こんな所で死んでたまるかぁああ!
え〜遅くなってごめんなさい。
以上!
後ろを振り返ってはいけなかった、と数分前の私(俺)は思った。
だって、そこには...。
「うぉおぉぉおおお!!!走れ私(俺)!生き残るためにも、こんなところで死んだらこの身体にも悪い!と言うか!食虫植物に食われました〜、なんて笑えねぇぇええ!!!」
です。
ザクザク植物切っていたのがダメだったのでしょうか?
いつの間にか私(俺)の後ろに5mはあるであろう食虫植物がそこにいたからだ。
気付いたら猛スピードでその場から逃げました。
しかし、食虫植物も腹ペコなのか全力で私(俺)を追いかける。
植物って走ると結構速い事を学びました。
戦えよ?!って思うでしょう?
でもあれは流石に無理!
初心者にはもっと優しくしてもいいでしょうに、いきなりあんな巨大植物を倒せというのがおかしい!!!
戦えっていうのならもっとマシな装備をつけておいてもいいでしょう!?
何だよサバイバルナイフとその他とか!
いきなりの死刑宣告ですか?!
寧ろお前が死ねっ!!!
って言える場合だったら言いたい...。
「うわっ!」
そうこうしている間に私(俺)は木の根に足を引っ掛けてしまい転んでしまった。
まずい、と思い急いで体を起こしたが案の定食虫植物の蔦に捕まった。
逃れられないよう手足はきつく縛られ、宙に浮かされた私(俺)の体はそのまま植物の口に運ぶ....ってちょ!いかん!食われる!
「いっ...!ちょ、待てそこの植物!私を食べても逆にお前が死ぬぞ?!落ち着け!いいか!人間なんて美味しいどころか吐くぐらい不味いんだぞ!?そんな生き物を食べようとするな!」
まぁ、私が落ち着けと言いたいが、状況が状況なので見逃して欲しい。
しかし、そこは植物。
話など通じる筈もなく、私(俺)はあと少しで口に収められる。
(こんな終わり方する人間ってもしかしたら私だけかもしれないな〜。)
二度目の走馬灯が見えそうです。
おぉ、母上先逝く私をお許しください...。
あ、そう言えばもう一回死んでるか...。
あっけない二度目の人生の終わりを私はただ皮肉に笑うしかなかった。
バクリッ!
モゴモゴモゴモゴ.........!!!
ペッ!!!!!
「ゴホゴホッ!おい、ペッはないだろお前!私に失礼だろうが!いきなり食べて直ぐに吐き出すとか喧嘩売ってんだろ!!!」
走馬灯が見えそうだったけど、食虫植物が私を飲み込んだ瞬間、奇跡が起きました。
消化さーれーるー。
と思ったけど、腰に巻いてあった袋が丁度緩んでくれたおかげで中身が出てきたのだ。
それに驚いた食虫植物は私を吐き出した、と言う訳ですが...危機的状況だというのは変わりないだろう。
目の前の食虫植物は敵意剥き出しで私を見下ろしている。
荷物のおかげで助かったとはいえ、もう同じ手は通じないだろう。
シャー!っと威嚇する食虫植物の口からボタボタと酸が零れる。
ヤベェ...私も危うくアレで溶かされてた...。
と思う程強烈な酸だ。
だって、地面抉れてるんだぜ?
アレで溶かされてたら一巻の終わりなんて優しいもんじゃなかっただろうに...。
今更だけど、恐怖が襲ってくる。
ゲームじゃない、現実の感覚。
身体が震える。
動こうにも身体は素直に動かない。
冷や汗がドッと出る。
それでも...それでも、私はこんなところで死ぬ訳にはいかない。
他人から見たらレベル1の旅人が中ボスに挑んでいる愚かなことかもしれない。
それでも、私は死ねない。
どんなことだろうと、どんな強敵に当たろうと私は死ぬ訳にはいかない。
だって、
「二度目の人生を他人の手で降ろされたくないし。」
誰かに殺されて死ぬなんてまっぴら御免だ。
だったら、最後の最後まで戦って、そんでもって潔く逃げたいね...。
「って、事で私は全力で逃げるけどお前はどうすんの食虫植物?私を追いかけるか?でも私はお前にはもう二度と捕まらない。どうするよ?」
食虫植物に問いかけてもあちらさんは襲ってくる気満々だ。
だったら、もうこれしかないな。
「ゲーム最強の選択!その名もNI☆GE☆RU!」
そして私は逃げた。
全速力でその場から逃げました。
あっはっはっは〜!
そんなまともな人間だと思うなよ?!
人生の約9.5割をゲームに注ぎ込んだんだ!
まともな性格してれば多分かっこよく立ち向かっていた...筈だ!!!
後ろからズドドドドッ!と言う追いかけてくる音は私の耳には一切入ってきません。
えぇ、もう後ろを振り向かない。
前だけ見て走ります。
いい言葉だね。うん。
樹海の中で食虫植物と命懸けの鬼ごっこをしてるの私だけだろうね。
これはもう歴史に残っていい。
やったね私。
しかし、走りながら思うけど身体が男で良かった。
体力あって良かった。
でなきゃ今頃あの殺人植物の栄養にされてたかもしれない。
神よ、私は今まであなたを疑っていたが、この瞬間は感謝する。
あと、装備もそんな重そうな装備じゃなくて良かった。
鎧とか着てたら速攻アウトだったろうな。
初期装備、ブッジョブ!
さぁ、私よ樹海を駆け抜けろ!
ここで死んだら私が許さん!
うぉぉおおお!!!
叫びながら樹海を駆け抜ける人間も私だけだろう...。
と、そこで私の身体は一気に浮遊感に襲われた。
また、殺人植物に捕まってしまったのかと思ったけどそうじゃなかった。
「やっと...やっと見つけました。私の主。」
掠れるように、祈り捧げるように。
でもその声はとても澄んでいて心穏やかになる。
そこで私は気づいた。
私の背中に抱きついている存在に。
あの水の中で眠っていたであろう少女が美しい純白の翼を広げ、私を支えていることに。
おぉ、勇者よ。
ここまで長い間わたくしを待ち続けた勇者よ!
次回はもっと長くなるでしょう!
それでも待ち続ける勇者よ...。
あなたはもう、伝説の勇者になりましょうぞ