茜と湯空の初遭遇
「ただいまー。」
「ただいまー。」
いや、湯空。ここは湯空の家じゃあないからお邪魔しますのはずなんだけどな……、
「おかえりなさい。?御蔭さん、その子は?」
茜が出迎えてくれたとき、湯空が不思議そうに言った。
「お姉ちゃんだれ~?」
湯空を家に泊めることになって、家に帰るまで気付かなかった。そういえばこの二人は初対面だ。
2人の自己紹介をパパッとすませた後、僕は台所に行くことにした。とりあえず材料があるもので作れるものを考えると、ホットケーキが思いついた。
「これでいいかな………。蜂蜜とバターどこにやったかなぁ………。」
ホットケーキで蜂蜜とバターは譲れない。生クリームは無かったので使わないことにした。
2人がお互いのことを話している。僕はそっと聞き耳をたてた。
「湯空ちゃんも大変だったんですか………。十年も植物状態で………精神年齢が小学校低学年ぐらい………。でも、両親に愛されていたんですね。私なんか全く愛されていませんでしたよ。」
「ん。でも、茜さんもちゃんと生きてるからすごいの。私は悲しませて死んじゃうかもしれなかったから………。」
「…………そうだね。死んでしまうよりは………。湯空ちゃんの話を聞いていると、復学しなきゃって、思うよ……。」
そういえばいまだに学校に足が向かないと茜は言っていた。
茜は誰でも入れるような偏差値が最低値の高校に通っていた。あの最低な親のせいでだが。決して茜が馬鹿な訳ではないのだけど。ちなみに成績はそれなりに高いらしい。がんばれば国公立を狙えるとか。
「第一志望は名花高校だったんですけどね。学力的にも大丈夫って進路指導の先生も言ってくれてたのに………。あの一言で台無しになるんですから。あそこの人は何も考えてくれないんですね。門限は守れもしないほど早いのに………。」
確か名花高校は全寮制だ。あの親から逃げるのなら当然の判断だと思う。
さすがに茜をこれ以上落ち込ませるわけにはいかないので、僕はホットケーキをもって部屋に入った。
2人は目を輝かせながら食べ始めた。そういえば茜はあまりお菓子を食べたことが無いと言っていた。まぁ、仕方のないことなのだろう。あの親は本当に何も良いものを食べさせていなかったのだから。病院食がとてもおいしいと言うぐらいだから当然だろう。
ホットケーキを食べ終わってから、僕は茜に問いかけた。
「そういえば茜は親との縁をきっていたよね?これからどうするの?」
あんなことがあり、両親から虐待を受け、挙げ句の果てに商売道具として売られそうになった両親たは縁を切るのは当然のことだと思う。
「私は今のままでも問題ないですけど、そろそろ考えないといけませんね……。」
あの時の恩は十分に返してもらっているからね……。もう茜をどこかに送り出してもいいのだ。
「あそこの土地を売ってきたんです。どこかの養子になるべきと思いますね。まぁ、高校生の子供が欲しいなんて人はあまりいないでしょうから多分自立するべきと思いますね、というのが役所の人の言うことですね。」
勝手だが正論だ……。
それから湯空とお風呂にはいることになった。
「お二人でゆっくり入ってきてください。私は銭湯に行ってきますから。そこの番台さん夫婦が貰ってくれそうなので……。」
銭湯の番台さん夫婦は今年で銀婚式ぐらいのはずなのだがいまだに子供ができていないおしどり夫婦だ。奥さんが子宮ガンにかかってしまったのだという。
「年がかなり高いので、引き取ってくれるらしいですね。まぁ、そこでしっかり働きますけど。」
茜が段々明るくなっているのは嬉しい。
「それでは、もう少ししたらこの家から旅立って行きますので………。」
トラウマはまだ残っているらしいけれど、あの夫婦は初老なので大丈夫だろう。そのうち学校にもいけるほどに心を癒してくれるだろうと思う。
さて、湯空とお風呂に入ることになった。もちろん地下の桧風呂だ。
「みーねー、ここのお風呂、大きいね!!」
湯空がはしゃいでいる。この状態を見たら直葉さんが卒倒するだろう。そのくらい笑顔ではしゃいでいる。
「うん、それに、すごく気持ちいいよ。」
さっそく湯空の体を洗う。湯空は持参したシャンプーハットをかぶった。
「湯空の髪はふわふわだな~。」
「みーねー、くすぐったいよ~。」
「かゆいところない?大丈夫?」
「ないよ~。」
湯気の立つ中、湯空の体を洗った。
かなりすべすべな肌なので、頬ずりしたいほどだけど、やったら直葉さんと同列になってしまう恐怖を感じ、頭を撫でるぐらいにとどめた。
桧風呂に入ると、湯空が僕の胸を枕にするようによかってきた。
「みーねーのおむねふわふわ~。」
こんな湯空を見ていると湯空が実は年上であることをすっかり忘れてしまいそうになる。
「みーねー、またお風呂一緒に入ろうね……。ふぁ~。」
湯空が欠伸をかいた。そろそろ湯空がのぼせそうなので、上がることにした。
パジャマがわりに巫女服の中から生地が少し厚い物を出し、湯空に着せた。
さすがにあのコスプレの方の巫女服を洗わずに着せることはしたくなかったので応急措置だ。
「みーねー………………。おやすみ~。」
「うん、おやすみ……。」
この体になってからかなぜか早く寝てしまう。かくいう今日もケルさんが生徒会棟に来るまで寝ていたし………。なんなんだろ。
そう思いながら僕は眠った………。
「みーねー、また一緒に………すぅ~。すぅ~。」
湯空の寝言はかわいいと思いながら、僕は湯空が風邪をひかないようにそっと抱きしめながら眠ったのだった。
後日、希亜から「なんでノノとは一緒に寝なかったのかな?」と文句を言われてしまうのは別の話だ。
次回から番外編の羅列になると思います。
しかしそろそろネタのストックがピンチになっています。
これこらも読んでくれると嬉しいですので、ネタをがんばって作りたいと思います。




