イテテテテ……! 映画の話
最近「痛い!」ビデオを見てしまった。
タイトルは「ゼロの未来」。監督はテリー・ギリアム。
テリー・ギリアムといえば「未来世紀ブラジル」とか「バンディットQ」とか「バロン」とか、様々な問題作で有名だが、本人は結構「痛い」人らしい。
その「痛い」監督が「痛い」主人公で映画を撮ったのだから、その映画は最高に「痛い」ものになっている。
いやあ、本当に「痛」かった!
というわけで、今回は「痛い」主人公が活躍する映画について少々、考察しよう。
まず最初はトム・ハンクス主演の「大迷宮」!
制作は1982年、アメリカ。
えっ、あのトム・ハンクスが「痛い」主人公ってどういうこと? と思ったあなた、安心してください。この映画のハンクス、本当に「痛い」キャラになっていますから。
もともとはテレビ作品として制作されたらしいのだが、出来が良かったので映画館公開となったのは、スピルバーグの「激突!」と同じ経緯。
主人公は大学を中退し、別の大学に入り直したロビン青年。かれが大学を中退した原因となったのは「メイズ・アンド・モンスター」というテーブル・トークRPG(以下TRPGと略)。この「メイズ~」というゲーム、明らかに当時はやった「ダンジョン・アンド・ドラゴン」を意識している。これをやりすぎて、学業がおろそかになってしまったのだ。
ロビンは決意する。
「もう二度と、ゲームに夢中になって、学業をおろそかにするもんか!」
ところがこのTRPGに夢中になっている連中は、この大学にもいた!
その連中にさそわれ、ついつい、ゲームに参加してしまうロビン。
そのうち、大学の寮ちかくに、廃鉱山があって、その廃坑がダンジョンそのものだということになり、その中でTRPGをやればリアルじゃね? と全員、悪ノリしてしまう。
ところが、これがロビンに精神的なダメージをあたえ、ロビンは現実と空想の区別がつかなくなる。
放浪のあげく、ニュー・ヨークでロビンは「二つの塔」を見る。
当時、健在だった貿易センタービルだ。
ビルの屋上から飛ぼうとするところを、仲間たちが発見、あわや! というところを救われる。
なんでも実話をもとに作られた映画だそうで、現実を見失い、空想の世界へ逃避してしまった主人公の悲劇が語られる。
じつに「痛い」キャラクターではないか!
次に紹介するのは1986年制作の、オーストラリア映画。
「マルコム~爆笑科学少年~」だ。
この邦題、どうかと思う。配給会社は喜劇映画として売り出したかったのだろうが、内容は喜劇的要素はほとんどない。
主人公のマルコムは鉄道オタク。タイトルに「少年」とあったが、映画ではどう見ても三十手前くらいに設定されていて、とても少年には見えない。
が、このマルコム、鉄オタで、童貞。他人とまともに話すことができず、口からついて出るのは、鉄道のことばかり。近くに住む幼馴染の女の子から、愛を告白されても、薄ら笑いを浮かべてえんえんと、鉄道の話をつづけるばかり。
い……痛えっ!
内容は、このマルコムの住処に泥棒チームが同居して、マルコムの科学知識を利用して銀行強盗をなしとげる、というストーリーになっている。
で、最後に冒頭の「ゼロの未来」という映画。
主人公コーエンは天才的なプログラマー。
上司から「ゼロの定理」と呼ばれる数式を解くよう命令され、プログラムと格闘する。
このコーエンという男、とにかく他人と触れ合うのが苦手で、会話の時は自分を「われわれ」と呼称する。
映画が進むと奇妙な仮想現実(VR)スーツが出てきたり、ギリアム作品でおなじみの奇人、怪人が登場するし、いかにもテリー・ギリアム映画となっている。
ちょっとネタバレになってしまうが、ひそかに愛をいだいていた女から告白されても、拒否してしまうし、とにかく他人とまともに会話ができない不器用な男が、このコーエンという男だ。
最後はコーエンは、仮想現実の世界へ逃避してしまう。
最初から最後まで、ぼくは「痛たたたた……痛いよう!」と思いながら観ていた。
まあ、ぼくもコーエンと似たようなもんだからなあ。
で、特に言いたいのは、映画の途中、コーエンが「ゼロの定理」を解くために、プログラムを組む場面。
これ、ぼくの「電脳ロスト・ワールド」の主人公、客家二郎のプログラムを組む場面そのままなんだ。
うひゃあ!
ギリアム監督の発想と、ぼくの想像が偶然、同じになってしまった!
まあ偶然だとは思うけど、ちょっと自慢したいんで、わざわざ書きました。
興味のある人は見比べてください。




