旅する都市
最近SFっぽい記事を書かなくなって「タイトルに偽りあり!」、と言われそうなので今回はちょっとだけSFっぽい話にする。
SF作家は、都市が移動するというイメージがお好きなようで、いろんな小説に移動する都市のイメージが出てくる。
古くはジェイムズ・ブリッシュの「都市」シリーズ。
架空の理論「スピン・デイジー効果」により反重力が可能になった未来。都市に反重力装置を組み込み、宇宙に人類が飛び出すシリーズを書いていた。
都市ではないがフィリップ・ホセ・ファーマーの「緑の星のオデッセイ」では、草原を移動する島が出てくる。その島はどうやら人工物らしく、移動する都市の親類といってもいいだろう。
クリストファー・プリーストの「逆転世界」という小説では、延々と続くレールの上を移動する都市が出てくる。この都市、ただの移動都市じゃないんだが、ま、それは読んでのお楽しみ。
ズバリ「移動都市」というタイトルのシリーズもあるぞ。
作者はフィリップ・リーヴ。
内容は移動する都市がお互いの覇権をはりあい、何と都市が都市を襲い「食って」しまうのだ!
全体にスチーム・パンクの雰囲気があって、これ宮崎駿監督がアニメ化したらいいのに、と思ってしまう。
ぼくのお気に入りの作家、バリントン・j・ベイリーの「禅銃」にも草原を移動する都市が出てくる。だけど、あまり活躍しないんだな……。
ちょっと変わったところでは「太陽の中の太陽(気球世界ヴァーガ)」。作者はカール・シュレイダーで、早川書房から出ていた。
巨大な気球状の世界で、その中は無重力状態になっている。住民にとって、重力は贅沢品で、貴族だけが重力のある暮らしを維持できる。遠心力による重力を普段から体験している貴族たちは、無重力に暮らす貧民にくらべ筋力が強く、そのため上位にいられるという世界だ。出てくるのは浮遊する町と、木造の飛行戦艦。これまたスチーム・パンクっぽい世界だ。
どうもぼくは、スチーム・パンクには目がないからな。
移動する世界といえば、都市ではないがR・A・ハインラインの「宇宙の孤児」ってのがある。
巨大な移民宇宙船が、世代を越えて地球以外の星を目指すのだが、内部の住民は今住んでいる世界が、宇宙船だとは知らない。その中で、掟に縛られた暮らしを余儀なくされる。
巨大な宇宙船といえば日本の半村良も「虚空王の秘宝」というのを書いていた。何とその宇宙船は、東京の練馬区と同じくらいの大きさがあった!
残念なことに、これ未完なのよ。
小説以外で映画なら「宇宙空母ギャラクティカ」だろう。
ここに出てくる宇宙船は、巨大で都市の住民が移民のために乗り込んでいる。これも移動する都市、のひとつに考えてもいいだろう。
ひとつの世界が丸ごと移動する、というアイディアなら「スペース1999」というテレビシリーズがあったな。
地球の衛星の月が、核爆発の衝撃で地球から離れ、宇宙を彷徨いだすってストーリーなんだけど、ちょっとこれ、無理あるよね。
惑星を動かすのなら、東宝の特撮映画で「妖星ゴラス」というのがあった。
ゴラスと名付けられた星が太陽系に侵入、この星の軌道が地球と交差し、地球はこの星に衝突する!
それで地球がとった作戦が「地球移動作戦」!
南極にロケットエンジンを並べ、地球を動かしてしまうんだぜ!
このイメージにほれこんだ作家の山本弘氏が、「地球移動作戦」といタイトルで小説を発表している。
移動する都市、というテーマで思いついたことを書いてきたけど、他に何かあったかな?
これだ! というのがあったら、ぜひご一報を。




