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birthday・time  作者: 架世 凪鎖
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番外編 金国 湯空の話

湯空の過去編です。湯空の幼少期は全てひらがなで書いてあるので読みづらくなっています。少し暗めな話です。

母親視点


いつも通り遊んでた。

まだ3歳だったあの子はいつもと同じで羊の人形を片手に公園で遊んでいた。私も、目を離さないようにしてたつもり。

なのに、なんであんなことになってしまったのか、今でも分からないままだ。いつもの公園の帰り道、あの子は大型のトラックに轢かれた。血がたくさんでて、命が助かったのは奇跡だった。でも、あの子は目を開けなかった。医学に弱い私は後からあの子が植物状態になっていると分かった。



湯空視点


「かみさまって、いるのかな?」

「うーん、ちょっと分かりづらいなー、でも君はまだ生きてるからいつかそんな人に会えるかもね。」

「でも……はやくあいたいよぉ。かみさまにはやくわたしをおかーさんのところにもどしてって。」

「神様ってね、1人1人に願いを叶えさせるなんてやってくれないの。それに、神様が来ないのはあなたが強いから、神様が助ける必要がないの。お母さんは神様に祈ってたら神様も困っちゃうよ。」

「かみさまのけちんぼー。」

「でもね、神様は見守るのは、全員にやってることなの。私も、あなたも。それより、今日は数のお稽古をしよう?」

「もうたしざんもひきざんもあきたー。」

「うーん、じゃあ、もっと面白い掛け算、やってみようか?ちょっと難しいけど、やる?」

「やるやるー。かけざんやるー。」

「えーっとね、このバッテンの印が掛け算の記号よ。九九を覚えるのよ。」

まいにちがこのほんのたくさんあるへやで、さいしょはひとりでないていた。とらっくにひかれてから、おかーさんのないてるかおをさいごに、めをあけるとこのちょっともあもあしてるへやにいた。ちょっとしてからあのおねーさんがはいってきて、おもしろいことをおしえてもらってる。でも、たしざんもひきざんもなんかいやってもとけるようになっちゃってた。いま、かけざんってものをおしえてもらってるけどまたぜんぶといちゃったらおねーさんはいなくなっちゃうのかな?そんなのはいやだけど、わたしはくくをおぼえていく。



母親視点

もうあの子は3年も目を覚まさない。たった一人の私の子供、もう産めなくなった私の体は、あの子の手を握る事も出来なかった。骨は時間が掛かったけど、完治してる。でも、意識はまだ戻らない。ずっとこのままなのだろうか?

3年前のあの子の笑顔をおぼろげに思い出す。でも、段々ぼやけていく。

「湯空……。」

声をかけてもあの子は何も言わなかった。

神様、これは誰の罪なのですか?

私にですか?あの子にですか?

そう思いながら、私はまた仕事に戻る。

「誕生日プレゼントにはあの子の好きな羊のぬいぐるみをわたして……。笑ってる顔が見たい……。あの子が起きた時に一番に迎えられるようにがんばらなきゃ。」

私は仕事に向かう。真っ当な仕事で貯金を貯めて、あの子が起きたときにあの子が喜ぶ事をたくさんしてあげないと。



湯空視点

「ねぇ、なんでおねーさんはここにきたの?」

「う~ん、まぁ、内緒にすることも無いしね、私は教師をしてたの。でもね、私は夜遅く、自分で運転してた車にね、トラックが衝突したの。だからあなたと同じ。」

「きょうしって?」

「先生って言ったほうが分かりやすいかな?今みたいに人に物を教えるのが私の仕事。それより、連立方程式はおもしろい?」

「うん!!ちょっとむずかしいけど、といていくのはたのしいよ!!わたしじぶんのなまえもかけるようになったもん!!」

「ホント?嬉しいなぁ、私が学校で教えていた子供たちは皆嫌がっちゃって……。」

「こんなにおもしろいのにー。なんでなんだろうね?」

ほんとうにふしぎだった。おねーさんは、やしろぎかなたといって、「社木 奏多」って、書いた。

かんじもどんどんかけたりよんだりできてうれしかった。


母親視点

「だから言ってるだろう!!私の息子がこいつの臓器を移植すれば生きられるんだ!!」

「ですが……社木さんの意志も……。」

「親も誰もいないやつなんて生きてなくても同じだ!!それにもう8年も寝ているんだろう!!さっさとしろ!!私の息子なんだぞ!!手術できることを光栄に思え!!」

ロビーで、この病院に入院しているであろう患者のことなのだろうか?社木さんとは。

「私の息子は将来大物になる!!だから生かすんだ!!何も取り柄のない、息子より価値のない人間の命など知ったことか!!」

「で、ですが本人が脳死状態で、何も許可を取らずにほぼ全ての臓器を移植するのですか!?いくらドナーが見つかったからと言って!!」

「うるさい!!ドナーカードはあるのだろう!!ならやれるだろう!!」

「持ってないんですよ!!なんでそんな都合の言いようにデータを改竄するんですか?」

と、なにやら揉めていた。

もう8年、まだあの子は起きない。でも、あの子はもう死んでしまったなんてことは考えたことは一度もない。あの子の笑顔が見たい。それだけのために、私は毎日がんばっていた。

私はあの子がいい子に育つように虐待なんかしなかった。

あの子が本当に悪いことをしたら、しないように叱った。

だから、あの子にも嫌われなかったはずだ。

じゃあ、何であんな事故があったのかが分からなかった。

そう思うと、私はまた泣いていた。夫がいいひとで良かった。あの家族みたいに臓器を、命をただの道具として見るという人でなくて良かったとまた泣いた。

お母さん頑張ってるよ、だから声を出して慰めてよ、湯空。


奏多視点

「いたっ。あ、なんでもないよ。今日は三角関数やろうか。難しいけど分かると面白いよ~。」

「うん!!おもしろそう!!」

まずいな……。

まだ、全部この子に教えられていない。でも、この子はもう13歳だ。私が何もしなくてももう起きるだろう。けど……、私もあの親バカな男にあの息子への移植を強要している。せめて、湯空が起きるまで……耐えてくれ、私の意志。でもまさか身内の腹を切る医者がいるか?普通ならそうだが、今回は強引にやったからか。湯空には見えないだろうけど私の原の中は空っぽだと思う。せめて……伝えるんだ、教師として。

最後の生徒に。私の全てを、全ての思いを。


湯空視点

「ねぇ、湯空は恋って分かる?」

「う~ん、わからないよー。」

「じゃあ、あなたがお父さんとお母さん以外に心から甘えたいって人がいたら、その人に甘えるの。それが恋。でも、拒否されるかもしれない。そのときは甘えないようにしてまた探すの。」

「うん!!…………あれ?少し眠くなっちゃった。ずっと眠くなかったのに……。」

「私も添い寝してあげるから。寝てなさい。もしかしたらお母さんが一緒に寝てるかもしれないよ?私は多分もうあなたと一緒にいられないから。だから……、あなたは生きてね?

私よりも幸せに。お別れはつらいけど、しょうがないの。ここは生と死の間。あなたは生きて、私は死んじゃうの。お葬式はあるだろうし、お墓もできると思うからたまに訪ねてきてね?あなたには見えなくても頭を撫でてあげられるから。でも……湯空は私のことを忘れちゃう、ここのルールだから、お別れだね、湯空」


おわかれってなんで?おかーさんにあえるかもしれないって……。あれ?あのひとってだれ……なんだろう?きおくが、おねえさんのことがわからなくなっていく……いやだ、いやだよ。なんでわすれないといけないの?


そう思いながら、彼女は眠った。次に起きるのは現実だと分かって……。

 

母親視点

「本当ですか?!湯空が目を覚ましたって!!」

私は会社を早退して病院にむかった。

「湯空!!」

「おかーさん……。おかーさん!!」

私は涙を流している湯空に抱きついた。涙で目が霞む。

やっと見れたんだ、10年ぶりに。

あの子はせが120㎝と低く、年があまり変わってないように見えた。だけど、10年たったけど、私は湯空を抱きしめられた。何を見ていたのか湯空はこんなことを言った。

「やしろぎのおねーさんとずっとはなしてたの。おかーさんにあいたいっていってたら、それまでいろんなことをおしえてもらったの。やしろぎさんのかおがもういちどみたいの。ほんとうのおわかれがしたいの。」

「先生!!社木さんって……。」

「あぁ……。湯空ちゃん、お墓参りでもいいかな?」

「うん……。いいよ。」

向こう側でお世話になった人なのだろう。

私が湯空にしてあげることの一回目は墓参りだった。


奏多視点

「はぁ、まぁ、もとから私は死んじゃうのは分かってたけど、ちゃんと湯空は悲しまないでいけるよね?一人ぼっちじゃなかったから。あー、にしても湯空は神様だけに願ってたけど、私は天使に願ってたな。悪魔に願いを壊されたけど。これが私の因果応報かな?じゃあ、そろそろ行きますか。死んだのが分かっててもう長い間とどまってたんだから、早く行かないと。そうだよね、けちんぼな神様。」


湯空視点

目が覚めてから3年たって、私は高校に入学していた。

でも、恋をしたことはない。社木さんの言う恋の衝動もない。私は生徒会の会計をやっていた。それから1年後……。

「ちょっと佐織ネェ!!なんでこんな所につれてくるのさ!!」

「ここからは会長と呼べ、御蔭。副会長のやつが転校したんだ。だからお前にやらせるんだ。」

あの、御蔭という人を見ると、無性に甘えたいと思った。

私は御蔭さん……みーにーに抱きついた。

「ん?金国?なにしてるんだ?」

「みーにー……すりすりすり。」

「なでなで……っは!!す、すいません!!」

「何で敬語なの?みーにー?普通でいいよ。」

「グフッ!!新入りがなんで湯空ちゃんの頬ずりもらっているんだぁー!!」

「うるさいぞ元会長。」

(なんか場違いだなー。早く書記誰かに譲ろうかなー。)

たとえみーにーがみーねーになっても私はみーにーに甘えられるだろう。これが恋なのかな?社木さん。


奏多視点

「私の思ってた恋と違うような気はするけど……。いっか。」

次から本編再開です。

たびたび番外編挟むと思います。

ちなみにまだ、書記は黒江ではありません。

()で早く変わりたいと言っているのは未出みで とおる君です。黒江との交代は生徒会内で任期途中引き継ぎで黒江に書記が引き継がれました。なぜ黒江だったかというと、御蔭に「可愛い会計さんとクールな会長と広報と仕事したい」と言ってそれを聞いた未出君が書記を譲りました。

それから1年経っているので、未出君は卒業しているので本編には出ません。


本編も楽しんで読んでいただけたら幸いです。

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