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妖しい馨  作者: 月猫百歩
紅の屋敷
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序ノ怪

 闇を数えてひと月、ふた月。

 墨を走らせ一枚二枚。

 鬼の機嫌を伺い笑って酌をする。


 陽の無い世界で心に光を抱けば、決して闇に染まることは無いという。心で泣く日はあるけれど、温かい思い出を胸に楽しかった出来事を思い出しては、わたしは暗い日々をやり過ごす。


 それでも。それでも無性に涙を流したくなる日がある。


 それは家族を想ったり、明るい日差しだったり、描いていた夢だったり。そして友達だったり。


 今の自分には鬼ひとり。

 紅い鬼はわたしの全てを支配する。

 食事も会話も衣服も、それこそ何もかも。

 闇に呑まれることは無くとも、わたしは鬼に侵食されていく。

 

 でも。それでも。

 常闇で過ごして幾月か。



 わたしは『鬼』というものを真に理解していなかった。









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