天才は忘れたころにやってくる
二十九連勝だってよ!
もちろん藤井聡太四段のことだ。
史上最年少プロ棋士で、デビューしてから負け知らず。しかも連勝記録を更新中なんて、まるでマンガの世界である。
あっ、まてまて!
もし、こんなストーリーをひっさげ、マンガ編集部に持ち込んだら「リアリティがない! もっと現実的な話を!」と一刀両断されるだろう。
そのくらい非現実的な出来事なのだ。
彼の活躍を見て、全国の将棋ファンの親は「うちの子も……」なんて考え、英才教育を始めているだろうか?
もしそうなら、「おやめなさい」と言いたい。
藤井四段は千人に一人、いや一万人に一人、いやいや百万人に一人の特別な才能の持ち主だから、ああなったのだ。
今まで将棋では羽生善治が天才、と言われてきた。
その天才が、今や二人になってしまった。
これは驚異的なことだ。
ひとつのジャンルに、同時代に二人も天才が現れるなんて、そうそうないことだ。
それでちょっと考えた。
将棋や囲碁、チェスの名人というのは数学手才能があるそうである。
もし藤井四段が将棋に行かず、数学の才能を必要とする分野に進んだら、どんな活躍をしただろう。
うーんと、やっぱプログラマーかな?
ぼくらは一人の天才棋士を得た代わりに、一人の天才プログラマーを失ったのかもしれない。
と思ったんだが、別の見方もある。
テレビで見る藤井四段を見ると、きわめて集中力がある人間のようだ。というより何かに興味を持つと、周りが見えなくなるほど精神を集中する性格、といったほうが良いだろう。
これってオタクそのものじゃないのか?
もし彼が将棋に出会っていなかったら、立派なオタクになっていたかもしれない。
そうなったら今頃「藤井君ってなんかキモイ」と女子に嫌われていたりして……。
良かったねえ!
将棋に出会えて……。
これからの健闘を祈ります。




