ナウシカの謎
最近「空想科学的」なことを書いていないので……。
いや……。
そもそも空想科学なことを、書いたことなかったんじゃないか?
こりゃ、タイトルに偽りあり、といわれそうだな。
ということで、今回はそれらしいことを書くぞ!
えーと、みなさん「風の谷のナウシカ」というアニメを見たこと、ありますか?
言わずと知れた、宮崎駿監督の長編劇場アニメだ。
もともとは「アニメージュ」に連載されていた同名のマンガが原作で、マンガのほうは全七巻という長大なストーリーになっている。アニメとマンガでは、設定に少し違いがあり、ストーリーもかなり違いがある。
主人公の性格も、やや違っていて、マンガのほうはかなり過激な性格付けになっていた。
ともかく日本マンガ史上、特筆すべき傑作なのは確かだが、ちょっと気になることがあった。
というのは、この世界には「腐海」という場所があり、そこでは一息吸い込んだだけで、即死する毒の大気が充満するジャングルだ。腐海には無数の虫が棲息し、人間の侵入をこばんでいる。
腐海には「王蟲」という巨大なダンゴムシのような生物が君臨している。
この王蟲といい、空中を飛ぶ大王ヤンマといい、すべての虫がデカい!
数億年前の石炭紀には、全長数メートルという、巨大な虫が棲息していた。この頃は、地球の大気は酸素濃度が高く、巨大な昆虫も生きていられた。が、徐々に酸素濃度が低くなると、巨大な虫は酸素を十分、取り込むことができず、絶滅してしまった。
人間との対比で、子牛ほどの大きさの虫が、楽々と空中を飛行する。
あんな小さな羽で、どうして飛べるんだろうと思う。
さらに主人公のナウシカや、ナウシカの武道の師範であるユパなど、忍者のように素早い動きで、身長の何倍もの高さまでジャンプする。
アニメ(漫画)の強調だといえばそれまでだが、もし、ああいった描写に、納得いく説明ができたらどうだろう?
本当にナウシカは、助走なしで数メートルの高さに飛びあがり、オリンピックの体操選手でも不可能な技を可能にしているとしたら?
腐海は地面の毒素を結晶化させ、清浄な空気を作り出す役目をもっている。アニメではこの腐海の機能が未来への希望として描かれていたが、漫画版では、この世界で生きる人間は、毒素の大気に生きるよう作り替えられていて、清浄な空気の下では生きられないらしい。したがって腐海がすべての毒素を無害なものにしたら、この世界の人間は絶滅してしまうらしい。
「虫だけではなく、人間もまた変えられているのだ」
ナウシカに向かい、古代の知識を守る存在はそう告げる。
としたら……。
作者の宮崎駿が、「ナウシカ」のストーリーを創造するとき、多分、ヒントにしたんじゃないか、と思われるSF小説がある。
それはブライアン・W・オールディスの「地球の長い午後」という小説だ。
想像もできないほどはるかな未来、地球の自転はとまり、月には巨大な蜘蛛が蜘蛛の巣をはりわたし、永遠に太陽に向かっている昼の半面にはジャングルが繁茂している。
人類はかろうじて生き残っているが、その姿は大きく変化し、今の人間の半分ほどの身長しかない。
この世界で支配者になっているのは、進化した食虫植物だ。さまざまな食虫植物が、絶滅した動物の代わりに食物連鎖を作り出し、人間はそれらの植物の獲物になっている。
どうです?
なんか「ナウシカ」の世界観を思い起こす設定じゃないですか!
もしナウシカたちの身長が、本当は一メートル以下だとしたら?
すべての人間たちが、今の人間にくらべて、半分以下だとしたら、巨大な虫の存在も、ある程度うなずける。
体が小さければ、体重と比例して、筋力の効果は二乗で倍増する。遺伝子をそのように操作して、ナウシカの時代では、人は我々と比べて、驚異的な体技を披露できるのだ。
さらに体格が小さければ、少ない資源で維持できる。なんでも、人間の理想的な体格は、身長百四十センチ前後であるべきという理論がある。人間は、直立歩行することに十分に進化しきっていない、という説があるからだ。実際、人間は直立歩行することで、さまざまな内臓の疾患をかかえることなった。もし人間の遺伝子を操作するのなら、体格も変化したのではないか。
だいたい、あの作品で「虫」と言われている生物が、ぼくらの知っている節足動物とはかぎらない。外見は似ているが、多分、その内部は別物の可能性がある。
王蟲にいたっては、テレパシー能力で仲間と語り合うし、想像を絶する高い知能を思わせる。
どうです?
ちょっと面白い説とは思いませんか?




