバーサクウルフは、頭上のHPを減少させながら叫びを上げた。


 俺は怯む敵に、間髪入れず今度は近距離からブーメランを力任せに投げつけた。



 ――《ブーメラン》Lv.UP!



 直後、ブーメランのスキルレベルが上がった。


 続いて先ほどよりも鈍い音が響き、バーサクウルフは声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちる。


 そして、その姿を消滅させた。



【バーサクウルフの毛皮】ランク:F

効果

ーー



 ドロップアイテムを、一つ入手した。


「よしっ!」


 そのアイテム名を見て、俺は両手でガッツポーズを取るしかなかった。


 実は、ずっとこの素材が欲しかったのだ。


『一望の丘』と呼ばれるこの場所から俺は駆け出すと、隣接する都市であるビルディックに入り込んだ。


 その中にある施設の一つ『裁縫屋』に足を運ぶ。


「いらっしゃいませ」


 入り口に立つ、布製のワンピースを着込んだ店員NPCの言葉に、俺は会釈して応える。


 店内には俺以外にもプレイヤーが数名おり、それぞれがミシンや裁縫道具が置かれた台の前に腰掛け、作業をしていた。


 ここは『フリーポイント』といって、普通は対応のセットを購入しないとできないこと(料理や調合など)を利用できる施設になっている。


 俺もまた、作業台の前に座る。


 直後、ウィンドウが眼前に出現した。そこには空欄の項目が表示されている。そこに触れてみると、もう一つ別のウィンドウが隣に姿を現した。見ると、そちらには自分のアイテムポーチの中身が映っていた。


 ……確か、アイテムポーチから選択したアイテムの名前が項目に表示されるシステムなんだっけ。


 俺は公式サイトの『作ってみよう!』という初心者ページに書かれていたある装備の内容を思い出す。……ええと【フワリンの羽】が二つと【バーサクウルフの毛皮】が一つ、で……決定!


 ――ぽんっ。


 決定マークをタップすると、軽やかな音と共に一枚の布が台の上に出現した。


 それは浅い緑色で、形は小さな正方形だった。表面に点線が刻まれており、それは仄かな光を放っていて、場所が分かりやすかった。


 このタイプはミシンで点線を辿るように縫って、ズレが少ないほど成功率が高くなるんだっけ。


 とりあえず、やってみよう!


 俺は予め準備されているミシンに布をセットし、表示されたウィンドウの開始マークをタップ。


 トトトト……、とリズミカルな音を立てて、ゆっくりとミシンの針が布を飲み込んでいく。


 やはりまだ初心者用のレシピだからか、点線は一直線だし距離も短い。簡単だ。



 ――スキル《裁縫》を取得しました。



 手に入る裁縫スキル。

 続いて、



【旅人の服】ランク:F

効果

DEF+5



 ――できたっ!


 俺は手元に出現した防具を見て、グッ、とガッツポーズを取った。単純な作業だけど、やっぱり成功すると嬉しい!


 ……さてこの衣服、皮、という性質は今の装備と変わらないが、厚みが増している。色は浅い緑。首元から背中に向かってフードが垂れていた。


 早速、ウィンドウを開き武具ポーチを開く。今着ている皮の衣服と旅人の服を取り替える。


 物体化させて現実のように実際に着たり脱いだりすることで装備を変えることもできるが、武具ポーチから操作することで、一瞬にして衣装を変更させることができる。


 早速近くに立てかけられた鏡で確認してみると、新しい衣装になった自分の姿があった。


 着心地は初期装備とさほど変わらないけど、何だか新鮮な感じがするなー。


 何気なくフードを頭に被り、ふんふ〜ん、と良い気分に浸りながら、俺は裁縫屋を後にする。


 次に訪れたのは、NPCが経営する武具屋。


 カウンターの中にいる中年の大男に話しかけると「らっしゃァい!」と、野太い声と共にウィンドウが表示される。


 その野太い声に、筋肉質な身体といい『あの人』のことを思い出すな。……そういえば、まだ助けてもらったお礼を言ってないや。


 今度会ったら感謝しよう、と考えながらウィンドウに並んでいる商品に眼を通していく。


 その中には、先ほど作成した旅人の服もあった。

 価格は600ゴルド。


 ……いやぁ、続きの大地でフワリンを倒しておいて良かった。今の持ち金は、恥ずかしながら100にも届いていない。でも素材のお陰でお金をかけずに防具を、そして新しいスキルも取得できた。


 っと、考えがそれちゃったな。俺の目当ては新たな武器だった。



【ブロンズブーメラン】ランク:F

効果

ATK+7

①投げると、装備したプレイヤーの元に返ってくる。②《投擲》スキルのレベルが上がるごとに飛距離が伸び、遠いほど威力は落ちる(ちなみに手で持った状態での攻撃威力は最大飛距離と同じ)。③地面に落ちると武器ポーチから外れ、ドロップアイテムとなる。



 そう、今より強いブーメランだ。


 一望の丘のMOBは、初心者用の武器でも難なく倒せるが、さらに奥のフィールドではさすがに武具を強化させないと厳しい、と。先日、ビルディックの入り口広場で小耳に挟んだ。


 本来はゆったりと旅をすることが目的だけど、そのためには強くならないと!


 ……でも、お金が足りない。まずは金策かぁ。

 とりあえず、今日は時間なので落ちよう。


 明日からは金策を頑張るぞー!



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