この世は未知で出来ていた
この世界に来てまだ一日と経ってはいない。
空はまだ青く雲も流れている。
まぁ、頭の違和感なら直ぐに慣れると信じておこう。
さて、ある意味精霊石の問題は解決した、と思う。
他の道具もキューイに訊ねたが、キューイにも分からないそうだ。
「すいません。お力に成れず。」
「いいよいいよ。一つでもわかった事だしキューイは十分力になってくれたよ。気にする事じゃないさ。」
「...そう言っていただけるとありがたいです。」
苦い顔で誤って来るのでそこは押えましたとも。
一つでもこの鞄の中身を知ることが出来たのだ、成果は十分。
...精霊石の中身がまさかこんなひy....ではなくピコだったとは、伝説の石なんだよね?
あの有名な〇者の石も泣くぞ?あれも割れたらこんな生き物が出来てたら所有者泣くよね?
寧ろ引く。
石の中に封じ込められてました!とかだったらまだわかる気もするけど、百歩譲ってもこいつは違う。
断言できる。何故かだと?そんなもの私の脳髄が語っているからだ。
「生前の私の荷物はきっといつか分かるとして、今はこの大陸から出ようか。キューイ。ここから一番近い大陸はどの方角に位置している?」
「そうですね...。一番近い大陸は北北西に位置する狼ですが、今あの大陸は反乱が起きていますので危険です。」
「まじか。そんな紛争に巻き込まれたら私は死ぬ。もう少し落ち着いた大陸は無いかな?例えば虎とか、竜とか。」
「ダーギストはマーテス随一大きな大陸でもあり、お祭り好きな大陸で王の気まぐれで大陸中がお祭り騒ぎになることだって珍しくないそうです。」
「大丈夫かその大陸?!破天荒な王だな?!」
お祭り好きってどこの人間だよ?日本人も祭り好きだが、大陸総出で成るとある意味不安だ。
お前ら300年前はどんな国だったよ?変わって無かったら怖いよ?まじで怖いよ?
「え...えぇえ。じゃ、じゃあエルドはどうなってんだ?ここも何かあるのか?」
無いことを祈ってる。しかし、ここで何もなかったら逆の意味で不安になる。
「エルドは...。300年前のヌーマの涙以降大きな竜巻に大陸ごと閉じ込められ...300年たった今でもその竜巻の所為でエルドに近づく事さえ出来ません。」
「恐るべきヌーマの涙。この世界も相当深手を負ってるんだな。」
地球でも竜巻やら隕石やらはあった。
しかし、、、大陸一つ300年たった今でも残ってるとは...まるで何かの呪いみたいだ。
「ふむ...エルドには落ち着いたら行ってみたいな。どのような状況になってるのかこの目で見て確かめたい。...となると残る大陸はあと二つ。」
馬と山羊のみ、紛争やら自然災害やらお祭り好きやらは勘弁してほしいものだ。
「ではアコリスはどうでしょうか?此処からだと北北東の位置にあり、大陸もダーギストの次に大きいと言われ、気候も穏やかでのんびりした大陸だと聞いています。」
「良いね。で、其処に行くにはここから何日かかる?」
「歩いて10日は掛かりますが、どうでしょう?」
十日、、、大分距離がある。
しかも移動手段は足。
きっと海を渡らなければならないんだろうな...ちっ船でもあれば助かるのに。
贅沢は言えないが船くらいは欲しかった、いや筏でもこの際だから良い。
「海を渡るのかぁ~...食料と水が必須だしこの森に生えてるかな?」
殺人植物が徘徊するこの鳥。
見た目はおいしそうだけど、実際は食虫植物みたいでワイルドです!だったら嫌だ。
何かないか、、、何か、、、。
「あの、マスター?この世界にはもう海はありませんよ?」
キューイの発言に唖然とする私。
海が無い?え?
「もうない?まさかの過去形ですかいな?」
「はい。ヌーマの涙により海は浄化され、今はもうありません。」
ななななななってこった!!!
ヌーマの涙恐るべし!いろいろやってくれるじゃないか!
しかも蒸発じゃなくて浄化ときたよ!やんちゃにも限度があるでしょうに!
「海にいた生き物たちは一体どうしちゃったの?!絶滅か?!」
「いいえ。絶滅はしていません。ヌーマの涙は海を浄化し、海の不純物を取り除き、そして生き物を空へと追いやりました。」
空…空ってあの空かな?
上を見上げても生き物なんてみえないし、飛び魚が空に進出?!とかなのかな?
空に追いやられた生き物たちは不憫だよなぁ...。てか本当にいるのかな?
いるとしてもあいつら浮かんでるんだよな?まじでどうなってんだこの世界。
「でもキューイ?そんな影一切見えないよ?」
「地上から見えないのは当然です。彼らは雲の中に居るのですから。」
「...。」
まさかの雲の中ですか。
そりゃ見えんはな。ある意味逞しいなこの世界の生き物たちは。
ヌーマの涙の所為で海に居られなくなって空に追いやられたっていうのに生き残るとは、称賛したい。
私も逞しく生きていたいものです。まだ死にたくないからね。
「でも曇の中にいるとしても、雲は生きられる場所じゃないだろ?中はどうなってんだ?」
地球では雲を水の粒だの空気中の塵だの言ってた気がするけど、とても生き物が生きて行くための場所ではないことは分かる。
まさかあれか?メルヘン的な感じで雲は触れるし、メチャクチャふわふわしてて柔らかいベッドの様なの~、か?!
昔の私は雲は触れると思ってたけど、今はちょっと無理だし現実を見たい。
いや、しかし、、、ゲームでは雲に乗ったり雲のダンジョンがあったり雲の敵と戦ったり、、、。
あぁ...可能性は無きにしも非ずって所なのか?うわぁ...どうなんだろ?
「雲の中は海と似ているんです。ヌーマの涙は海を浄化したと言いましたが、実際は海にとって不必要だと思うものを空に追いやっただけで、それが雲と融合して雲は海の様な存在へと変化しました。」
「え、、、と?」
「簡単に言えば、雲は見た目は雲ですが中身は海、という事です。」
「・・・・じゃぁ、曇って液体なのか?」
「はい。液体です。」
なんてこった、、、。
まじで、なんてこった、、、。
世界は広いと誰かは言うが、正しくその通りだよ。
ってか、広すぎて圧倒されるわ。
触れられないけど、触れるよ。
雲が海になったってことなのか?まじでヌーマの涙恐るべし。
お前本当に怖いな。
天変地異ってやっぱり怖い!
緑化運動本気で考えようかな?!
300年も経過してんのにその傷跡残していくとかまじでお前は素晴らしいね?!
恨みでもあったのか?!泣くほど恨んでたのか?!
「じゃあ、浄化された(元)海は今どうなってるんだ?」
「それは...見たらわかりますよマスター。」
キューイが教えてくれない。
でも待てよ...見たら直ぐに分かるほど変化したってことなのか?
腐海してますとか、色が紫ですとか、毒で出来ていますとかだったらもう積んだ。
しかしそれではこの国を、大陸を出れない。
何があると言うのだろうか?
「見たら分かるのなら、今すぐ見に行くか。善は急げだ。この大陸を出ようか、キューイ。」
「分かりました。」
おしゃべりの時間は長かったが、私の頭で寝ているヤキトリはすやすや眠っている。
てかこいつ何食べるんだろ?そして一番の問題は...アレだ。
私の頭の上でアレなんかしたらこいつ本当に焼いて食うか?
今は寝てるからいいけど、一番の問題...不安要素はまだとれていない。
「あ、でもこの樹海を抜けなきゃいけないんだよな...また死ぬ目に会わなきゃいけないのか。ガクッ。」
肩が下がる。あの殺人植物にまた食われかけるのかな私?
「ご心配無用ですよマスター。マスターを死ぬ目等に合わせません。」
「キューイ...。」
思わずポロリと泣けてきそうじゃないか。
本当になんて良い娘なんだキューイは...。
危うく落ちかけたほど男前な発言だし、見た目は良しだしallオッケーじゃね?
見た目は男、中身は女な私ですが、これほどまでに頼れる美女は初めてです。
主人公悪いな...イベント沢山もらってます。
後で返せとか言わないで下さいよ?絶対に返せるイベントじゃないんで。
「さぁ、行きましょうマスター。道なら熟知していますし、マスターに傷一つ負わせません。」
「......キューイ。私よりも男前だね?ちょっと泣きそう。」
「?」
「ううん。何でもない。じゃぁ樹海を攻略して山羊を目指そう。キューイも私を守ってくれるのは非常に有りがたいけど、まずは自分の身を守ることを最優先してくれな?」
ここはゲームじゃないので痛みは勿論ある。
恐怖だってもちろん感じる。
キューイが私を守ってくれる事はとても嬉しいし、何よりも有りがたい。
でもそれは自分の身を守れなければ意味が無い。
姫を守る騎士に自分を守る力が無くて一体誰を守ると言うのだ?
他人よりもまずは自分を守れ。
自己犠牲などもってのほか、私はゲームでも自己犠牲の技など一度たりとも使った事は無い。
キューイにも命に代えて私を守って欲しくない。命に代えたらそれは何も護ってはいない。
「だから、護ると言ったからには最後まで守って欲しい。キューイ。出来るね?」
「勿論です。貴方のそのお心確かに受け取りました。私の全ては貴方の思うが儘に...。」
「縁起でもない事は言わなくていいよ?!気持ちが分かってくれるだけで良いからね?!それ以上は求めていないから!ほんとだからな!」
「ふふっ、分かりました。」
こうして、地球から次元を超えて魂だけが肉体に宿った役立たず+300年前ヌーマの涙により滅んだ鳥の唯一の生き残りである姫騎士+伝説の精霊石から生まれたであろうピコ。
この世に二つとない複雑なこの一行の旅はこうしてここから始まった。
波瀾万丈とはいずれ…また。
なんという複雑なパーティー...吾輩も今まで見た事ねぇ...。
これからまたへんなのでてくんの?
……え?まじでか?
ということで、次回は無事?に樹海を脱出?します。
いやいやさせてみせる。
いくで!野郎ども!