ゲーム開始
最近、教室や町中で話題になっているゲームがある 。
「birthday・time」
前年齢対応のVRMMOだ。
1年前に発売されてから、全世界の80%が利用する大人気ゲームで、僕も当然発売日に朝の4時から並んでお年玉を使い切ってまで買ったゲームだった。僕は月のお小遣いがないかわりにお年玉が普通の人の何倍かになるぐらいの量なのだ。そのお年玉をすべて使ってしまうぐらい僕はそのゲームを楽しみにしていたのだ。初のVRMMOであるそのゲームは、子供を販売対象として見ていないも同然な値段だっのだ。
あの時は、前日の夜7時に寝て丑三つ時ぐらいに起きて、自転車で1時間走って並んだのだ。
確実に仕入れる店で一番近い所だったのだが、店の開店が朝8時の店の前、寒さに耐えながら、財布の中身を見ながらワクワクしたのだ。
店の前にいると、少しボロボロになったスーツを着たおっさんが、店の鍵を開けた。5時ぐらいになったときである。
おっさんは、かなり大型のキャリーバッグをひいていた。
「君はいつからそこにいるのかな?」
と、不思議そうに聞いてくる。
「1時間前です、あんまり並んでないんですよ。」
そのおっさんは少し寂しそうな顔をして、
「まぁ、ほとんどの人は、ネットでの限定500個の注文の勝負だしね。僕らの会社は普通ネット販売が多いから……、ほら、僕らの会社のゲームは18禁ゲームばっかりで、店に置いてあるって殆どのユーザーは知らないんだよ。」と嘆いていた。
おっさんは、この店にあのゲームを持ってきたらしい。
なんでこの店なのかと思っていると、
「あれ?まぁ知らないのも無理もないかな?僕達の会社はここから車で2時間ぐらいの所だから……。」
そして僕の方を見て、
「このゲームは、僕らの会社の切り札なんだ。これが失敗したら僕の働いている会社はあっという間に倒産するよ。」
と子供のような無邪気な笑顔でおっさんは笑った。
「あ、そろそろこれをこの店に出荷して別の店に行かなきゃ………。」
おっさんは、慌ただしく店に入った後、またすぐに出て来た。
どうやらこれら別の店に向かうらしい。
「それじゃあゲームを楽しんでね!」
と、おっさんは笑顔で僕に言って駆け足で車に乗っていった。
おっさんの車が遠ざかった後、徐々に人がふえていった。多分ネットで買えなかったんだろう。明るいのか暗いのか分かりづらい顔をして並んでいた。この人達は僕の前に並ぼうとせず、規則正しく僕の後ろに並んだ。ここは一応都会なので、それなりに人数が多い。あのキャリーバッグの中身だけで全員分あるのだろうか?と心配になった。
それから3時間後、僕は、あのゲームを一番乗りで購入したのだった。急いで家に帰り、プレイ使用としたのだけど、当時の環境で初ログインの条件をクリアする事が僕にはできなかった。
それから1年経って現在にいたるのだか……。
未だにプレイできていないのである。あのおっさんに、本当に申しわけないと、詫びたいぐらいだ。
このゲームは、ユーザーの誕生日と同じ時間……
例えば10月25日ならAM10:25かPM10:25かに初ログインしなければならない。
ゲーム名の通り誕生日から始まるゲームなのだけど流石に日にちでやるわけにもいかないのだからという理由から時間になったらしい。
初ログインができれば後は自由にログインできるので、世間的にはなんの問題も無いと判断されている。
ちなみに例として書いた10月25日は、この世界で、3番目に誕生日の人が多いらしいので、よく参考に使われる。
僕の誕生日は12月15日でこの前テレビでは一番誕生日の人が少ない日だと言われているらしい。
それに、このゲームは深夜零時を12時と認識しないので、高校生になってから12時にゲームをプレイできる時がなかった。平日は普通に授業中で、休日には親の決めごとで昼食は12時からで残すことは許されない。そして片づけも自分でやるため、15分は過ぎてしまうのだ。このゲームは12月生まれの人にかなり厳しいのではないだろうかと何回も思ったことだ。
そして、今両親は衝撃的なことを言ったのだ。
この一言で、僕はあのゲームをプレイできるようになったのだ。それは、いつもと変わらない朝の食卓で暴露された。
「父さんと母さん、明日からブラジルに行くから、あぁ、仕事の都合でな、だからえーと……大学卒業ぐらいまで留守番頼む。どうせ近くの中松大学に行くんだろ?」
「まぁたしかに僕は、中松大学に行くけどさ………。」
「父さんも連れていってやりたいが……。お前、英語以外外国語わかんねーだろ?」
確かに、学校では普通ポルトガル語を授業で習わせない。いや、英語以外を教えてもらえないと思う。
「ちゃんと生活費は必要以上に送るからね!!」
「分かったから。」
そして、翌日……僕は、ようやくあのゲームをプレイできるのだった。
さて、ゲームをする前に自己紹介をしておこうと思う。
僕の名前は天埜 御蔭
12月15日生まれで高校2年生だ。
成績は赤点回避レベルの二つぐらい上
部活には入っていないけれど中学時代の親友の姉に生徒会副会長としてこき使われている。ちなみにそいつは生徒会会長
親友は去年からロシアに行っているため連絡着かず。
容姿は普通で髪、瞳の色共に黒。
家は一応二階建ての一軒家(母さんが値切りに値切って父さんが丸々3年分の給料をつぎ込んだ。僕の生まれる1年前だった。)。
父さんはかなり大きい会社の重役に見えない重役。
迫力がないのだ。まぁ、それでも年収は億に近いとか。
まぁ、そこに行くまでに色々と借金してたりしていたので、
僕は贅沢出来たことはない。どれだけ借金してたのか聞くと
両親揃って暗い顔をする。
「この家のもとの値段の100倍ぐらい………かしら?」
冗談じゃないのが恐ろしい。
父さんは語学力が凄い。
英語、ドイツ語、中国語、ポルトガル語、フランス語など、検定があれば一級クラスだ。
母さんは家で色々やっている。
たまに遅くに帰ってくる。多分聞いてはいけない仕事何だろう。
よくよく見ると、腕にひっかかれたような痕があり、ぶつぶつと何か言っている。
ちなみにいつもは家事の合間に内職している。
ティッシュの中に広告入れたり同じ人形何体も縫っていたり
このぐらいで、自己紹介はいいだろうと思う。
僕は、ゲームをプレイするために準備に取り掛かった。
バーチャル世界でやるタイプのゲームらしい。
あの会社の技術者はすごい人ばかりだと思った。
僕は、右手首に装置をつけ、コントローラー的な卵に似た装置を右手に持って、機械質なバイザーをつける。
右手首の装置は卵型の装置とバイザー、後パソコンに付くようなネット用の端末に繋がっている。
短く深呼吸した後、僕は電源を入れるため卵型の装置を操作した。
「birthday・time・online gamestart!!」
カッコ良く発音を全てアルファベットに聞こえるように言ってみた。僕は、ようやくあの世界に飛び込んだのだった。
最初、白い箱に赤いリボンの、一般的なプレゼント箱が開いて、その中に落下してゆく。
「Happybirthday!!」
の音声が少しザラッとした音で響く。
落ちている感覚で自分の設定をするのだけど………。
なぜか、勝手に入力されていく。
ニックネームを入力する四角の中に、何回も誤字が入力されては戻るように動く。目がチカチカしてしまう。
入力されたニックネームは「ガールズ」
性別は女とも入力された。
最後にチュートリアルをも「いいえ」と入力される。
普通、チュートリアルを飛ばす人はいないはずだ。
やり方が分からない。それに、クリア後に何かしらの後々有利になるアイテムが貰えるのだから、多少面倒でも飛ばす人はいないだろう。僕だって飛ばすつもりは無かった。
よく見ると、所々モザイクのようにグラフィックが綻びている。
僕は、そのまま落ちていった。
本当ならチュートリアル用の森に落ちるはずが、なぜか、真っ暗な空間に落ちていた。
当然落ちる場所にクッション的な物は無く………。
ドスっと音がするぐらいの勢いで僕は地面に落ちた。
「痛たた……。何なんだよ……。」
すぐ近くで何か声がする。
「待て!!我が社の切り札は安全性を確かにしているんだ!
君達の私利私欲のために作られたんじゃない!!」
「うるせぇ、死ねよ。善行だけに生きる副社長。キルキル」
そう言って、赤く染まったナイフを突き刺した。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
もう一人の男のHPがゼロになった後、その男が赤と黒のモザイクになり、消えた。
あの時、僕はあいつは敵だと思った。
倒さなければ、自分もああいう風になる。
なぜか、本能でそう感じた。
ゲームの中のはずなのに、死への恐怖を感じてしまう。
周りを見渡すと、ゲーム内である景色は所々モザイクができている。見ていると少し気味悪く感じる。赤黒く、見方を変えれば血が流れている感じがするのだ。
あまりの画像のひづみに僕はこのゲームの開発者達がちゃんとメンテナンスしているのか不安に思ってしまう。もしかしたらずっと放置しているのかもしれないと考えてしまう。
話が反れてしまったかもしれない。
僕は、死なないためにはどうすればいいのか考える。
このゲームの操作方法が分からないのだから、とりあえず相手に向かって闘争心をむき出しにする。
すると、僕の意志に合わせるように、このゲーム内の僕の能力であろう力が溜まる。近くに能力説明だと思われるボードがでる。
しかし、モザイクがかかっていて、読めなかった。
「dwtamgjd3なやねさ5753なまきたhajtgajtpj」
能力を言う。だけど、バグっているのか完全に文字化けているような発音で声が発せられる。
あぁ、これから戦うのか……。と相手の顔を見つめた。
相手は僕の存在に気付いたらしい。これで、もう不意打ちをする事はできなくなった。
あぁ、これから戦うのかぁ……と思って、今の自分の姿を見る。すると、相手を無視してまで僕は驚きの声をあげた。
能力なのかバグなのか、僕の姿は女の子になっていた。