メル・ブルックスという才人
質問! あなたは映画は字幕派だろうか、吹き替え派だろうか?
ぼくはどっちでもない。
字幕で見るか、吹き替えで見るかは、キャスティングされた声優か、あるいや内容で決める。
なんでこんなこと書くかというと、今回取り上げたいのは「ヤング・フランケンシュタイン」という映画についてだからだ。
監督はメル・ブルックス。
コメディ映画の巨匠で、ぼくの好きな監督だ、
「ブレイジング・サドル」「新サイコ」「珍説世界史partⅠ」「サイレント・ムービー」「スペース・ボール」などなど。
で「ヤング・フランケンシュタイン」だが、ぜひとも吹き替えで見るべきだ。
主演のジーン・ワイルダーの声を吹き替えているのは広川太一郎で、ほかに熊倉一雄などそうそうたる声優陣が出演している。最初、DVDで販売されたときは、吹き替えなしの、原語音声のみが収録されていたが、たぶん、この映画のファン(特に広川太一郎ファン)から吹き替え版の発売を要請されたんだろうな、と思う。
広川太一郎節炸裂で、ファンにはたまらない仕上がりとなっている。
いや、広川太一郎だけじゃなくて、映画の内容も面白い。
要するに、「フランケンシュタイン」という英国、ハマー・プロ制作映画の、パロディだ。
とはいえ、オリジナル版を知らなくても、じゅぶん、楽しめる。
すぐれたパロディ映画とは、オリジナルを知らなくとも、楽しめる、というのがぼくの考えだ。
とくに「フランケンシュタイン」という映画、登場するモンスターの造形は有名だし、いろんな映画で、引用されているから、オリジナルを知らなくとも、イメージは通底しているといっていい。
で、ストーリーなのだが、オリジナルでモンスターを創造したフランケンシュタイン博士の孫が主人公で、祖父の残したメモを手に入れ、自分もモンスターの創造に取り掛かる。
あっ! もしかして、フランケンシュタインというのを怪物の名前だと思ってます?
映画に出てきた怪人、原作では「モンスター」「怪物」とのみ呼ばれ、とうとう最後まで名前がないままで終わる。
ところがこっちのモンスターは……。
それは見てからのお楽しみ。
とにかくこの「ヤング・フランケンシュタイン」という作品、あらゆる箇所にパロディが挿入されているので、油断ができない。何より嬉しいのが、ハマー・プロ制作の「フランケンシュタイン」そのままのセットを再現していて、オリジナルへの尊敬を感じさせるのがよい。
メル・ブルックスという監督は、笑いに貪欲で、ややクドイと感じさせるのが、人によっては好みがわかれるかもしれない。
ぼくは好きだけどね。




